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軍オタ的には「いずも」級は強襲揚陸艦らしい

このブログでとりあげた朝日新聞の「いずも」級にの記事について以下の様なブログが
ブロゴズあることを昨日知りました。

護衛艦いずもは空母だって? ご冗談を
http://dragoner-jp.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8.html

これが件の朝日の記事です。
海自最大の護衛艦「いずも」、どう見ても空母なのでは…
http://www.asahi.com/articles/ASFDT5KFRFDTUTIL03D.html

以下は関連したぼくのブログです。
海自最大の護衛艦「いずも」は空母か
http://kiyotani.at.webry.info/201401/article_10.html
「いずも」級ヘリ「空母」を駆逐艦と称していいのかね? http://kiyotani.at.webry.info/201401/article_11.html

「護衛艦いずもは空母だって? ご冗談を」は、悪質な印象操作です。
あまりの粗雑な主張に怒るとか以前に笑ってしまいました。しかもブログ主のdragoner氏はご自身が実質的にいずもを護衛艦ではないと主張しているのですが、その自覚も無いようです。

 dragoner氏は空母とは固定翼の戦闘機や攻撃機を搭載している軍艦だ、ぐらいに思っているようです。
 ですが、空母には米海軍の原子力空母も含まれれば、イラストリアスのようなVTOL機を搭載できる軽空母、対潜ヘリなど搭載したヘリ空母など多様な空母が含まれます。

 ところがdragoner氏はあたかも朝日の記事が、「自衛隊は戦闘機が搭載できるような攻撃的な空母を、駆逐艦と偽って調達している。軍靴の音が聞こえてくる!!」的なヒステリックな記事だと攻撃したいようです。

「”いずも”型護衛艦は、艦首から艦尾に至る長大な飛行甲板を持っており、この事をして見た目が空母と同じだから空母と言いたいようです。」

全通甲板を持つ事で空母(あるいは軽空母)である、またはその能力を持つという主張は、90年代に”おおすみ”型輸送艦が建造された際に加え、”いずも”型護衛艦の姉妹艦に相当する”ひゅうが”型護衛艦が計画されていた時も、朝日新聞は繰り返し報道しております。20年近くも同じネタを繰り返すのは、売れない芸人を見ているのに似て、憐憫の情が湧かなくもないですが、一体何回繰り返すつもりなんでしょうか。



 このような主張を裏付ける記述は全く存在せず、単なるレッテル貼りです。軍事ブロガーには相手が主張してもいないことを、主張したと決めつけて攻撃する人が少ないないようですが、リテラリーが低いのか、悪意があって捏造しているのか。はたまたその両方なのでしょう。

 dragoner氏は空母には軽空母やヘリ空母が含まれることを知っていて、煽っているのかも知れません。
 恐らくは自分が煽りたい対象の軍オタや自衛隊は常に正しいと信じている、純朴だけどリテラシーが低い国士様たちはどうせ新聞なんてとっていないのだろう、件の記事のネット版もカネを払って見ていなのだろうと思って何を書いてもいいのだ、と思っているのかもしれません。

 まあ、そうでないとこんなブログは書けないでしょう。
 記事を書いた谷田記者は^長いキャリアをもつ防衛専門記者です。防衛省上層部にも多くの取材源をもっており、全通甲板があるから空母だなどと、書くわけがありません。
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/authors/2010052600008.html


 件の朝日の記事は一方的にいずも級を空母であると指弾しているものではありません。かなりの字数を使って防衛省や海自側の主張や説明、海自OBなどのコメントも以下のように掲載されており、この問題を多角的にニュートラルに紹介しています。

なぜ護衛艦なのか。
 艦種を定める防衛省の訓令では、任務別に潜水艦や輸送艦などがあるが、戦闘が主目的の大型水上艦はすべて護衛艦とされるからだ。河野克俊・海上幕僚長は「規則上、護衛艦としか呼びようがない」と話す。
 空母の保有をめぐっては1988年に示された政府見解がある。「大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されない」。遠方に出向いて対地・対艦攻撃ができる戦闘機を積む米空母のような能力は、専守防衛の立場を逸脱するとの判断にもとづく。
 いずもが空母ではないとする理由を防衛省は「大規模災害や国際緊急援助にも使える多目的艦で、打撃力を持つ戦闘機を載せる構想がないから」と説明する。
 F35Bなど垂直発着できる戦闘機の搭載については、同省幹部は「改修は可能だが、航空機の取得や要員養成など膨大な時間と経費がかかり現実的に不可能」と否定した。

香田洋二・元自衛艦隊司令官は「いずもは、空母とはまったく本質を異にする船。空母が将来、必要になるなら、国民に必要性を説明した上で造るべきだ」。


 海自はいずも級をDDHと呼称しています。
 これは国内的にはヘリコプター搭載護衛艦ですが、国際的にはヘリコプター搭載駆逐艦です。DDとは言うまでもありませんが、駆逐艦、デストロイヤーを意味しています。いずもが「駆逐艦」がではないならば、DDHとは称しないはずです。それともDDはなにか別な意味でもあるのでしょうか?

