記事

「批判はあってもマイノリティの立場を守りたいと思っています」:代理出産の倫理的問題(2/2)

前編を読む

批判へのスタンス:なぜ叩かれてもやる?

リンク先を見る

イケダ:この会議室に実際の患者さん、代理母の方々の写真がありますね。笑顔が多く見えますが、サービスの満足度について伺わせてください。

玉置:人の喜びのなかでいちばん大きなもののひとつは、生命を授かることではないでしょうか。特に弊社のサービスを利用する方々は、長年苦労していたり、そもそも諦めていた人たちです。先天的な理由で諦めていた場合などは、新たな選択肢によって命の循環がつながっていくわけですね。

少し余談ですが、子どもを授かって大喜びするのは、実は患者様のお母様なんです。先天的な要因で妊娠を諦めざるを得なかった、というケースでは、お母様が20年も30年も、罪悪感に駆られてしまいがちです。私のせいで、この子は子どもが授かれない…と。それが、子どもが産まれた瞬間、一気に霧が晴れるわけですね。

イケダ:ここまで伺って、みなさんが倫理観をもって、有意義なサービスを提供していることがわかりました。炎上系ブロガーとしては(笑)バッシングに対するスタンスについてもお伺いしたいです。相当批判されてきましたよね、きっと…。

玉置:パイオニアということもあり、批判的な言及をいただくことは多かったですね。われわれとしては、「マイノリティの方々の力になりたい」という想いをもってやっています。

マイノリティの意見は重視されず、マジョリティの側から倫理観を語るわけです。それはあってはならない、けしからん、と。でも、実際に苦しんでいる方と、そのご家族はそう考えていない。でも、彼らは声を挙げることが難しい。われわれは、そうしたマイノリティの声を伝えていく役割を担っていると考えています。

イケダ:覚悟がありますね。で、そもそもなんですが、なんでメディブリッジを始めたのでしょうか?相当苦労の多い事業だと思いますが…。

玉置:実は、私が小さい頃から難病なんです。母も難病です。生まれつき「不健康家族」といってもいいかもしれません。そういう背景があるので、ある意味での「人生の残酷さ」というものを味わって育ってきたのは大きいですね。

幼い頃から生活の中に「病院」がとても近くにありました。一方で、仕事では海外で住まう機会が多く、それを通して「医療の自由」を感じたわけです。

そのなかで、自分ができることは「医療関係で、しかもグローバルで活躍できること。ターゲットは誰でもできることじゃだめ、弱者のためにできることをしなければ」と思い立ち、「不妊治療」に出会いました。

不妊治療の分野は閉鎖的で、たとえば先天的に子宮がないロキタンスキー症候群の方々が病院からあしらわれてしまっている現状がありました。こういう人生を送っている人たちを見て、力になりたいと考えました。まだ当時は代理出産のコストも高かったので、安くするためにインドでの代理出産を始めた、という流れです。2008年に事業を立ち上げています。

新聞の一面でバッシングされる覚悟

イケダ:とはいえ、戸惑いとかはなかったのでしょうか?社会的に叩かれることも想像できたわけですよね。

玉置:やはり怖かったですね。今でも、新聞の一面でバッシングされる覚悟はあります。でも、身体に問題があって子どもを授かれない方がいある、そういった人たちを助けることが本当に悪いことなのでしょうか。私たちは決してそうではないと考えています。

イケダ:いやー、覚悟がないとできませんよね、本当に…。あえて意地悪に言いますが、養子をもてばいいじゃないか?という意見もありますよね、きっと。

玉置:これも多い意見です。養子を取るのは正解のひとつではあるが、人によっては最適な選択肢にならないこともあります。

イケダ:そういった自由を第三者が「けしからん!」と奪うのは、変な話ですよね。共感します。もう一点よくあると思うんですが、「代理母の人権」についてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。

玉置:代理母は代理母で人生観がある、ということはお伝えしたいです。代理母になられる方は、カーストではやはり下の方です。国際的に条件がありまして、子どもが一人以上いるお母さんです。

状況から考えるに、その家庭の子どもにも貧困が連鎖することが考えられます。でも、母としては子どもには大学を出てもらいたい、自分と同じ人生は歩ませたくない、と考えている。

そこで選択肢になるのが、「代理母」です。自らが代理母になることで、報酬が手に入り、家族の人生が一気に変わる。実際の問題として「人権侵害だ!」と言われて代理母という選択肢がなくなると、彼らは困るわけです。

もちろん、代理母になることによってひどい搾取にあうことは問題です。しかし、前向きなモチベーションで、安全で配慮された環境で行うことができるのなら、それは問題なのでしょうか。

イケダ:貧困問題にまつわる議論では、この種の話がよく上がります。代理母になることによって、代理母家族の人生が一気に変わる、というのは見過ごしてはいけないポイントですね。

採用の募集と、仕事の辛さについて

イケダ:もう少しドライに、ビジネスとして見て、メディブリッジは順調に成長しているのでしょうか?

