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- 2014年01月07日 03:06
広東省の覚せい剤村摘発・続報
広東省沿岸部に位置する陸豊市博社村、人口わずか14000人という小さな村をあげて、覚せい剤の密造が行われていたというニュースの続報です。
香港ベースの英文ニュースSouth China Morning Postが、5日付で掲載した関連記事は、この村で行われていた覚せい剤密造の様子を伝えてくれています。
この記事によれば、博社村で行われていたのは、マオウ(エフェドラ)という植物からエフェドリンを抽出して、覚せい剤を製造する方法だといいます。
記事の一部を日本語にして紹介しましょう。
そもそも、19世紀末ころ、漢方薬として使われるマオウを研究していた薬学者の長井長義が、エフェドリンの分離に成功し、そこからメタンフェタミンが生み出されたのです。マオウからエフェドリンを抽出し、それを原料に覚せい剤を作り出す方法は、覚せい剤密造の原点とでも言えるでしょうか。
また、エフェドリン類を原料としてメタンフェタミンを合成する際には、様々な化合物が触媒として使われます。さらに、メタンフェタミン塩酸塩を精製するためには、エーテルや塩酸などが使われます。塩化チオニル、エーテル、塩酸など刺激性の強い臭気を放つ化合物を使うため、メタンフェタミンの密造には悪臭がつき物なのです。
博社村で行われていたのは、原料も工程も昔ながらの密造法、しかも小規模な家内労働による生産だったようです。
そういえば、中国では最近、覚せい剤密造拠点の摘発が増えていますが、その大半が小規模なもので、しかもマオウから抽出する密造法が多いといいます。国連薬物犯罪事務所の報告書(下記参照②)によると、2012年中に摘発された結晶タイプの覚せい剤密造施設は228か所、原料としてマオウを使うものと、風邪薬などに含まれるエフェドリン(あるいはプソイドエフェドリン)を使うものがほとんどだったということです。同じ資料には、摘発ケースの半数以上が広東省だったという報告もありました(下記参照②)。
中国政府は、このところ、覚せい剤密造の抑え込みに力を入れていて、2012年にはエフェドリンなどを含む医薬品の販売制限を導入し、また、2013年6月には、薬物密造目的でのマオウ栽培や売買を薬物関連犯罪として取り締まるという方針を発表しています。
しかし他方で、中国には、覚せい剤密造に使われる様々な原料化合物を世界各地に向けて、大量に出荷している国という一面もあります。メキシコでは、中国から密輸された化合物P-2-Pを原料に、大量の覚せい剤を生み出す工場並みの施設が摘発されているのです(下記参照③)。中国には、大量の原料化合物と広大な国土がありながら、大規模な密造施設の摘発がごくまれにしかないという現実を前に、私は何やら落ち着きの悪さを感じています。貧困のなかに取り残された地域で行われる密造とは別に、もっと大掛かりな設備を持つ密造拠点も、どこかで密かに稼働しているのではないか、そんな気もしてならないのです。
[参照]
①香港の英文ニュース
South China Morning Post >Police hunt drug makers after huge crystal meth raid in Boshe village(05 January, 2014)
http://www.scmp.com/news/china/article/1397789/police-hunt-drug-makers-after-huge-crystal-meth-raid-boshe-village
②国連薬物犯罪事務所のATS報告書・2013年版
UNODC, Patterns and Trends of Amphetamine-Type Stimulants and Other Drugs, 2013
http://www.unodc.org/documents/southeastasiaandpacific/Publications/2013/ats-2013/2013
③メキシコの覚せい剤密造所摘発・サイト内過去記事
メキシコで覚せい剤15トンを押収(2012/02/10)
http://33765910.at.webry.info/201202/article_4.html
【関連記事】
・中国広東省で覚せい剤密造村の一斉捜索
