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「代理出産」「卵子提供」「着床前診断」についてメディブリッジの玉置径夫さんに伺った(1/2)

「イケハヤ書店」のブランドコンテンツ「イケハヤが訊く!」をリリースします。第一弾として不妊治療のメディカルツーリズム事業を展開する「株式会社メディブリッジ」代表の玉置径夫さんにお話を伺いました。全文掲載する予定はなかったんですが、あまりにも話が面白かったのでがっつり掲載してしまいます。

「不妊治療のメディカルツーリズム」とは?

イケダ:まずはメディブリッジの事業について、ざっくりと教えてください。

玉置:私たちメディブリッジは、業種でいうとメディカルツーリズムに属します。メディカルツーリズムは日本ではまだ浸透していないが、欧米では広がっている、新しい医療のあり方です。

メディカルツーリズムのなかでも、特にニーズが強いのが「不妊治療」で、われわれはこの分野で事業を展開しています。ツーリズムということで、「日本では行えなかったり、行いにくかったりするサービスを、主に提供しています。

イケダ:具体的には、どんなソリューションを提供しているのでしょうか?

玉置:大きく分けて三つ、「卵子提供」「代理出産」「着床前診断」のサービスを展開しています。現在世界で16名のスタッフがおり、日本、タイ、ハワイ、インドで事業を展開しています。

現地の医師や病院と提携して、日本人の患者が赴いて治療を受けます。不妊治療ということで、クライアント様がお子様を腕に抱いていただく、ということを目指して取り組んでおります。

今は不妊治療だけですが、メディブリッジという名前の通り「医療のかけはし」として幅広く事業を展開していこうと考えています。直近では、たとえば「海外の方が日本の医療を受けたい」という声があるので、そうしたニーズにも答えていこうと考えています。

イケダ:ほとんど詳しくないのですが、「卵子提供プログラム」ってそもそもどんなサービスなのでしょうか?

玉置:まず、治療において、三人が必要になってくきます。依頼者ご夫妻と卵子ドナーです。卵子ドナーというのは、骨髄バンク、臓器バンクと仕組み的には同じで、自身の卵子を第三者に提供するドナーさんです。

通常、女性には卵巣に卵子があるはずですが、遺伝子系の疾患などが原因で、もともと卵子が存在しなかったり、高齢であるがために、卵子が存在しても元気がない、というケースがあります。そうした理由で卵子がとれない方は、自分の卵子ではお子さんを授かることができません。その場合に必要な選択肢が「卵子提供プログラム」です。

イケダ:「卵子老化」が話題です。実際の患者さんは、やはり妊娠的な意味で高齢の方が多いのでしょうか?

玉置:当社の場合だと、プログラムの利用者の一番多い年齢層は43〜45歳というところです。やはり、卵子の老化によって来られるクライアント様が多いですね。

もうひとつ、最近増えているのが「早発閉経」です。20代のうちから弊社にきて卵子提供プログラムをうける方もいます。また、「ターナー症候群」のような生まれつき卵巣機能に問題がある、という方も弊社に来られますね。

実は数多く存在した!代理出産・卵子提供業者

イケダ:「代理出産」についても詳しくお聞かせください。ここは、とても気になる話です。

玉置:こちらは年間に30〜40人と、利用者数はそれほど多くありません。倫理的な問題もあるため、弊社の場合は、医学的に子宮に問題があって妊娠できないなど、一定の条件のクライアント様のみ、サービスを提供しています。

代表的な例は「ロキタンスキー症候群」の方。4,000〜5,000人に一人の割合で発生する病気です。卵子に問題がなくても、自分の子宮では妊娠できないため、代理出産が解決策になります。

もうひとつ非常に多いのは、子宮がんによって子宮を摘出した方です。その他、心疾患でご本人の妊娠継続ができないと医師が判断した場合、といった条件の方も代理出産の適応になります。出産にあたってはご夫婦の卵子と精子を体外受精し、インド人の代理母に産んでもらう、というかたちを取ります。代理出産に関しては弊社がパイオニアで、日本において初めて取り組んだ事業者です。

イケダ:パイオニアということばがありましたが、他にも業者はたくさんいるんでしょうか。

玉置:はい、たくさんあるんです。代理出産、卵子提供という検索するとずらっと出てきますよ。

イケダ:(検索中…)うわ、すごいことになってますね!これはカルチャーショック…広告も出まくってますね。

画像を見る (広告がずらり)

イケダ:ほかの事業者は、どのような基準を代理出産の対象者としているのでしょう?

