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営業を敬遠する学生は正しい

ノルマがキツい、頭を下げたくない、騙す感じがイヤ
学生が営業を嫌う3大理由の誤解と真実 (DIAMOND online)


 営業=ノルマがきつい。だからつらく厳しそう。

 …ノルマを「目標」「納期」と言い換えてみましょうか。およそ仕事の中に、「目標」「納期」のない仕事はありません。この点では、営業は特別に厳しい仕事ではありません。
 とまぁ冒頭に引用しました表題の記事が、お笑いダイヤモンドのサイトで公開されているわけです。「誤解と真実」云々とのことですけれど概ね学生側の理解の方が正しいだろうと言いますか、社会に出て経済誌に書いてあるようなことを現実に目にするようなことはあるのかと首をひねらないでもありません。確かに正社員ともなりますと専ら営業への配属から始まることが多いですが、果たして日本社会はこれほどまでの営業職を必要としているのか、本当に必要な営業担当者は少数で、残りは競合する事業者間で顧客の奪い合いをしているだけではないのかと、私などはそう思うところです。不毛な国内競争を抑制して営業同士の綱引きを止めさせれば、もうちょっと他にリソースを回せそうな気はしないでしょうかね。

 ともあれ、ノルマのイメージから営業は嫌がられます。そこをダイヤモンドでは「『目標』『納期』のない仕事はありません」と言い張るのですが、本当でしょうか。納期はさておくにしても「目標」というのは随分と多義的で、広い意味での「目標」はともかく営業ノルマ的な意味での目標ともなると無縁のポジションも多いはずです。それもさることながら営業の場合と管理部門や生産部門あるいは技術部門とでは相手にするものが根本的に違います。営業は結局のところ客商売、本人がどれだけ誠意を尽くしたところで客先都合で大きく左右されるもの、営業担当者個人の労力ではどうにもならないところで成果を左右されるものでもあります。「やるべきこと」をやっていれば一定の評価が得られる部門と、「やるべきこと」をやっても顧客次第でノルマ未達の責めを負わされる営業職とでは、後者が敬遠されるのは当然のことです。
 なにかモノを無理やり押し付けて、騙すような感じがする。

 …無理やりモノを押し付けたり、だまして買わせるような商法が、世の中にないわけではありません。ただし、一度や二度なら通用しても、そういうやり方は長期継続的には成り立ちません。すなわち、それは真っ当な企業とは呼べない。「モノを無理やり押し付けて、騙す」ような会社は、よほど企業研究を怠らない限り、あるいは間違った情報収集をしない限り、みなさんの就職先候補に入ることはありません。
 「だまして買わせるような商法~は長期継続的には成り立ちません」と、この辺は営業担当者個人のレベルでは理解されていると思います。ただし、より権限を持つ人間はどうなのやら。営業経験者であれば、意に沿わぬ強引な営業を「上」から迫られた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。末端の営業は「ここで無理に売り込んでも後が気まずくなるだけだな」と長期的な視野で考えていても、上司は役員に呼び出されて部門のノルマを必ず達成するよう厳命されていたりする、そして後先考えずに目先の売り上げを確保するよう担当者に強いるみたいなケースは営業部門なら月末、期末に恒例の風景です。

 「モノを無理やり押し付けて、騙すような会社は(中略)みなさんの就職先候補に入ることはありません」などとも断言されていますが、まさに今、ノバルティスファーマという世界的に名声のある会社の営業が世間を騒がせてもいるところです。ノバルティスの複数の営業社員が臨床データを回収するなど不正な関与を続けてきたことが連日のように報道されているわけで、それは特定企業もしくは営業個人の資質の問題、偶発的な問題なのでしょうか。それとも「営業」という職種に携わる以上は必然的に手を染めざるを得ない行為だったのでしょうか?
ノバルティス 営業社員を競わせる内部文書(NHK)

 NHKが入手した問題となった臨床試験を巡って、ノバルティスファーマの内部文書からは、営業担当の社員にアンケートの回収などを競わせていた実態がうかがえます。

 対抗戦と記された文書では、アンケートを1回回収すると1ポイント、もう一度回収すると1.5ポイントなどと書かれています。

 高いポイントを獲得したチームは、コーヒーチェーンの金券を受け取ることができるとなっています。また、回収したアンケートの数などを基に、月ごとにポイントを集計した一覧もあります。

