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『小泉の乱』に「運命の女神」は微笑むか?

■『小泉の乱』or『小泉の乱心』

 数カ月前に「晴天の霹靂」の如く、突如「脱原発」を叫び出した小泉元総理。かつては「自民党をぶっ壊す!」と言って世の注目を集め、一躍、時の人となった小泉氏は、ここにきて再び、「自民党(日本社会)をぶっ壊す!」と言わんばかりの剣幕だ。

 巷では、一連の小泉氏の言動を『小泉の乱』と呼んでいるらしいが、はたして、我々国民にとって歓迎するべき『反乱』なのだろうか?

 小泉氏は、猪瀬都知事の後釜を巡って、同じく「脱原発」を掲げる細川元総理とタッグを組み、都知事選の最重要課題として「脱原発」を掲げている。しかし、都知事選と「脱原発」を結び付けるのは、あまりにも強引であり、どう考えても無理があると言わざるを得ない。

 小泉元総理はマスコミのインタビューに対して以下のように述べている。

 「原発無しでも日本はやっていける
 「脱原発が細川氏を応援する最大の理由

 かつての「郵政選挙」に準(なぞら)えての「脱原発選挙」ということなのだろうけれど、「脱原発選挙」というのは既に衆議院選挙で決着が着いたのではなかったのだろうか? この期に及んで再度、民意を問うということなのかもしれないが、普通に考えると、衆院選以上の茨の道にしかならないのではないかと思える。

 ヒステリックな脱原発の人々がようやく平静心を取り戻し沈静化しつつあった時に、突如、出現した小泉氏の言動には、原発推進に舵を切りかけていた自民党も、さぞ傍迷惑なことだろうと思う。安倍総理の目には、『小泉の乱』と言うよりも『小泉の乱心』と映っていることだろう。

■「勝ち目」の無い戦いを挑んでいるかに見える小泉元総理

 おそらく小泉氏には悪気はなく、脱原発を進めることが日本にとって良いことだと心底信じているのだろうと思う。世間の注目を集めている安倍総理への敵対心(嫉妬心?)も多少は有ったのかもしれないが、『構造改革』というもので一応の美名を歴史に残そうとしていた人物が、まさか、本気で「脱原発」を叫ぶことになるとは予想だにしなかった。

 大きなお世話かもしれないが、これは非常に危険な賭けになると思われる。ヘタをすると、かつての美名が消えるどころか、汚名を残すことになる可能性が有る。もし小泉氏のバックに今話題の天才軍師、黒田官兵衛がいたとすれば、「絶対に勝ち目はない」と忠告していたことだろう。

 一応、お断りしておくと、ここで言うところの「勝ち目」とは、都知事選の勝敗についての「勝ち目」ではない。むしろ、都知事選に勝った場合にこそ、勝ち目は無くなるのではないかと思われる。では、何に対しての「勝ち目」なのか? 無論、歴史的意味合いにおいての「勝ち目」である。後世の人々の評価においての「勝ち目」という意味である。

■『小泉構造改革』が成功した単純な理由

 小泉氏にちなんで先に触れた『構造改革』について少し述べておこうと思う。小泉氏が行った『(聖域なき)構造改革』は、未だ賛否両論があり、ハッキリとした歴史的評価は出ていないが、功罪ということで考えれば、「功」の部分の方が多かったという見方が一般的だ。

 ではなぜ、「功」の部分が多かったのか?

 これに対する答えは、その後の民主党の経済運営失敗と安倍総理の成功(?)を観れば、朧げながらにその理由が見えてくる。

 なぜ、小泉構造改革は成功して、民主党の改革は失敗に終わったのか? その答えは、マクロ経済とミクロ経済の分別ができる人であれば、シンプルに理解できる。

 一国の経済というものは、景気の良い時には合理化を行い、景気の悪い時には、お金をどんどん使う。これが基本である。景気の良い時に合理化を進めなければ、バブルが発生することになり、景気の悪い時にお金を使わなくなると、恐慌に向かう。

 この単純な経済真理を理解すれば、なぜ小泉元総理が成功し、民主党が失敗し、安倍総理が成功したのかは一目瞭然となる。

 小泉元総理が構造改革を行った当時は、少なくとも現在以上に景気が良かった。円相場も100円から130円の間を推移していたので、日本社会の合理化を押し進めても、それほど大きな問題にはならなかった。しかし、民主党時代のように景気が最悪の経済状況下で無理に合理化を進めると、恐慌に突き進むことになる。お金をバンバン使わなければいけない時に、緊縮財政を目標に据えたために、実際に急激な円高と不況が進み、多くの中小企業が倒産し、一部の大企業でさえも経営破綻寸前にまで追い込まれたことは記憶に新しい。

 結局のところ、「」の財政と「一家」の家計を同一に考えたことが大きな間違いだった。早い話が、「ミクロ経済」しか理解していなかったということでもある。

 かつての小泉氏にも現在の安倍総理にもマクロ経済に理解のあるブレインがいたことが功を奏したわけで、リベラル寄りの民主党には、そういったマクロ的な視点を持ち併せた人物がいなかったのかもしれない。

■「頭隠して尻隠さず」の脱原発論

 さて、もう1度、「小泉の乱」に話を戻そう。

 構造改革時には「時の運」と言う名の「運命の女神」を味方に付けた小泉氏だったが、今回の都知事選はどうだろうか?

 時は、中国の軍拡化や北朝鮮による核の脅威が肌で感じられるキナ臭い時代である。そのような国際情勢下で、「脱原発」を叫び、「脱核兵器」にまで影響が及ぶとなると、時代の逆行も甚だしいということになる。原発エネルギーが完全に使用できなくなると、燃料エネルギーに頼るしかなくなるわけだが、その燃料エネルギーの輸入を外交的・地理的にストップされてしまえば、日本経済自体も完全に行き詰まることになる。もし本当にそんなことになればどうするつもりなのだろうか? 昔のように、ストップされた燃料エネルギーの輸入を巡って戦争でも始めるのだろうか?

 「原発エネルギー」は「燃料エネルギー」が使用できなくなった場合のリスクヘッジでもある。この両輪の1つを永久に失うことは、自転車に乗っていた人が一輪車に乗り換えるようなものである。当然、転ぶリスクが著しく増大することになる。

 リスクヘッジも無しに「脱原発」を唱えることの危険性は、ある意味で、マクロ経済を理解せずに国家運営を行うことに等しい。ミクロな危険を避けることができても、マクロな危険を避けることはできない。「頭隠して尻隠さず」という諺の通り、原発の危険を隠すことができても、戦争の危険を隠すことができなければ、元の木阿弥である。

 今回の「小泉の乱」には「運命の女神」は振り向いてくれるだろうか? 個人的には、そっぽを向かれるのではないかと予想する。

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