玉置:見ての通りたくさんのプレーヤーが出てきておりまして、なかには倫理的な部分を考えずに、誰でもかれでもサービス提供を行うという会社も出てきているようです。

弊社にもしばしば、お金持ちの社長さんなどから「便利そうだから代理出産を利用したい」という問い合わせがくるのですが、もちろんお断りしています。ただ、そういう人たちにサービスを提供する会社も出てきています。この点については、代理出産じゃないと子どもを授かれない患者さんが、汚名を着せられる可能性があると懸念をしています。

また、代理母に対しても、しっかりとケアを提供することが大切です。弊社では代理母にも幸せになってもらいたいと考え、こちらから確認をとったり、直接お会いしたりします。

代理出産のトラブルと歴史

イケダ:業者によってクオリティ、倫理観の差がでるというのが現状なんですね。代理出産の歴史を教えていただきたいのですが、これまで世界・日本で、どんなトラブルがあったのでしょうか?

玉置:まず、アメリカで起こった「代理母が、産まれたこどもを『これは自分のこどもだ』と主張する」というケースがありますね(*注:「ベビーM事件」)。

日本では、長野の諏訪マタニティークリニックの根津院長が代理出産を行い、朝日新聞にバッシングされる、という流れがありました。代理出産は、しばしばメディアからバッシングを受けています。

イケダ:バッシングは、どういう角度から飛んでくるんでしょうか。

玉置:やはり倫理的な視点が多いですね。代理母の人権や、生まれてくる子どもの親は誰か、などといった。

日本の民法は明治時代にできたもので、法律上は、その子を生んだ女性が母親になります。つまり、代理出産の場合は、遺伝的には実の子どもなのに、そのままでは実子ではないという解釈になります。

通常どうしているかというと、特別養子縁組を組みます。向井亜紀さんが最高裁まで争われましたが、代理出産の場合は実子としない、という話になっています(向井亜紀 - Wikipedia)。

「産み分け」もできてしまう、着床前診断

イケダ:もう一つのサービス、「着床前診断プログラム」についても伺わせてください。

玉置:こちらも体外受精を利用します。卵子と精子が取れました、受精しました、という段階で、子宮に戻す前に染色体検査をします。これが「着床前診断」ですね。

これは技術的にいうと、「男女の産み分け」もできるんです。弊社では、倫理的に問題があるのでそういった用途が主である場合、利用はできません。

イケダ:産み分けができちゃうんですね…存じ上げませんでした。どういった患者さんが使われるのでしょうか?

玉置:最近大きく報道されていますが、「出生前診断」というのがありますよね。胎児に染色体異常がないかを検査するんです。この場合は、もしも異常がありますという検査結果だったら、場合によっては胎児をおろすしかない、という話になってしまいます。

一方で「着床前診断」の場合は、受精卵の移植前・妊娠前に検査ができるので、そういったリスクはありません。

ニーズに関してですが、世の中には遺伝的疾患というのがたくさんあり、着床前診断はそういった遺伝的疾患の継承を防ぐために利用されます。着床前診断は最近注目が高まっており、件数ベースでも増えています。

イケダ:善悪はともあれ、これからは、子どもの遺伝的疾患を「事前に」検査してから妊娠する、という選択も一般的になっていきそうですね。

玉置:はい。クライアント様にいつも伝えることですが、こうした選択については、本来「正解」も「不正解」もありません。それを決めるのは当人たちです。その上で、選択肢をつくっていく必要がある、と考えています。

代理出産は一件390万円から

イケダ:コストの話についてもお聞かせください。それぞれ、費用はどのくらい掛かるのでしょうか。

玉置:公式サイトにも掲示していますが、卵子提供プログラムは298万円から、となっています。どうして「から」かというと、さまざまなオプションがあるんです。たとえば「assited hatching」という、受精卵の殻を割るオプションなどがありますね。そういったオプションで、価格が変わってきます。代理出産は390万円から、着床前診断は110万円からとなっています。

イケダ:愚問ですが、保険はきかないですよね。やはりそれなりの値段が掛かるんですね。

玉置:保険はききません。ただ、コストという話だと、それでもこの値段はだいぶ安くなっています。代理出産の場合は、アメリカだと3000万円前後が掛かるといわれます。さらに、赤ちゃんに何かあった場合、NICUに入れると1日100万円程度の追加コストが掛かります。われわれはインドで実施しているので、コストを抑えることができています。まだまだ高いとはいえ、「払えなくはない」値段まで下がってきました。

イケダ:卵子提供プログラムについては、どちらで実施をしているのでしょうか。

玉置:タイとアメリカで治療を受けることができます。業者によってはタイ人の卵子を使うケースもあるようですが、弊社では、この国においてできるだけ日本人が日本人を支える仕組みにしたいと考えておりますので、日本人ドナーのみとなっております。

卵子ドナーの報酬は60万円

イケダ:卵子ドナーの条件は、どのようなものなのでしょうか。

玉置:公式サイトにありますように、弊社の場合は、

①日本人国籍で短期間海外に滞在することが可能な方。
②20歳~30歳の方。
③健康な方。
④喫煙されない方。

となっています。喫煙というのは不妊の大きな原因なんですね。健康状態の検査などは詳しくしますが、基本的にはこれを満たせばOKです。ネット上でも申し込みできます。

イケダ:ドナーになる方のモチベーションはどのようなものなんでしょうか?

