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安倍晋三首相の靖国神社参拝批判を避けるため「無宗教の国立追悼施設」を建設しても戦死者の慰霊は無理だ

◆安倍晋三首相による靖国神社への参拝をめぐり、菅義偉官房長官は12月27日の記者会見で、靖国神社公式参拝への批判を避けるために取りざたされてきた「無宗教の国立追悼施設」と「A級戦犯の分祀」の2案について、いずれも慎重な姿勢を示した。これに対して、公明党の山口那津男代表は同日、新たな国立追悼施設の設置を検討すべきだとの認識を示している。

 しかし、「無宗教の国立追悼施設」は、戦死者の霊魂(英霊)を慰める鎮魂施設になり得るか。「霊魂を慰める行為」は、「慰霊祭」という言葉があるように「祭祀」(まつりごと)そのものであり、文字通り「宗教行為」を意味するから、日本国憲法上、「国立追悼施設」を国が建設することはできない。「霊魂を慰める行為」を伴わない「追悼行為」(死者の生前をしのんで、悲しみにひたる行為)のというのであれば、その対象は、一体、何になるのか。「無宗教」の対象は、当然「戦死者の霊魂」とはならない。「戦死者の霊魂(英霊)」を拝むとなれば、「宗教行為」になるからである。

小泉純一郎政権時代に首相官邸に設置された「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」(座長:今井敬 社団法人経済団体連合会会長,新日本製鐵株式会社代表取締役会長)が2002年12月24日にまとめた報告書は、「追悼」について、次のように定義している。

1.死没者を悼むこと

2.死没者に思いをめぐらせること

3.死没者を追憶すること

4.死没者の死の意味を考えること

5.死没者に対し敬意と感謝の意を示すこと

6.死没者を顕彰すること

7.死没者を慰意すること

8.死没者を鎮魂すること

9.遺族を慰謝すること

10.死没者に対し贖罪、謝罪すること

 施設の内容を1~3に限定すれば、無宗教追悼施設は成り立つと定義したのである。すなわち、死者を悼み、思いをめぐらせ、追憶するための無宗教追悼施設ということだ。

従って、無宗教追悼施設では、戦没者に感謝の意を示すこと、顕彰することは許されない。鎮魂もできず、戦没者の死の意味を考えることもできず、遺族が癒されることもない。

つまり、「無宗教の国立追悼施設」は、戦死者の霊魂を慰める鎮魂施設になり得ないということになる。それでも、日本は、自由主義国なのだから、こうした施設が好ましいと思う人は、行けばよい。ただし、他人を強制することはできない。

◆仮に政府が、近隣諸国はじめ諸外国の「顔色」を窺い、外交関係を配慮して、「無宗教の国立追悼施設」を建設したとして、こんなところに、国民のすべて「お参りに行く」であろうか。政府が「お参りに行くように」と誘導することはできないはずである。もちろん、国民には「内心の自由」があるから、「戦没者の霊魂」もない「もぬけの殻」の「国立追悼施設」に行って、自己満足できると思えるのであれば、それは追悼に赴く人の自由である。

 靖国神社(日本の軍人、軍属等を主な祭神として祀る勅祭社で旧別格官幣社。東京都千代田区九段北3−1−1)、千鳥ケ淵戦没者墓苑(日本の戦没者慰霊施設、大東亜戦争の戦没者の遺骨のうち、遺族に引き渡すことができなかった遺骨を安置。公園としての性格を有する墓地公園で環境省が所管する国民公園等のひとつ、東京都千代田区北の丸公園1−1 北の丸公園)に加えて、「無宗教の国立追悼施設」が建設されれば、いわゆる「追悼施設」が3か所になる。

内閣総理大臣をはじめ閣僚、政府関係者、一般国民に限らず、諸外国政府の要人、一般外国人は、追悼に行ける場所の選択肢が増える。それぞれが、1か所、2か所、3か所と好きなところへ行けばよいのである。

「唯物論」を基礎とする中国共産党1党独裁の北京政府、あるいは儒教、仏教、キリスト教などの信者がいる韓国から、追悼先をいちいち指図、指示されたり、強制されたり、拘束される必要はまったくない。

【参考引用】朝日新聞DIGITALが12月27日午後0時50分、「国立追悼施設・分祀、官房長官は慎重な姿勢」という見出しをつけて、以下のように配信した。

 「安倍晋三首相による靖国神社への参拝をめぐり、菅義偉官房長官は27日の記者会見で、靖国参拝への批判を避けるために取りざたされてきた二つの案に、いずれも慎重な姿勢を示した。無宗教の国立追悼施設の建設構想については『国民に理解され、敬意を表されることが極めて大事なことだ。国民世論の動向を見極めながら慎重に検討することが大事だ』と述べ、現時点では取り組む考えがないことを示唆した。A級戦犯の『分祀(ぶんし)』については『靖国神社が決めることだ。信教の自由に関することだから政府として見解を述べることは控える』と述べた」

