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- 2014年01月03日 12:30
アイドルとは何か~ビジネス視点から定義する~
2/3◎アイドル・ビジネスとは何か
リンク先を見るアイドルのコアは、
1.アイドルの人間的成長ストーリー
2.アイドルとファンとの関係性の成長ストーリー
の2つの成長ストーリーで構成されます。
1.アイドルの人間的成長ストーリーは、主に2つに分解されます。それは、アイドル自身の夢というゴールに向かって成長していく姿と 他のアイドルや業界関係者によって人間関係を構築し成長していく姿です。
前者は、例えば本人の夢がアーティストであるなら、ダンスや歌などのライブパフォーマンスの向上や、ライブ上での魅せ方、グループであれば会場規模の拡大がそれに当たります。
後者は、グループ内メンバーや他のアイドルとの軋轢や和解、もしくは友情の構築などが該当します。
後者は別に特殊なイベントだけが重要ではなく、メンバーのAちゃんとBちゃんが一緒にお泊りをして、色々なことを喋ったとブログに書くだけで、ファン達はその会話やどのような二人の生活を送ったかを想像して、ファンの応援対象であるAちゃんだけではなく、Bちゃんに対しても好意を感じ、よりグループに対して忠誠度が上がるといった効果もあります。
そして、
2.アイドルとファンとの関係性の成長ストーリーに関しては、握手会やチェキ会など接触現場と呼ばれるイベントを主として形成されます。
これは、アイドルCちゃんによって、自分の顔を覚えてもらえた、名前を覚えてもらえたなど認知という現象や、握手会に何回も周ることによって徐々に彼女達の人間性や悩みに関するところに触れられた、逆に向こうから興味を持ってもらえて質問されたなど、アイドルとファンの関係性が徐々に良くなっていくところにストーリーが形成され、更には、そのような接触現場での関係性の成長を基点として、ライブなどのイベントでレス(歌の振り付けに乗じて特定の人に合図を送ったりすること)を貰えた場合などは、数百、数千のファンから自分が選ばれたという気持ちになり、徐々に一方的に関係性の成長ストーリーが紡ぎだされることになります。
これらの成長ストーリーへ参加・関与するために、ライブやCD、DVDなどのコンテンツを購入することになります。これが抽象的な表現でのアイドル・ビジネスであると私は定義します。
次にアイドルファンはこのようなアイドル自身の成長と、アイドルとファンとの関係性の成長ストーリーを他者と共有したいという欲求が生まれ、ファンのコミュニティーが形成されます。(それ以外にもアイドル・イベントはファン側の待ち時間が長かったり、運営側から十分な情報が提供されないため、コミュニケーションを多く取る必要がありコミュニティの形成が促進されます。)
そのファン・コミュニティで他者間は主に2つの関係性が成立しており、共に応援するアイドルをもっと有名にしたい。もっと自分の夢に近づいて欲しいから、多くの人に応援するアイドルの良さを知ってもらいたいという気持ちのもとで、複数買ったCDを渡したり、余ったライブ・チケットを他の知り合いに無料や格安で譲ったりする協同関係と、どちらが自分達の好きなアイドルに対して愛情を注ぎ、逆にアイドルからどれだけ好かれているか(ともすれば何枚CDを買ったか、どれだけレスをもらえたか)という敵対関係の、2つの関係のバランスを取りながら、ファン・コミュニティーは構築されています。
そして、このチャートの説明の最後になりますが、アイドルファンは応援対象に対して興味サイクルを持っており、何らかの形で飽きが訪れることが多いですが、異なる応援対象となるアイドル(グループ)を発見し、そちらを選択するか、または、現在の応援対象のアイドル(グループ)の良さを再発見し、維持するかは、新たな2つの成長ストーリーを提供し続けるか、できないかによって左右されるのです。
◎アイドルのコアという成長ストーリーはどこに関係するか
実はこの2つの成長ストーリーは、アイドルがファンから認知をもらう時から維持まであらゆるフェーズに関与してきます。認知→維持と後続フェーズに移行するに当たり、1つ目の人間的成長ストーリーから徐々に2つ目の関係性の成長ストーリーに重きが置かれる関係にはなりますが、維持するためにも人間的成長ストーリーは重要な役割を占めます。先に触りだけ話しましたが、特にアイドルにおいてはコミュニティー・マーケティングがマーケティング上重要な役割を占めており、このコミュニティーの形成のコアになるのは2つの成長ストーリーを如何に提供し続け、ファン側でストーリーを創出し拡散してもらえるかがブレイクするかどうかのKSF(Key Success Factor)になります。
AKB48やももクロなど今ではマスメディアでの露出が目立ちますが、AKB48はブレイク以前はもとより、現在も固定劇場のCS放映などによりネットメディア中心でこの成長ストーリーは創作されていますし、ももクロもブレイク以前はこの成長ストーリーを語るブログや動画は数多く存在し、簡単に見つけることが可能です。そして、この成長ストーリーのコンテンツを新規ファンは見つけることにより共感し、さらにその成長ストーリーの当事者となるべく消費を続けるキッカケになるのです。
このアイドル業界におけるコミュニティー・マーケティングの重要性と戦略構築の話については、いつかお話しできる時間が来ればしたいと思います。
その他にも様々なサービス展開においてこの成長ストーリーは重要で、例えば以前紹介したクラウド・ファンディングの記事で話した理由のうち、
②アイドルヲタクにとって望まれた直接資金で成長ストーリーに参加できるサービス
⑤未熟でも新しいことに価値のあるアイドルは1.アイドルの人間的成長ストーリーに、
③誰もが経験できないアイドルサービスへの体験を望むファンは2.アイドルとファンとの関係性の成長ストーリーに深く関わってきます。
◎成長ストーリーを創作・拡散させる上での注意点
アイドル運営側が最も気を付けなければならないのは、この成長ストーリーの創作を運営側がリードするのではなく、ファン側が自主的に創作し、拡散することをマネージしなければなりません。野村総研のオタク市場に関する研究では、オタク層に共通する行動・心理特性を抽出したところ、「共感欲求」「収集欲求」「顕示欲求」「自律欲求」「創作欲求」「帰属欲求」の因子に分解されるという研究結果が出されました。
(参考)マニア消費者市場を新たに推計、04年は主要12分野で延べ172万人
その中において、「創作欲求」、「共感欲求」、「自立欲求」のワードから"他者によって作られたものではなく、自身の手で創作したものを多くの人に知ってもらいたい"といったオタク像が得られます。
確かに、ボーカロイドや2ch等から生まれたキャラなど企業などが介入することによって失敗した事例は数多く存在し、コミュニティーで生まれた創作物が最も重要視されます。
アイドルにおいては、資金力はあるけれどファン数が十分量存在しないアイドル・グループなどに散見されますが、メディア出演や広告等をうち、運営側で作られた成長ストーリーを提供しても、ファン側にとってはプロパガンダとして受け取られてしまい、逆にファンが離れていく原因になってしまうのです。
このようにアイドル運営側は、
・成長ストーリーを創作、拡散するのに十分なコミュニティーを形成するための媒体となる
・ファン側に成長ストーリーのコアとなる題材を提供し、ファン側で創作してもらう
・創作された成長ストーリーを素早く感知し、アイドル側の演出にフィードバックし増幅させる
・成長ストーリーの拡散をサポートする
といった成長ストーリーに関するマネジメントが重要になるのです。
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- 外資系戦略コンサルタントがアイドルをビジネス視点で分析