香港ベースの英文ニュースSouth China Morning Postが、5日付で掲載した関連記事は、この村で行われていた覚せい剤密造の様子を伝えてくれています。
この記事によれば、博社村で行われていたのは、マオウ(エフェドラ)という植物からエフェドリンを抽出して、覚せい剤を製造する方法だといいます。
記事の一部を日本語にして紹介しましょう。
「彼らは、抽出後のマオウをただ燃やすだけで、海辺の荒れ地にまとめて捨てていた。・・・密造を行っていた建物の裏庭は、刺激のある悪臭が充満していた。この場所では、ディーゼル発電機が昼夜を問わず動いて、覚せい剤づくりのためにマオウを煮出して抽出していたのだ。」(下記参照①)覚せい剤(メタンフェタミン)の原料として、最も広く使われるのはエフェドリンですが、この成分を豊富に含んでいる植物がマオウで、中国北部地域に自生しています。
そもそも、19世紀末ころ、漢方薬として使われるマオウを研究していた薬学者の長井長義が、エフェドリンの分離に成功し、そこからメタンフェタミンが生み出されたのです。マオウからエフェドリンを抽出し、それを原料に覚せい剤を作り出す方法は、覚せい剤密造の原点とでも言えるでしょうか。
また、エフェドリン類を原料としてメタンフェタミンを合成する際には、様々な化合物が触媒として使われます。さらに、メタンフェタミン塩酸塩を精製するためには、エーテルや塩酸などが使われます。塩化チオニル、エーテル、塩酸など刺激性の強い臭気を放つ化合物を使うため、メタンフェタミンの密造には悪臭がつき物なのです。
博社村で行われていたのは、原料も工程も昔ながらの密造法、しかも小規模な家内労働による生産だったようです。
そういえば、中国では最近、覚せい剤密造拠点の摘発が増えていますが、その大半が小規模なもので、しかもマオウから抽出する密造法が多いといいます。国連薬物犯罪事務所の報告書(下記参照②)によると、2012年中に摘発された結晶タイプの覚せい剤密造施設は228か所、原料としてマオウを使うものと、風邪薬などに含まれるエフェドリン(あるいはプソイドエフェドリン)を使うものがほとんどだったということです。同じ資料には、摘発ケースの半数以上が広東省だったという報告もありました(下記参照②)。
中国政府は、このところ、覚せい剤密造の抑え込みに力を入れていて、2012年にはエフェドリンなどを含む医薬品の販売制限を導入し、また、2013年6月には、薬物密造目的でのマオウ栽培や売買を薬物関連犯罪として取り締まるという方針を発表しています。
しかし他方で、中国には、覚せい剤密造に使われる様々な原料化合物を世界各地に向けて、大量に出荷している国という一面もあります。メキシコでは、中国から密輸された化合物P-2-Pを原料に、大量の覚せい剤を生み出す工場並みの施設が摘発されているのです(下記参照③)。中国には、大量の原料化合物と広大な国土がありながら、大規模な密造施設の摘発がごくまれにしかないという現実を前に、私は何やら落ち着きの悪さを感じています。貧困のなかに取り残された地域で行われる密造とは別に、もっと大掛かりな設備を持つ密造拠点も、どこかで密かに稼働しているのではないか、そんな気もしてならないのです。
[参照]
①香港の英文ニュース
South China Morning Post >Police hunt drug makers after huge crystal meth raid in Boshe village(05 January, 2014)
http://www.scmp.com/news/china/article/1397789/police-hunt-drug-makers-after-huge-crystal-meth-raid-boshe-village
②国連薬物犯罪事務所のATS報告書・2013年版
UNODC, Patterns and Trends of Amphetamine-Type Stimulants and Other Drugs, 2013
http://www.unodc.org/documents/southeastasiaandpacific/Publications/2013/ats-2013/2013
③メキシコの覚せい剤密造所摘発・サイト内過去記事
メキシコで覚せい剤15トンを押収(2012/02/10)
http://33765910.at.webry.info/201202/article_4.html
【関連記事】
・中国広東省で覚せい剤密造村の一斉捜索



