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もうひとつの沖縄戦後史──「オッパイ殺人事件」と経済成長 - 岸政彦 / 社会学

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沖縄タイムスによって、「オッパイ殺人事件」と居心地が悪くなるほど「コミカル」な名前を付けられたこの事件だが、1959年2月27日、琉球民裁判所の下級審にあたる「巡回裁判所」で、懲役4年半の判決が下された。驚くほど軽いこの判決は、「承諾殺人」であるという被告の主張がかなり認められたことによる。当時は新聞記者による被告のインタビューが許されていたようだ。Aと記者との一問一答が掲載されている。彼はそのなかで、「判決は重すぎる」と語っている。

……上告しようと思う。……〔刑は〕重すぎる。これではまじめにもなれない(泣きべそをかいた表情)。……更正しようと思ってもこれではどうしようもないではないか。悪いことはしたが……近頃はいらいらする。[沖縄タイムス 1959.2.27]

Aが上訴したかどうかは明らかではない。これで刑期が確定したとしても、1964年ごろには出所しているはずだが、その後のAがどうなったのかは知る由もない。

     *  *  *

この連載では、1960年前後の「沖縄タイムス」の記事から、戦後の沖縄の知られざる側面について述べようと思う。もちろん、わずか数年のあいだの新聞記事の、それもごく一部だけしか取り上げることができないので、これが戦後の沖縄の全てだと言うつもりはない。すべての記事を網羅しているわけでもないし、取り上げ方に一貫性があるわけでもない。ただ、たまたま目についた記事からでも、私たちは沖縄について多くを学ぶことができる。

次回以降、「共同体と暴力」「少年犯罪」「治安問題」「貧困とスラム」「売春と人身売買」などのテーマについて、断片的にだが、書いていきたいと思う。しばらくお付き合いくだされば幸いです。

(連載第2回以降はα-synodosで! → http://synodos.jp/a-synodos

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岸政彦(きし・まさひこ)

社会学

1967年生まれ、大阪在住。大阪市立大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)。2006年より龍谷大学社会学部教員。

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