 毎日新聞は12月27日午後9時47分、「首相靖国参拝:公明党の山口代表「国立追悼施設の検討を」という見出しをつけて、次のように配信した。

 「公明党の山口那津男代表は27日、安倍晋三首相の靖国神社参拝に国内外の反発が強まっていることを受け、新たな国立追悼施設の設置を検討すべきだとの認識を示した。『一つの解決策として、どのような立場の人もわだかまりなく追悼できる施設を積極的に模索すべきだ』と記者団に述べた。首相に対しては『理念的な主張だけでは、国益の最大化が困難な場合もある。国際社会の理解なくして日本の安定的な進路はない』と重ねて苦言を呈した。一方、菅義偉官房長官は新追悼施設に関し『慎重に検討すべきだ』と述べるにとどめた。(共同)」



【「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」報告書―「追悼・平和祈念施設の基本的性格」について】

 1.この施設は、日本に近代国家が成立した明治維新以降に日本の係わった戦争における死没者、及び戦後は、日本の平和と独立を守り国の安全を保つための活動や日本の係わる国際平和のための活動における死没者を追悼し、戦争の惨禍に思いを致して不戦の誓いを新たにし、日本及び世界の平和を祈念するための国立の無宗教の施設である。

 2.日本と世界の平和を実現したいという日本国民の希望を今こそ国の名において内外に明らかにすべきであると考えた理由は、前述のとおりであるが、ただ平和を祈念するだけでは単なる願望にとどまってしまう。

 平和祈念は、当然、将来に向かって平和の実現のために努力するという意志を内容とするものでなければならない。そのためには、バランスの取れた安全保障政策並びに様々な国際的な平和構築の活動を行うことによって、国として武力行使の原因となる諸要因を除去することに全力を挙げるという決意を明らかにしなければならない。

 このような平和祈念は、日本人としては当然過去に日本が係わった戦争の惨禍に思いを致すところから出発することになろう。その残酷さ、悲惨さは、直接体験した者でなくとも、よく考えれば推察できるところであろう。しかし、その中で最も重要なのは、戦争により掛け替えのない命を失った非常に多くの人のことである。その死の持つ意味の深刻さは、単に本人のみにとどまるものではない。大切な人を失った家族の悲しみ、生活上の困窮などにまで思いを致さなければ、その本当の意味は理解できないであろう。今平和の真只中にある私たちにとっては、そのような事実を直視し、その死を思って胸を痛めること、すなわち追悼することなしには本当の平和の意味も分からないのではないか。これらを踏まえてこそ、不戦の誓いや平和祈念に深さが出てくるのである。

 3.追悼の対象は、国のために戦死した将兵に限られない。空襲はもちろん、戦争に起因する様々な困難によって沢山の民間人が命を失った。これらの中には既存の慰霊施設による慰霊の対象になっていない人も数多い。

 さらに、戦争の惨禍に思いを致すという点では、理由のいかんを問わず過去に日本の起こした戦争のために命を失った外国の将兵や民間人も、日本人と区別するいわれはない。戦後について言えば、日本は日本国憲法により不戦の誓いを行っており、日本が戦争することは理論的にはあり得ないから、このような戦後の日本にとって、日本の平和と独立を害したり国際平和の理念に違背する行為をした者の中に死没者が出ても、この施設における追悼対象とならないことは言うまでもない。

4.この施設における追悼は、それ自体非常に重いものであるが、平和祈念と不可分一体のものであり、それのみが独立した目的ではない上、「死没者を悼み、死没者に思いを巡らせる」という性格のものであって、宗教施設のように対象者を「祀る」、「慰霊する」又は「鎮魂する」という性格のものではない。したがって、前述のような死没者一般がその対象になり得るというにとどまり、それ以上に具体的な個々の人間が追悼の対象に含まれているか否かを問う性格のものではない。祈る人が、例えば亡くなった親族や友人を悼むことを通じて戦争の惨禍に思いを馳せ、不戦の誓いを新たにし、平和を祈る場としての施設を考えているのである。

 5.この施設は、国が設立する施設とすべきであるから、日本国憲法第20条第3項及び第89条のいわゆる政教分離原則に関する規定の趣旨に反することのないよう、宗教性を排除した性質のものでなければならない。これは、何人もわだかまりなく追悼・平和祈念を行うことができるようにする観点からも要請されることである。

 しかしながら、施設自体の宗教性を排除することがこの施設を訪れる個々人の宗教感情等まで国として否定するものでないことは言うまでもなく、各自がこの施設で自由な立場から、それぞれ望む形式で追悼・平和祈念を行うことが保障されていなければならない。

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