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労働は犯罪の入り口?

赤木智弘の眼光紙背:第305回

 特定商取引法違反で有罪判決を受けた会社の求人を、ハローワークが掲示し、その紹介で入社した女性が有罪判決を受けたという視点の記事を、毎日新聞が報じている。(*1)

 ハローワーク側は「法令に基づいて適切に対応した。求人を紹介した時点では問題はなかったと思っている」と話しているが、各地の消費生活センターには、その会社が注文していない商品を送りつけているという苦情が寄せられていたようだ。

 まず、現在の日本では「働かざるもの食うべからず」という考え方が普及しており、生活保護に対する苛烈なバッシングなどから「働いて給料を得ることでしか人間は生きていてはいけない」「働かないなら死ね」という考え方が多数派であることは言うまでもない。

 日本ではブラック企業の創業者が議員になれることなどから、こうした反社会的企業の存在は世間一般に認められている。  反社会的企業が当然のように認められ、働かなければ死ぬしかない状況を考えれば、この女性が「働いたことにより、犯罪の片棒を担いだ」ということは、日本国内においては誰の身にも起こりえることだと考えるべきである。

 実際に反社会的企業で犯罪を犯しながら、当の本人はそのことを自覚せず、または大きな問題であると考えず、当然の権利であるかのようにお金を稼ぎ、家族を養っている犯罪者がたくさん居るのだろう。もはや日本においては、労働こそが犯罪の入り口になってしまっている現状がある。

 にも関わらず、行政は反社会的企業を排除する力を持たない。というか、やる気もない。

 記事中でも行政は「情報共有は現実的に難しい」などと言い訳をしているが、少なくとも国民総背番号制度が議論される現状を考えれば、企業に番号などを付けて、行政間で情報を共有することはさほど難しくないはずだ。

 労働者は、自分が勤める企業が違法行為をしようとしても、それを止めることができない。

 働かざるもの食うべからずの日本では、労働を欲する側が、頭を下げて企業に雇ってもらわなければならない。だから企業の立場は高くなる。この構図が企業に逆らえない労働者=犯罪実行者を生む。

 仕事を「紹介する」ということは、紹介者にも一定の責任が分担されることを意味する。

 労働を欲する側が、頭を下げて、就職後に犯罪に加担させられることまで含めて、すべての責任を負わされる就職活動を余儀なくされている現状で、仕事を紹介するという立場の役割は極めて重要になってくる。

 だからこそ行政が企業を厳しく監視することが、労働者の保護に繋がるし、更には犯罪の抑止にも繋がる。特にハローワークという、企業と直接労働者を結びつける立場にいる機関が、企業監視を行うことは当たり前ではないだろうか。

 その当たり前が真っ当に行われておらず、また行政側にもその意識が薄いことが、どれだけ日本にとっての不利益であろうか。僕は膨大な問題が行政のやる気の無さによって産み出されていると考えている。

*1:紹介先は「詐欺会社」 行政の情報共有なく(毎日新聞)http://mainichi.jp/select/news/20131231k0000e040127000c.html

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