 ポイントを多く獲得した社員への表彰状には、「白血病の薬のシェア向上にチョットだけ波及」と記載されていて、販売促進のため臨床研究に関わった可能性があることがうかがえます。
 もとより昨今は新卒者に中小企業を勧めるのがブームです。業界経験など皆無の新卒者に知名度の低い中小企業を勧めるのは、新兵を地雷原に突入させるようなものに等しいと思われるところ、経済誌やコンサルタントの戯言に騙されて痛い目を見た人も多そうな気がします。どこの職場に移っても必ず不動産投資の勧誘電話をかけてくる迷惑営業の老舗みたいな会社もあるわけですが、そういう世間の鼻つまみ者でしかない会社もまた昨今は新卒者向けの求人を盛んに出していたりするものです。安易に中小の営業職を選んだ結果として「人に迷惑をかける仕事」をする羽目になった人もまた多いことでしょう。 

   参考、胡散臭い就活ビジネスで学生をカモにする輩へギャラを払うのをやめろ

 ……で、当然のことながら営業として働くことを嫌がる人も多い、これは大いに理解できるところです。努力が報われるとは限らない仕事、時には他人のニーズを無視して強引なねじ込みを繰り返さなければならない仕事は真面目な人からほど厭われるものでしょう。もっとも、そうである分だけ営業職の価値は認められるべきと言えます。営業して受注を獲ってくる、新規顧客を開拓することの価値は、その難しさと共にもっと評価されて良いはずです。しかし実際はどうなのか、営業をあまりにも軽く考えている人も多いように思います。

 例えば農業の6次産業化云々と、よく言われるわけです。現状は1次産業として生産が専らの農業ですが、加工や流通と言った2次及び3次産業部門も含めていくべき云々と。確かに農家が生産オンリー、後は農協任せというのも限界が来ているのかも知れません。農協を通さずに購買者と直接に繋がれば利幅も大きくなるように見えるところもあるのでしょう。とはいえ、そのためには生産以外の分野での働きも当然ながら求められます。ただ単に作物を育てる技術ではなく、高い営業力をも兼ね備えているのなら6次産業化に挑む資質有りと言えますが、営業職が敬遠されている実態を見るに「営業力自慢」の人は決して多くないのではないでしょうか。そして自ら営業して市場を開拓できないのであれば、その役割を誰かに代わって貰うしかない、農協なり諸々の中間業者なりの出番です。

 建設業でも似たようなものです。腕の良い職人達の小さな会社があっても、「仕事を取ってくる」過程をスルーするわけには行きません。もし技術だけではなく高度な営業力をも兼ね備えた社長がいるならまだしも、そうでないならやはり「代わり」が必要です。営業力に乏しい職人達に代わって仕事を受注してくる人が必要になる、そうである以上は元請け会社の営業の役割が欠かせない、と。そして「仕事を取ってくる」という現場作業と比べても決して楽ではない営業の仕事の分として、相応のマージンは支払われるべきものなのでしょう。誰もが楽な仕事として営業をやりたがるのならいざ知らず、負担の重い仕事として営業職が敬遠される時代ならなおさら、職人のために仕事を取ってくる営業の取り分が増えるのは致し方のないことです。

 まぁ営業したくない人が多い分だけ、営業として働く人の取り分は多くあっても良いと思うわけですが、もちろん程度というものはあります。明らかにダメなのは以下のようなケースで、こういう不正の温床を放置していることは国の恥であると政治家諸氏には自覚して欲しいところです。
隠匿容疑:実習生の給料着服…受け入れ団体元理事長を逮捕(毎日新聞)

 外国人技能実習制度を悪用し、不正に再入国したカンボジア人実習生の給料を中抜きして自身が管理する口座に隠したとして、警視庁が茨城県下妻市の実習生受け入れ団体「いなほ協同組合」元理事長、稲富浩一容疑者(64)を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)容疑で逮捕していたことが同庁への取材で分かった。

 同庁は稲富容疑者が偽造戸籍を使った旅券で再入国させ、不正に働かせて給料の一部を着服していたとみている。

 逮捕容疑は、派遣先から実習生5人に支払われた約2年分の給料の一部計数百万円について、管理する口座に隠したとしている。稲富容疑者は昨年2月、不正に再入国したカンボジア人を農家などで働かせたとして、警視庁に入管難民法違反ほう助容疑などで逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定した。【林奈緒美】

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