 外国の海軍士官に「満載排水量が2万5千トンもあって、でも砲がなく、対艦ミサイルも、近接防御用以外の対空ミサイルも、魚雷発射管ももたず、全通甲板があってヘリを10機前後同時に運用できる軍艦をなんと呼ぶ」と尋ねれば、まず「駆逐艦」という答えは返ってこないでしょう。
 

dragoner氏は以下の部分についても批判を行っております

「船体の長さ約250メートル。排水量1万9500トン。真珠湾攻撃に参加した旧日本海軍の空母「翔鶴(しょうかく)」「瑞鶴(ずいかく)」に近い大きさだ。

70年前の兵器と現代の兵器の分類を同列に語る時点でどうかしていると思います。自衛隊の90式戦車は50トンの重量がありますが、90式戦車より軽い大戦中のパーシング(アメリカ)、KV-1(ソ連)のように重戦車と呼ぶ事はありません。もっと身近に例えれば、現代のスマートフォンは、昔のスーパーコンピュータ以上の処理能力がありますが、スマートフォンをスーパーコンピュータと呼ぶ人はいないのと同じ事です。


 これは軍オタにありがちな、視野狭窄的な批判です。新聞の読者は多岐にわっており、みんなんがみんな軍事に詳しいわけではありません。
 ですから単にいずもの大きさがどの程度のものであるか、分かり易い例を出したのでしょう。
 例えば公園を東京ドーム5個分とかというのと同じようなものです。dragoner氏の批判は公園と野球場は違うものだ同列に扱うな、というようなものです。
 他人文章を読ませる人間が戒めないといけないことの一つは、読者はすべて自分と同じような知識があって当然だという思い込みです。


 そしてdragoner氏は自作の表を用いてぼくの以下のコメントを批判しているます。

軍事ジャーナリストの清谷信一氏は「世界標準では空母そのもの。政府は政治問題化するのを恐れ、なし崩し的に拡大解釈しているのでは」と指摘する。

ここで朝日新聞と”軍事ジャーナリスト”氏の疑義の通りに、世界では”いずも”型に類する艦艇は、「空母」と呼ばれるのでしょうか? 近年、世界各国で配備が進んでいる似たような全通甲板を持つ艦艇が、各国でどのような呼称がされているのかを一覧にまとめました。

 不思議なことにこの表には1942年に就役したあきつ丸が入っています。第二次大戦中が「近年」なのでしょうか。

 また英海軍のイラストリアス、イタリア海軍のジュゼッペ・ガリバルディ、カヴール、タイ海軍のチャクリ・ナルエベトなど「軽空母」が落とされています。特にカヴールはいずも級によく似た、艦であり、これを落とすのは極めて公正さを欠いています。
 つまり「似たような」というのはdragoner氏のかなり公正さを欠いた主観に基づく取捨選択がなされており、氏は自分の都合のいいよう情報を操作してこの表をつくったということです。
 

 この表にはおおすみまで入っておりますが、dragoner氏はいずも級とおおすみ級が「似たような全通甲板を持つ艦艇」だと考えているようです。素直にこの表を見るならばdragoner氏はカヴールよりもおおすみの方が、いずもに近い艦種だと信じていることになります。
 ヘリを収納・整備するハンガーがなく、同時に1機しかヘリが運用できないいおおすみ級といずもは同じカテゴリーの艦であると考えているのは朝日新聞ではなくて、dragoner氏のようです。

 それは以下の記述からもうかがえます。
全通甲板と航空機積むだけで空母とするような単純な考えで建造されたものではありません。これは、海上自衛隊の”おおすみ”型、”ひゅうが”型、”いずも”型も同じで、実際に護衛艦”ひゅうが”は東日本大震災では洋上基地として、災害救助に活躍しました。


 この表に入れられているオーシャン級をdragoner氏はヘリ空母・揚陸艦と分類しています。この点からも氏がヘリ空母や軽空母を「空母」と考えていないことが伺えます。

 dragoner氏はいずもが空母ではない、と証明したい気持ちが先走って気づいていないのかもしれませんが、この表で挙げられている艦は得てして揚陸艦のたぐいです。

 いずもはこれらと同じ、あるいは近いと称するのであれば、dragoner氏はいずもは「護衛艦」ではなく、「揚陸艦」あるいは「強襲揚陸艦」だと主張していることになります。

