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Suicaの本質は“誰何”-JRスイカ売りの何が問題か-

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 昨年2013年にニュースになった出来事で印象に残っているのは、JR東日本(以下、JR)がSuicaのデータを日立製作所(以下、日立)に販売して問題になったことだ。

 この問題に対する世間の批判は大きく分けて二つあった。

 一つは「個人情報を勝手に売るなんて!」というもの。「自分の個人情報が広まってしまうのが心配」と言う。

 もう一つは、「事前に利用者に一言の断り、お知らせも無く売ったのが問題」という声。

 この二番目の批判については、では、今でも充分うるさい駅の構内で、「お客様への今後より一層のサービス充実のためにデータを利用させていただくことがございます。お客様のご理解とご協力をお願い致します」というアナウンスを繰り返し流せば、満足するのか。

 私は「ご理解とご協力」はうんざりだし、事前に一言言ったからOKなどという、そんな単純な問題ではないと思っている。

 で、一つ目の「個人情報なのに!」というものだが、これについてはJRは今回、日立に売ろうとしたデータは個人情報ではない、という見解を示している。

 「個人情報を売るのは問題だ」と言うなら、「じゃあ、個人情報でなければ問題ないよね」となる。

 私はこれに関してはJRの見解に賛成で、どこの駅で乗ったとか降りたとかいう情報は個人情報だとは思っていない。

行動履歴を含むパーソナルデータ

 そもそも個人情報とは何か。

 個人情報というのは、名前や生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなど、個人を特定できるものを指すのであって、乗降駅の情報や何を買ったかという購買履歴などは個人情報ではない。

 これらの「行動履歴」は、それだけでは個人情報ではなく、名前や電話番号などと結び付けられて初めて個人情報になる。

 なので、物凄く田舎の人口の少ない街などでは、行動履歴だけで個人が特定でき、個人情報になる、ということはあり得るだろう。

 それでは、こうした行動履歴全般の情報のことは「個人情報」ではなく何と言えばいいのか。

 国では「パーソナルデータ」と言っている。

 「ビッグデータ」というのは、このパーソナルデータの集合体である。

東京では誰もが持っているSuica

 私は東京人だがSuicaを使わずに生きてきた。

 駅の改札の手前で毎度、「私、ちょっと切符買って来ますんで」と言って、仲間や先輩を待たせ、「えっ?どうしてSuicaじゃないの?」といつも言われるのをずっと心苦しく感じて来た。

 Suicaを使わない理由はSuicaの思想が嫌いだからだが、そこで「Suicaの思想が…」などと言うと変な人だと思われるので、「古風でアナログな人間なので、ピッてやる最新式のは苦手なんですよ」と答えることにしている。

 私が古風な人間であることは確かにそうなので、皆それで納得してくれるが。

 東京圏に住んでない人のために説明しておくと、SuicaとはJR東日本が販売しているICカード。お金をチャージ(貯めておく)しておいて、改札機に翳すと乗車料金が引かれる。定期券にもなり、対応している店では買い物もできる。

 「いや、Suicaが何かは知っています。ウチの地方にも似たカードがありますし。そうじゃなくて、東京での現状がどうなのかが知りたいです」と言う人が多いと思うので、それも説明しておくと、東京では、今はもうほとんどの人が持っている印象。

 あくまでざっくりとした印象だが、朝の通勤時間帯などは、8割以上の人がSuica(またはそれに類するカード)を使っている感じ。Suicaで買い物をする光景も日常的である。

Suicaでしか通れない改札機の増加

 ここではJR山手線の駅を例にとって話すが、改札機には大きく2種類あって、紙の切符とSuicaが両方使える両用タイプのものと、Suicaしか使えない(切符を投入する口がない)ICカード専用改札機とがある。

 昔は両用タイプ(以下、両用機)が多かったが、ここ数年でじわじわとICカード専用改札機(以下、専用機)が増えて来た。

 次の写真をご覧いただきたい。















 これは昨年2013年の夏に撮った上野駅の中央改札である。

 全部で16台の改札機が並んでいるがその内の9台が専用機である。

 手前と奥に人が集中している辺りに両用機がある。

 その並び順を言葉で説明しても分かりにくいと思うので、両用機を□白四角、専用機を■黒四角で表すとこんな感じ。








 例えば上図で、切符を持ってる人が改札内から外に出ようとして、左から4番目の改札を通ろうとした場合、通れない。すぐ左に両用機があることに気づかず、右にずれた場合、「あれ?ここも駄目だ」と言ってまた右に一つずれる。そしてまた「あれ?ここも駄目だ」→右にずれる→「あれ?ここも駄目だ」という流れを最大で9回も繰り返すことになる。

「そんなの、改札機に近づく前に、どこに両用機があるか、見りゃ分かるだろう」と言う人は、東京で生活したことがない人である。

 時間帯にも依るが、東京の人込みは凄まじく、遠目には改札機の姿は見えず、改札機の直前まで来てから初めてそこが両用機でないことに気づくことは多い。

 私は、このように右に(または左に)延々とずれて行く人を何度も見たことがある。そしてそういう人は自身が困っているだけではなく、後ろから次々と押し寄せる人波にも迷惑をかけている。

 朝のラッシュ時などは改札をスムーズに通過せずにこうして右往左往している人がいると人の流れが滞り、渋滞を作る原因にもなっている。

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