玉置:成長しています。年間の体外受精はまだ右肩あがりで、どこのクリニックによっても行列ができています。そういう人は増えているので、それに従って需要が高まっています。

イケダ:今回は採用も募集しているということで、その点についてもお伺いしていきたいのですが、募集に入る前に、苦労話はありますか(笑)

玉置:苦労だらけですね。何が苦労かというと、これほど人の闇やプレッシャーを背負ったことはありません。われわれには、患者様の期待や絶望が一挙にのしかかってきます。人生をかけて悩みつづけた方々にサービスを提供するわけです。

もちろん、われわれは神ではないので、「必ず出産できる」わけでもありません。授かれないこともあります。そういった場合は、ただただ残念で、かける言葉もないくらい辛いです。

イケダ:まさに人生を背負う、命を扱う仕事ですものね…。そんな話をしたあとで(笑)、スタッフ募集について教えてください。

玉置:会社としては、とても忙しい状況です。できれば女性が希望なんですが、不妊治療の知識を身に付けることができ、今まさに苦しんでいる方のプレッシャーに耐えられる方を探しています。医療経験は不要です。

「人の役に立ちたい」という方は多いですが、これまでの経験からいっても、実際に現場に立ってみるとプレッシャーに耐えられないことがあります。本当に、なかなか見つからなくて…。

イケダ:それはハードル高いです(笑)すでに働かれている方については、やはり、医療経験者が多いのでしょうか?

玉置:実態としては、元看護師の方が多いですね。でも、医療経験は必要はありません。

イケダ:他にも様々な業者がいることを教えていただきましたが、メディブリッジの優位性はどこにあるのでしょうか?

玉置:弊社はもともと、インドでの代理出産を日本ではじめて行った企業です。培ってきた知見があります。卵子提供ドナーに関しても、250名と競合他者に比べて圧倒的に多い数の方にご協力いただいています。この分野でいうと最大の規模、かつ歴史もあるので、安心できるというのが一番ですね。

メディブリッジが大切にする「倫理観」

イケダ:先ほどから何度も出ているワードですが、このビジネスにおいては「倫理観」が本当に重要だと思います。倫理観が脆弱な企業は、事業体としても永続的になれないでしょうね。

玉置:まさに、倫理観をしっかり固めてやっていかないと、本当に必要とする人たちにサービスが届けられなくなってしまう、という危機感を抱いてやっております。

この分野は資格などもいらないので、参入障壁が低いんです。以前も風俗をやっている業者がこの世界に参入し、問題になりました。

お金を儲けたいだけなら、契約書なんてものも不要ですし、誰でも受け付けることができてしまいます。しかし、そこでモラルのない経営をしてしまっては、会社として存続することはできません。

イケダ:倫理観とビジネスというテーマは大変興味深いです。社内的にはどのような教育というか、運営を行っているのでしょうか。

玉置:患者様とお話を進めていくと、やはり例外的なケースがあるんです。たとえば、ご夫妻で来られて、治療を勧めていくことを決めた矢先に、実は旦那さんが浮気をしていたというケース。それはお断りしました。

同じようなケースで、治療を勧められている途中で離婚をしてしまった、ということもありました。そちらについても、患者様とお話して、お断りしましたた。

われわれの価値観では、子どもを授かる際に、両親がいることを前提にしています。これはあくまで「われわれの」価値観ですが、そういった信念をもっていないと、何をしてもいい、ということになってしまいます。

イケダ:そういった倫理的な問題については、どのようにして判断を下すのでしょうか?

玉置:患者様とお話をするのはもちろんですが、スタッフ全員で会議をするんです。ケースを前にして、それぞれの意見を出し合って、その上で決断しています。ケースによっては、社長である私自身の考えがくつがえることもあります。

イケダ:いやー…めんどくさいですね(笑)すばらしく民主主義的。

玉置:まさに、めんどくさいです。お金目的だったらなんでもできてしまいますが、それではいけませんから。

イケダ:さて、伺いたいことは一通り伺えたので、インタビューはここで終わりにしたいと思います。大変貴重なお話を伺えて楽しかったです。いろいろとバッシングが来るかもしれませんが、ご了承ください…。

玉置:はい、ありがとうございました。

(おわり)

インタビューを終えて

最初に玉置さんから依頼が来た時は、正直「怪しい人たちから連絡がきた!」と身構えてしまいました。が、冷静に考えると、こんな議論を呼ぶビジネスに先鞭をつけるような人が、怪しいわけがないんですよね。

相当の覚悟や信念があってやっているんだろうなぁ、と思ってお話を伺いにいったのですが、予想通り、熱い魂を持って事業に取り組んでいるように感じました。

インタビューにあるように、卵子ドナー、スタッフの募集をしているとのことです。関心がある方はぜひウェブサイトから問い合わせをしてみてください。

卵子提供・代理出産エージェンシー Medibridge メディブリッジ

なお、当日の収録で余談的に出てきた「医療とテクノロジー」の話についても、別途有料メルマガの方でご紹介予定です(1,500字程度)。興味深い話が伺えたので、こちらもよろしければご購読して触れてみてください。

[無料版あり] イケハヤマガジン - BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

【関連記事】
「代理出産」「卵子提供」「着床前診断」についてメディブリッジの玉置径夫さんに伺った(1/2)

あわせて読みたい

「出産」の記事一覧へ

トピックス

議論福島第一原発処理水の海洋放出は許容できるリスクか?

ランキング

  1. 1

    毎日の誤報「公正」は口だけか

    青山まさゆき

  2. 2

    NHK「しれっと」報道訂正に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    タクシーのマスク強制が嫌なワケ

    永江一石

  4. 4

    トランプ氏の側近3人 暗躍失敗か

    WEDGE Infinity

  5. 5

    JALの旅行前検査 医師が「ムダ」

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    田代まさし闘病で収監延期の現在

    SmartFLASH

  7. 7

    タワマン強盗の恐怖を被害者激白

    NEWSポストセブン

  8. 8

    橋下徹氏 毎日新聞は訂正すべき

    橋下徹

  9. 9

    鬼滅旋風で頭抱える映画配給会社

    文春オンライン

  10. 10

    橋下氏「否決なら住民投票無効」

    橋下徹

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。