 またいずもとおおすみが同じような艦であるならば、おおすみも「護衛艦」=駆逐艦ということになります。 

 揚陸艦の類は海自では護衛艦に入れません。海自には強襲揚陸艦というカテゴリーはありませんが、おおすみと同じく「輸送艦」に分類されるではないでしょうか。

 またこの表にもあるファン・カルロスなどの近年の強襲揚陸艦はヘリ空母的な運用も重視しており、多目的空母とも分類されています。最近はひとつに艦に揚陸やヘリ空母、災害派遣など複数の機能を持たせるようになっています。
 ですからこれらを「強襲揚陸艦」と呼ぼうと「多目的空母」と呼ぼうと、ぶっちゃけどちらでもいいわけです。ですが、これらを駆逐艦と呼ぶ国はないでしょう。
 
 
 仮にdragoner氏がカヴールを見学する機会があって、「立派なデストロイヤーですね」と発言したら失笑を買うことでしょう。
 ぼくが取材現場でそんな発言をしたらまともに取材の相手をしてもらえなくなるでしょうね。

 
 強襲揚陸艦を駆逐艦ないし水上戦闘艦である、あるいは同じカテゴリーに入る艦だと主張するのは極めて乱暴でしょう。

 さて、それではいずもは「強襲揚陸艦」なのでしょうか?

 ぼくはいずもの公開に先駆けて海自が行ったレクチャーにも参加しましたが、海自はいずもの主任務を護衛艦隊の旗艦であり、搭載ヘリをもって対潜水艦戦を行うことだと説明しています。ですから護衛艦と行動を共に出来るように30ノット以上の高速航行が可能である必要があるわけです。

 であれば、いずもは実質的に対潜用ヘリ空母、と考えるのが自然でしょう。
 ですがいずもはまた、無論車輌などを搭載でき、揚陸作戦の指揮を取れる機能を持っているので「揚陸艦」としても運用できます。
 だからといて、その機能があるからといっていずもを「強襲揚陸艦」だと普通呼ばないでしょう。海自もそのようには呼んでいません。

 意地の悪い言い方をすればいずもは他の艦に給油する機能をもっていますから、「護衛艦」でも「強襲揚陸艦」でもなく「艦隊補給艦」だと強弁することもできるでしょう。


 表にあった独島を韓国海軍が駆逐艦やフリゲイトなどの旗艦するでしょうか。フランス海軍がミストラルを同様に使うでしょうか。それはまずありえません。


  常識的に考えればいずもが駆逐艦やフリゲイトなどの仲間なのか、多目的空母やヘリ空母の仲間なのかは論を待たないでしょう。いくら屁理屈をこねても、多目的空母あるいは強襲揚陸艦の類が、駆逐艦に分類できるわけはありません。


 谷田記者が敢えて「ヘリ空母」とか「対潜空母」とより絞り込んだ表現をしなかったのは、いずもにはF-35を搭載できるのではないか、という内外の報道や、疑惑が寄せられていたからでしょう。ですから敢えて広義の空母と表現したのでしょう。


 dragoner氏は防衛省や自衛隊に対する信仰とも言える感情を持っているのでしょう。防衛省、自衛隊は常に正しい。それは証明不要の宇宙の法則だ、ぐらいに思っているのでしょう。
 それは一種の原理主義であり宗教です。あるいは自分の好きなアイドルはウンコをしないといった「愛は盲目」状態なのでしょう。
 
 それは理性の否定です。理性を否定しているから相手が言ってもいないことを捏造してまで攻撃し、自分の都合のいいよう情報だけを取捨選択して持論を補強しても平気なのでしょう。「法敵」を殲滅するためにはすべての手段が正当化されると考えているのでしょう。

 このブログの手口は戦車至上主義の人達が戦車を削減すべきとか、新型の10式戦車は必要ない既存の戦車の近代化で十分だという人達を、戦車不要車だと決めつけて攻撃するのと人たちと同じ病理です。


 率直に申し上げて、このブログがかつての朝日新聞の教科書書き換えや慰安婦報道とどこが違うのでしょうか。手法はそっくりです。

 このブログのような内容は専門誌では使いもにならない代物です。このレベルの原稿を採用する編集部はまずないでしょう。
 文章から推察する限り、dragoner氏はせいぜい高校生あたりではないでしょうか。視野が極めて狭いし、大学生でレポート書いた経験のある人間、一定の社会人経験のある人間ならばこんな文書はまず書かないでしょう。
 
 趣味に没頭するのは悪いとは思いませんが、それよりも学業を優先したり、幅の広い人達と実際に会って建設的な議論をするとかして、一般教養や自分の意見の違う人間の話をきける度量を身につける努力をなさった方が宜しいのではないでしょうか。老婆心ながら申し上げておきます。

 まあ何をいってもドグマを信じている人間を説得することはできまいでしょうけど。ですからこのような人達との論戦を行うのは非生産的な行為であると思います。
 ですから正直いってこれまでこのようなアレで胡乱な話に首を突っ込むことは避けてきたのですが、同じブロゴスに掲載されていたので、今回は敢えて書いてみました。

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