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2014年、底の抜けた日本を生き抜く

 今年最初のマル激は、哲学者の東浩紀さんをお呼びして、生きにくい2014年の日本をどう生き抜けばいいかを考えてみることにした。

 ゲストの東氏は昨年2013年を、「1990年代に始まった改革指向の時代が終わり、変わらなくて良いのだ、変われないのは仕方ないのだということになってしまった年」と位置づける。その無力感や徒労感は、東日本大震災や福島第一原発事故のような国難に直面しても、そう簡単に変わることはなかった。

 東氏自身は福島の風化を食い止めるために、2013年に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』と『福島第一原発観光地化計画』という2冊の本を上梓し、今、チェルノブイリや福島で起きていることを「観光」という切り口から伝えようとしている。しかし、東氏自身の見通しは暗い。日本全体が福島に同情しているのは確かだが、それならば何とかしようという動きにつながっていないのだ。幾多もの挫折を繰り返す中で日本人の多くが、自分の手に余るものや自分にとって不都合なことから目を背ける癖を身につけてしまったのかもしれない。

 日本人が全体的に劣化していると東氏は指摘する。かつて知識人や指導者たちが当たり前のように伝承してきた教養やバーチュー(美徳)といった感覚が、日本から抜け落ちてしまった結果、社会が「底が抜けた状態」になっている。かつて日本には「立派な大人」が身近にいて、その規範としての役割を果たしていた。しかし、そのような大人と知り合う機会が失われた現代においては、そもそも教養とは何か、立派な人物とは何かといった、人間が社会で生き抜く上で最も基本的な考えを共有することすら難しくなってしまった。

 そこまで劣化してしまった社会を立て直すのは決して容易ではない。しかし、改革に失敗した日本が底が抜けた状態のまま漂流を続ければ、そう遠くない将来、市場から手痛いノーを突きつけられることが避けられない。そうならないようにするためには、またそうなった時に社会がおかしな方向に向かないようにするためには、われわれ一人一人で自分たちの手の届く範囲でできることからはじめ、それを大きなうねりにしていく以外に方法が考えられない。政治だの経済だのといった大きな話では、もうどうにもならないところまで日本は来ているというのが、東氏の見立てだ。

 2014年を、単なる長期低落傾向の延長とせずに、何か将来への希望を持てる1年にするために、今、われわれに何ができるかを、ゲストの東浩紀さんとともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

プロフィール
東 浩紀 あずま ひろき
(哲学者)

1971年東京都生まれ。92年東京大学教養学部教養学科卒業。99年東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。東京大学客員助教授、早稲田大学教授、東京工業大学特任教授などを歴任。2012年より株式会社ゲンロンの代表取締役社長兼編集長を兼務。著書に『セカイからもっと近くに』、共著に『福島第一原発観光地化計画』、『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』など。

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