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「頑張り屋」が自分に甘く、他人に厳しい理由

為末さんの「諦める力」を読んで思ったことシリーズ。この本、本当にすばらしいです。

「頑張る」時点でダメダメ

一生懸命やったら見返りがある、という考え方は、犠牲の対価が成功、という勘違いを生む。すべての成功者が苦労して犠牲を払っているわけではなく、運がよかったり要領がよかったりして成功した人の方が実際は多いのではないだろうか。

本書には「頑張ってはいけない」というサブメッセージが流れているように感じます。「頑張る」ということばは多義的ですが、ここでいう「頑張る」は、「やらなければならないことに、苦痛を感じながら取り組むこと」くらいのニュアンスです。

ぼくは「頑張る」ことが嫌いです。「『頑張る』人は一流になれない」でも書きましたが、もはや頑張ってしまった時点で負けだとすら思っています。頑張る必要があるということは、それは、自分には向いていないということですから。

スタープレーヤーは、努力を努力と思わず、努力そのものが楽しいという星の下に生まれてきていることがほとんどだ。才能があると思えているところからスタートしている努力と、自分にはまったく才能がないとしか思えないところからスタートしている努力は、苦しさがまったく違うのではないだろうか。

「頑張る」と自分に甘くなる

何より、頑張ることって、弊害が大きいと思うのです。第一の弊害は、「自分に甘くなる」こと。頑張れば頑張るほど、人は自分を甘やかすようになります。

たとえばダイエットを頑張っている人。きっと彼・彼女は頑張れば頑張るほど、「今月は本当によく頑張ったし、今日くらいはスイーツ食べまくってもいいよね☆」と、自分を甘やかしがちです。

たとえば試験勉強を頑張っている人。試験を乗り切った暁には、彼は「あぁー、本当によく頑張った!しばらくは何もしないでボケッとネットゲームでもやろう」と、自分に甘くなります。

自分の体重をストイックに管理できる人は、意志の力を消費しないかたちで、無理なく身体を維持しているように見えます。彼らは体重を管理する上で、特に「頑張って」いないわけです。自分をマイルドにコントロールして、淡々と日常を過ごしていく。

本当に頭が良い人というのは、勉強すらも頑張りません。彼らにとって、勉強は日常なのです。試験が終わったからといって、勉強をやめることはありません。意志の力を消費していないので、自分を甘やかす必要がないのです。

ぼくはマッチョな価値観なので、「淡々と継続すること」こそ、自分の価値を高めると確信しています。淡々とやりつづけるためには、頑張ってはいけないのです

ぼくはこのブログ運営についても、特段頑張っていません。毎日記事を書くのは、日常なのです。ご飯を食べたり、ウンコをしたりするような、生活の一部です。淡々と時間を割きつづけることができているので、ブログを「頑張って」書いてしまう人には、負ける気がしません。

「頑張る」と他人に厳しくなる

頑張ることの第二の弊害は、他人に厳しくなること。

ぼくは電話が大嫌いです。新人時代は電話番をさせられ、毎日最悪な気分で会社に通っていました。ぼくが会社を辞めた理由のひとつは、電話が嫌いだったことです。本当に。

ぼくは耐えられずさっさとドロップアウトしてしまったわけですが、もしもあのまま会社に勤めつづけていたら、ぼくは「頑張って」、社会人として恥ずかしくないくらいの電話マナーを身につけることができていたでしょう。何度も失敗をし、苦痛を感じ、500回くらい電話を取ってようやく、人並みになるという感じ。

これ自体はハッピーなことですが、もしもぼくがそうなった場合、ぼくは「電話がすごく苦手で、電話から逃げる後輩」が入社してきたとき、「頑張ること」を強いると思うんですよね。「オレも最初は辛かった。でも1年でなんとか乗り越えた。だからお前も頑張るんだ!」と。

しかしながら、人間には向き不向きがあります。たとえば発達障害があったりする場合は、電話がうまくできないとも聞きます。ぼくはたまたま乗り越えたけれど、後輩が乗り越えられるとは限りません。苦痛の量も、ぼくより多い可能性があります。頑張って乗り切った人は、そういう当たり前の事実認識を失いがちです。

…というわけで、頑張ってしまうのは、基本的によくないことなのです。あなたがもし、「あぁ、今自分は頑張っちゃってるな…」と感じるときは、甘えや押しつけが発生していないか、よく自己点検すべきです。

ぼくの価値観だと、頑張れば頑張るほど、人間はイヤなヤツになっていきます。適度な無理は必要ですが、無理して頑張ることを至上の価値とする人とは、絶対に友だちになれません。意志の力は有限なので、自分が楽しく取り組めることに没頭していきましょう。

努力についての価値観も問い直してくれる名著です。ほかにも記事を書いておりますので、合わせてどうぞ。

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