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かなり進んでいる中国共産党の宣伝戦略

 昨日のフィナンシャルタイムズの論説( http://www.ft.com/intl/cms/s/0/37adb544-749a-11e3-9125-00144feabdc0.html#axzz2pn3o44Vy)に、「今の国際情勢で思い起こすべきはミュンヘンの失敗ではなくサラエボの失敗」という趣旨のコラムがありました。

 簡単に言えば、ナチスドイツが軍事的野心を抱きながら台頭しているにもかかわらず、その脅威を適正に評価せずに棚上げし毅然とした対応を初期段階で怠った結果、第二次世界大戦を引き起こすことになったという「ミュンヘンの教訓」ではなく、サラエボ事件の後、各国がナショナリズムや国際的な謀略戦の中で真剣に平和への努力をすることなく戦争に向けて進んでしまった結果、第一次世界大戦が生じてしまったという「サラエボの教訓」の方が今の国際情勢に近い、という議論です。

 シリア情勢などについての記述もありますが、ここでの議論は主に東アジアの状況についてでした。

 一つの新聞の論説に一々目くじらを立てる必要もありませんが、影響力がそれなりにある新聞だということと、情勢認識の誤りが明確であること、更にはフィナンシャルタイムズの外交問題担当のコラムニストであるGideon Rachman氏のこれまでの論説がかなり中国共産党の主張に沿ったものとなっていること、等から判断して、ここにその違和感を書かせていただく次第です。

 一言で言えば、この認識、今の東アジア情勢で想起すべきは「ミュンヘン」でなく「サラエボ」という論旨こそ、かつてのナチスドイツ、現代の中国共産党、北朝鮮労働党の思う壺であり、結果的にこの地域を戦争に巻き込みかねないものといわざるを得ません。

 「ミュンヘン」の状況は、ナチスドイツの軍備的な急な増強が明白であり、かつ欧州における覇権を戦争をしてでも奪おうという政治的意図が相当程度明白であったにもかかわらず、ナチスドイツ性善説、情勢分析における根拠なき楽観視、そしてなによりもナチスドイツの暴走を止めるという強い政治的意思の欠如により、それに対応する時機を逸してしまったというものです。

 一方の「サラエボ」においては、それぞれのプレーヤーがナショナリズムを背景に軍事力増強に走り、何となくズルズルと戦争への意思もないまま、平和を希求する意思もなくそれぞれの事情でエスカレートしていってしまったというのがその実態に近いと思われます。

 今の東アジア情勢。特に今の中国共産党の動きとそれに対する日米や台湾、ベトナムやフィリピン、オーストラリアの動き、これをどちらの状況に近いと見るか、これはかなり明らかではないかと思われます。

 中国が主張するように、日本の様々な行動が地域の不安定化を引き起こしているという「中国の戦略的ロジック」を鵜呑みにでもしない限り、サラエボ後に状況が似ているとは到底考えられないのではないでしょうか。

 実際問題、日本の東シナ海での行動は、常に中国の行動へのリアクションであり、その行動のレベルも(沿岸警備隊が出てきたら海上保安庁というように)中国の行動を越えるケースはこれまで一切存在していない。また中国の東シナ海における軍事行動は、中国の国内情勢の不安定さの転嫁や中国自体の中華思想・近隣への軍事侵略を繰り返してきた歴史に根ざすものであることは、東シナ海のみならず南シナ海で同じような事態が発生していることや、環境や知的財産権など他の分野でも国際ルールを著しく逸脱し、さらにはそれを変えようとしていること、また地域の平和を長年維持してきた半ば公共財でもあるアメリカ軍のプレゼンスを排除し、アジア地域での覇権を確立して自国の国益を他国に押し付けられる環境を作ることが全ての行動の源となっていること、等から判断すれば明らかな状況です。

 軍備にしても、隣国への打撃力を専守防衛の下一切所持していない日本と、大陸間弾道ミサイル、核兵器等の大量破壊兵器、航空母艦、核弾頭ミサイルの発射が可能な潜水艦等々の配備を急ピッチで行なっている中国とのバランスを考えれば、「エスカレート」の実態もまた明らかです。

 少しでも客観的に情勢の分析が出来れば、また中国共産党が「言っていること」ではなく「やっていること」、ファクトに注目するという報道の基本が出来ていれば、この東アジア情勢をもって、「ミュンヘン」ではなく「サラエボ」に近いのだ、、、という議論は出てこようが無いと思われます。ましてや、アメリカもオバマ政権下で、世界の平和への軍事的な関与をする姿勢が揺らぎつつある状況でもあります。

 逆に言うと、仮にも世界的な定評がある一流紙においてすらこのような論評が出てくるということは、中国共産党のナチスドイツばりの宣伝戦略が世界中に浸透しつつあるということなのかもしれません。フィナンシャルタイムズだけでなく、ニューヨークタイムズの買収やらウォールストリートジャーナルの東京支局の偏向記事やら、かなり情報戦が中国共産党のシナリオどおりに進められている可能性もあります。

 日本の今後の平和や安全は、アメリカとの同盟関係がその基礎ですし、国際世論にどう真実を伝えられるかに大きくかかっています。その観点からも、日本外交の巻き返し、まさに待ったなしの一年になりそうです。

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