玉置:いちばん大きいのは、親戚、知り合いが不妊に悩んでいた、という理由ですね。その理由とつながりますが、職業的に多いのは看護師さんです。あとは、アメリカなど留学された方は卵子提供が身近なので、ドナーになってくださる方が多い印象です。

イケダ:金銭的なインセンティブは支払っているのでしょうか?

玉置:はい、ドナーには60万円の謝礼をお支払いしています。

イケダ:うお、けっこうな額ですね。

玉置:はい。弊社ではありませんが、あるアメリカのエージェントだと、卵子ドナーがお仕事になっている状況があるようです。うちでは仕事にはならないように、採卵のタイミングを開けるようにしています。採卵を行うには排卵誘発剤という薬を使用するのですが、これを頻繁に使用すると元気な卵子が数多くとれなくなるんです。ですから、弊社では一度採卵を行えば、しっかり時間を開けるようにしております。

イケダ:とはいえ、無償で提供してくれるのが理想ですよね。ある意味で、仕方なく支払っている状況という理解で問題ないでしょうか?

玉置:まだまだ卵子ドナーは一般的ではないので、金銭的なインセンティブがないと集まらない、というのが現状ですね。

とはいえ、弊社では「お金目当て」のドナーはお断りしています。お金目当てでドナーになることは、倫理的に問題があるだけでなく、現地に2週間滞在するので、怠けが発生してしまうんです。なので、ドナーになりたいという方には、必ずやる気や理由を確認します。そうしないと、結局うまくいかないんですね。卵子を提供する強い理由や志のある方のみお願いしておりますので、弊社では『卵子ドナー』ではなく、正確には『卵子ドナーボランティア』と読んでおります。関心がある方には、ぜひ応募してもらいたいです。関心がある方には、ぜひ応募してもらいたいです。

イケダ:今後、サービスのコストが下がるという期待はあるのでしょうか?

玉置:卵子提供に関しては、ボランティアドナーさんの需要が増えてくれば、コストは下がると考えられます。ただ、代理出産に関してはこれ以上落ちるとは考えにくいですね。インドより物価の安い国に移動する、ということは考えられますが。

患者目線の欠如と、医師会の壁

イケダ:まさに今「知られていない」という話がありました。卵子ドナーも含め、そもそも選択肢として知られていないですよね。なぜなのでしょうか?

玉置:はい、ここまで説明してきたサービスは、一般的にはまだまだ認知度は低いです。これからだと思っています。

ポテンシャルでいうと、日本は不妊治療クリニックの数が、実はアメリカの2倍あるんです。世界ナンバー1です。また、体外受精の件数も年間24万件と、圧倒的1位です。この件数はまだ増えています。

そういった意味で、日本は「不妊大国」なんです。この国では少子化少子化と言われていますが、それに横たわっているように不妊の問題があります。

アメリカでは不妊治療を受けて、子供を授かる可能性が低い方たちに、医師が「卵子提供を受けてはどうですか?」と伝えるのが普通になっています。卵子が老化すると、自分の卵子で子どもを作るのは難しくなります。費用もかかります。困難なことを続けるくらいなら、卵子提供という選択肢を取ることも考えのひとつになるわけです。

でも、日本の病院やクリニックでは、依然として選択肢として卵子提供を勧めることができていません。これが卵子提供などが日本で浸透しない理由のひとつになっていると思われます。

イケダ:たいへん興味深いです。なぜ、勧めることができないんでしょう?

玉置:産婦人科学会指針を設けておりまして、そこで禁止しているんですね。

イケダ:え、じゃあそれって「業界ルール」ですよね。

玉置:はい。

イケダ:法律的には問題ないということですよね…なんとも、患者目線がないというか…。

玉置:やはり学会内のルールが壁になっていますね。

イケダ:書いていいんですか?(笑)

玉置:はい。大丈夫です。おっしゃるとおり、今の医師の中には患者目線が欠如している方も多く見受けられます。実際に患者さんが「先生、卵子提供考えているんですけど…」とおっしゃっても、感覚的に、半分くらいの医者は拒否反応を示します。卵子提供はうちでは手伝えない、他のクリニックに行ってくれ、とあしらわれてしまう。

なぜかといえば、代理出産や卵子提供に協力してしまうと、産婦人科学会から追放されるリスクがあるんです。先述した根津先生も除名されておりました(参考:あの「根津医師除名」は何だったのか(2000.3.10))。

イケダ:そういう現状って、どうすれば変わるんでしょうか?

玉置:やはりマスコミなどを通して、マイノリティの患者や、不妊治療患者の声を発していくしかないでしょう。向井亜紀さんの事例のように、有名な方が行うことによって、知名度が広がっていくことも意義深いと思います。

後編に続く:「批判はあってもマイノリティの立場を守りたいと思っています」:代理出産の倫理的問題(2/2)

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