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【読書感想】刑務所わず。

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刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話


Kindle版もあります。

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刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話

内容(「BOOK」データベースより)

上場企業の社長から、逮捕、1年9か月の刑務所生活へ―ムショでのあだ名は、なんと「社長」!介護係として老人のシモの世話に励み、塀の中の懲りない人々にドン引きし、理不尽な先輩受刑者に怒鳴られながら、人生ゼロ地点でつかんだ真実とは?「刑務所グルメ」の実態から「エロ本差し入れ」の秘訣まで、ぜーんぶホントのホントを書きました!

堀江さんが仮釈放されたのが、2013年3月27日。

もうあれから10ヶ月近くが経とうとしています。

あの日の朝、ネットで「ホリエモン釈放!」のニュースと、釈放直後の生中継を観たのは、ほんの少し前のような気がするのですが……

時間が経つのって、早い。

出所後、ロケットを打ち上げたり、本を何冊も上梓したりと活発な活動を続けている堀江さん、この本には、その「刑務所生活の終盤」と、「刑務所でやっていた、本当のこと」が収録されています。

 なんでも、キーボード生活20年あまりの私が、慣れない手書きでせっせと書いた手紙は、合計113通、便箋791枚。データ量は約55万3700文字にもなったらしい。

 だが実は、所内の事情があまりにリアルに書かれているため、検閲によって手紙が黒塗りにされたことや、刑務官から「書くな」と指導されてボカした部分も……。2013年3月27日にシャバに出られたとはいえ、あくまで仮釈放の身。つまり、塀の中の真実は、刑期満了を迎える11月10日まで伝えることができなかったのだ。

当然のことなのですが、これまでの「刑務所からの手紙による発信」では、検閲が入るため「言えなかったこと」も、かなりあったそうです。

まあ、そりゃそうですよね。

刑務所内の情報が「筒抜け」というのも、保安上のリスクやプライバシーの問題もあるでしょうから。

というわけで、今回は、これまでよりも、さらに具体的な「刑務所生活」が語られています。

この本を読んでいると、堀江さんが「刑務所生活」を詳細にレポートしていたことによって、刑務所内での対応「暖房や布団のこととか、お菓子の配給とか」に多少の影響もあったのではないかと思われます。

堀江さんというのは、いろんな意味で、「エポックメイキングな受刑者」だったと言えるかもしれませんね。

こんなに「刑務所のなかから、リアルタイムで発信し続けていた受刑者」は、世界にも類がなさそうです。

 堀江さんは、「刑務所生活」について、毎日風呂に入れないとか、不自由なことはあるが、想像していたほど食事が酷いわけでもなければ(「本当に美味しいメニューもあった」そうです)、「魑魅魍魎のような受刑者がところ狭しといるわけでもない」と仰っています。「少なくとも私が長野刑務所で会ったうち7割は、ごく普通の人だった」と。

 結局、いちばん大変なのは人間関係なのだ。

 刑務所は完全な体育会系タテ社会。刑務官(いわゆる看守です)や、受刑者の先輩との関係は、かなり面倒であった。受刑者のなかには、人間関係に疲れ果て「独房や禁錮刑の方が楽」と思っている人すらいるくらいなのである。シャバであろうと刑務所であろうと、大事なのは人間関係。それ次第で、全てが決まってしまうと言っても過言ではないのだ。

 堀江さんは「上司として自分がやってきたことが、返ってきたんだな」と思って、ガマンしていたそうなのですが、それまでの生活と比べれば、やっぱりつらかったのだろうな、と。

 体育会系が得意そうじゃないし、明らかに自分より仕事ができなさそうな人を「先輩だから」と立てなければならない状況というのは、すごくもどかしかったはず。

 外に発信される情報では、観察者として平然と振る舞っているようにみえた堀江さんなのですが、仮釈放のときのことを描いた西アズナブルさんのマンガでの堀江さんの表情をみて、僕も涙が出そうになりました。

 表に出ている部分では「刑務所の中でも、こんなに『自由』に発信しているのか!」って思ってしまいがちなのだけれど、実際は「自由だったのは、頭の中にあるものを『言葉にして発信すること』だけ」だったのだから(しかも検閲つき)。

 堀江さんが語る「受刑者たちの姿」を読むと、結局のところ、刑務所というのは「更正」を主としているというより、犯罪者を一時的に「隔離」しておくためだけの施設ではないのか?とも思うんですよね。

