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日本で「ひきこもり」が成立した5つの理由

■正確には「階級社会」への移行期

このブログで僕はさかんに「日本は『階級社会』になった」と嘆いており、この頃本気で反論してくる人がぼちぼち現れ始めた。

僕としてはそうした反論を待っていたので、よろこばしい限りだ。

そうした反論は基本的に「日本は階級社会ではない」ということから始まる。続けて、「一部では正社員の道も保証されているから階級社会は言い過ぎ」という反論、また、「階級社会の歴史が長くある他国からすると、日本の現状はまだまだ階級社会とはいえず、むしろ恵まれている」という反論等、さまざまだ。

〈岡田斗司夫vs古市憲寿。長いのできちんと見てないが、絵面そのものが「階級社会への移行期(岡田=バブル世代、古市=絶望で幸福世代)」のような気がして貼りつけてみた〉

僕もまったくそのとおりだと思う。だから、いただいたメールには「その通りですね~」と返すことにしている。

正確には、「階級社会への移行期」ということを僕は言いたいのであり、現状は、中流社会と階級社会が世代間でくっきり色分けされた社会になっていると思う。

世代間とは、だいたいではあるが、僕の世代(「新人類世代」あるいは「バブル世代」である40代後半)以上が「中流社会」、団塊ジュニア(30代半ば~後半)より年下が「階級社会(あるいは古い表現では格差社会)」の中にいるということだ。

おもしろいのは、それぞれの世代がもつ根本的な価値観はどうやら揺るがないということであり、バブル世代や団塊世代は、マスコミ報道等で非正規雇用の問題(つまりは階級社会の問題)を見ても、基本的に「他人ごと」だと思ってしまう。

逆に団塊ジュニアより下は、自分たちのスモールサークルのなかで「ささやかな幸福」を抱いて生活しており(これを古市憲寿氏は「絶望の国の幸福な若者たち」と呼ぶ)、それほど悲惨さを感じてはいない。

それぞれが、それぞれの「クラス」や「階層」や「スモールサークル」のなかで閉ざされ、それぞれがそこそこの満足感を抱いているというのが現代の日本のようだ。

そうして、30~40年ほどかけて「階級社会」は徐々に完成していくと僕は予想している。

つまり、根源的に中流感覚を抱くバブル世代以上が死に絶え、階級社会第一世代である団塊ジュニアが高齢化するであろう30~40年後、我々の社会は完ぺきな階級社会になっていると思う。

僕としては、あと30~40年待ち、いきなり「階級社会になった」と騒いでも遅いので(というか僕は年取って死んでいるので)、今から1人勝手に警鐘を鳴らしているというわけだ。

そして、そんな階級社会であっても、古市風「スモールサークルの中の若者」と違う、他者(他の階級や「他」全般)へと開かれたコミュニケーションは可能なのか、ということを模索・提案していきたい。

それが、「階級社会への移行期」にできることだと思っている。

■日本中の都市に拡大する?

そんな社会背景を考えると、従来のような「ひきこもり」ライフを継続できる人たちは、00年代よりも、我が国では限られた階層のなかでのみ可能になるだろうと、以前当ブログでは推測した(ひきこもりは「中・上流階級」の問題となるだろう)。

一億総中流の名残があったからこそ成立した「ひきこもり」だったのであり、これからはすべての階層でひきこもりは出現しないだろうということだ。

実際、僕の事務所(officeドーナツトークトップページにある「高校生居場所カフェプロジェクト」ほかを参照)で展開している大阪府の「高校中退・不登校フォローアップ事業」のなかで出会う大阪の困難校の生徒やその家族にとって、「ひきこもり」は多々ある問題の中のひとつの事象にすぎない。

ひきこもり現象には一時的になるかもしれないが、家庭のさまざまな問題(貧困ほか)がそれを許さない。のんびりひきこもっていられないシビアな状況(主として保護者の状況)がそこにあるのだ。

こうした現象(子ども若者問題が拡大・深刻化していくことで、たとえば「ひきこもり」は問題が問題として成立しなくなる)は、階級社会化が拡大するにつれてこれから日本中あちこちの都市で起こってくるものだと僕は予想している。

言い換えると、ひきこもりは「一部の階層(つまりは富裕層)にのみ現れる特別な現象」になるということだ。それ以外の階層では、その他の問題が全面に出て「ひきこもり」は成立しにくくなってくると僕は予想している。

■ひきこもりは「恵まれた少数派」

ひきこもり問題は消滅することはないが、たぶん富裕層(経済階層が「中の上」から上~具体的には家族年収800万程度より上)に限られた問題になると思う。

だからこれからも引き続き出現するだろうが、これまでのように「国民規模で共感する」ことはなくなるだろう。

そんな、ひきこもりが可能になる家は社会全体の少数派になり、社会全体としてはよりハードな問題(つまりは貧困問題・家族問題を背景化した多くの問題)に直面せざるをえなくなるだろう。

ひきこもりは、ひきこもりが可能になる事自体が、社会全体の少数派であり、それは「恵まれた少数派」であるというマークになると思う。

■「~のための、〇〇の理由」がきらい

僕は、「~のための、◯◯(←数字)の理由」という、最近流行りのタイトルを好きではない。それはアメリカらしくプラグマティックすぎ、それこそアッパークラス・アメリカ文化のノリを感じてしまい、なんだか肌に合わない。

だからこそ、ここではパロディ的にそのタイトルをつけてみた。

下の5つの理由には中身も順番もあまり意味がなく、こうした箇条書きスタイルをパロディ化するために行なっているので、あっさり流してしまおう。

ひきこもりが「国民全体の問題」として存在しえた唯一の理由は、「1960~80年代は、日本が日本史上まれにみる『中流の時代』だったからであり、世界にまだ本格的資本主義(グローバリゼーション)の時代が訪れる前の最後の数十年だったから」につきるからだ。

だからパロディとしての5つを並べてみると、

1.子どもの1人以上が、親の干渉を受けずに過ごせる「部屋」がその家にある。

2.子どもの1人以上が、親の管理化を外れても確保できる「食料」がその家にはある。

3.子どもの1人以上が、親の監視下を外れても過ごせる「メディア環境(ネット含む)」がその家にはある。

4.子どもの1人以上が、毎月定期的な(あるいは必要に応じた)金額を受け取ることができる「経済状態」がその家にはある。

5.ひきこもりに特化した支援機関が存在していける隙間が社会にあり、そうした機関を訪れる余裕が家族にある。

つまり、1~5まですべて(部屋、食料、メディア、経済、支援機関)、ある程度の経済的余裕がなければ存在しないということになる(5の「ひきこもり専門機関」は無料ではなくなるだろう)。

「ひきこもり」は、日本の総中流社会の最後の時代にみられた一現象として、後日語られていくことになると思う。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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