 刑務所内では、さまざまな「作業」があるとはいえ、それで出所後も食べていけるほどの技能とは言い難いし、もらえるお金もごくわずか。

 「字をまともに読めない人もいた」そうです。

 再犯率が5割以上あるというのも、やるせない話です。

 ただ、「ちょっと道を踏み外してしまった、普通の人」とは言い難い、こんな受刑者の話もありました。

 なかでも、最も反省の色がうかがえなかったのが中部地方出身の「魚河岸くん」。私と同じ工場の衛生係で、ちびで小太り、調子のいい子分タイプの若造だ。子供の頃から悪さをしてきて、その様子は聞いているだけでもドン引きレベル。

(中略)

 が、彼が捕まったのは窃盗や車上荒らしではない。「強制わいせつ」なのである。美容師を目指して関西に出た彼は、川沿いの人里離れた場所にワゴンを停車、通りかかった女性を拉致し強姦していたらしい。地元に返ってもその癖は抜けず、真っ暗なロードサイドを自転車で走っている女子高生を見つけては、自転車ごと田んぼに蹴飛ばし脅して強姦したという……。テレビドラマかケータイ小説でしか聞いたことがないような、ちょっと想像を絶する話に、私の口から出た言葉は「よく、萎えずに勃つよね……。俺は無理だ」のみ、

 そんな鬼畜な彼は、対人スキルが低いどころか、むしろ高め。シャバにいた頃は魚市場に勤務し、奥さんと子供までいる。悪事を働かなくても、十分に楽しい生活を送れるだけの能力があると感じた。となれば、気になるのは「なんで、リスクを犯してまで犯罪を犯すのか?」ということ。一度、

「対人能力のスキルがあって営業力もあるから、悪事を働かなくても生きていけるはずなのに何でそんなことするの?」と尋ねたことがあった。彼の答えはこうだ。

「たしかにそうなんですけど、仕事も2~3時間で終わるんで暇があって、その間にソーシャルゲームやったりとか車上荒らしとか強姦したり……。やっぱり、病気ですね」

 つまり、趣味のレベルで車上荒らしや強姦をしていたのである。それを聞いた瞬間、開いた口が塞がらずポカーンとなったのは言うまでもない。

 こういう人間もいるのか……

 世の中には「悪いことをする人」がいるというのは知っているつもりです。

 でも、実際にこういう「悪事の基準そのものが世間一般とは違ってしまっている人」や「暇つぶしで、他人を傷つけることに何の躊躇いもない人」の存在を知ると、何を信じればいいのか、とは思います。

 そして、こういう人は、「案外、普通に生きている」のです。

 伊坂幸太郎さんの『死神の浮力』に、こんな言葉がでてきます。

「アメリカでは、二十五人に一人は良心を持っていない、って話、聞いたことがある?」

 たぶん、人間としてあたりまえの「良心」を持たない人というのは、日本にもいるのです。

 彼らの「無作為の悪意」に対して、僕たちは、どうやって身を護っていけばいいのか……

 本当に、暗澹たる気持ちになる話でした。

 世の中がこういう人ばかりじゃないのはわかっているけれど、ひとりの人間が決定的に傷つけられるには「ひとりの悪意」で十分だから。

 

 また、ネット社会は、刑務所にもさまざまな影響を与えていることも紹介されています。

 ついに刑務所でもSNS対策を取りはじめた。

 衛生係は、工場内の受刑者の席順表や部屋割り、更衣室の場所や食堂で座る場所などをメモするのだが、そこに「フルネームを書くな」と言われたのだ。これが意外と大変。受刑者が作業報奨金や差し入れ金で購入したものを仕分けし、持ち込み袋に入れる作業をするのだが、そこにもフルネームが書いてある。それを黒塗りにしたり、作業用ノートに書くのもすべて禁止となってしまった。つまり、周りにいる人たちを、名字と受刑者番号だけで把握しなければならなくなったのである。

 とはいえ、以前から刑務所にいる人はフルネームを知っているので出所してからググったりして調べたりするんだよねぇ……。

 刑務所内で相談して、出所してから悪事を行わないように、受刑者どうしが出所後に連絡をとることは、厳禁なのだそうです。

 しかしながら、今の世の中、名前さえわかれば、Facebookで「検索」することも可能です。

(もちろん、相手がやっていれば、という話ではありますが)

 堀江さんのような有名人の場合は、「こちらから連絡を取ろうなんて思わなくても、相手にとってはすぐに連絡先がわかる状態」になってしまうのです。

 実際のところ、日常会話そのものを禁じないかぎり、ちょっとした拍子に、相手の名前くらいはわかってしまいますよね。

 刑務所のシステムそのものは昔とそんなに変わらなくても、社会の変化によって、変えていかざるをえないところもでてきているようです。

 この本のなかで、堀江さんが、塀の中から、難関資格をとるのに苦戦しているスタッフを、こう励ましていたのが印象的でした。

 簡単でしょ、自由なんだから。

 そうだよね、できないんじゃなくて、やってないだけなんだよな、とりあえず僕は「自由」なのだから。

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