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事故責任と「自己責任」 ――福島復興「加速」という名の福島「切り捨て」

東日本大震災と福島第一原発事故から、まもなく2年10カ月になります。

いまだに15万人もの人たちが福島県から避難したままです。

子どもの減少はとくに深刻です。2011年度中に約1万5494人の子どもが福島県から離れ、2012年度にも7757人の子どもが減り、合計2万3千人も減っています。少なくとも現在の状況は、福島の未来を担う子どもたちに胸を張れる状況でないことは確かです。

こうした状況のもとで、安倍内閣は、2013年12月20日に福島復興を「加速」させるとして、新指針を出し、閣議決定しました。全体的にその内容を要約すると、

●東電に1兆円の公的資金を返済しないでよいとし、原子力損害賠償支援機構からの交付金枠を5兆円から9兆円に増額した。ちなみに、福島第1原発の廃炉費用は、経産省令で電気料金に乗せてよいとする措置がとられている。

●5兆円と見積もられていた東京電力の除染費用を2.5兆円に削減する。そのために汚染土などを処理せずに埋め込む「中間貯蔵施設」方式がとられる。その建設費・管理費は1.1兆円とされる。

●長期的な除染目標は1mSv以下とされたが、具体的な期限はなく工程表も示されなかった。追加的除染の費用の見積もりもない。つまり除染を行わない方針ととれる。

●全員帰還の方針を転換し、移転先に住居などを建てたら補償する。だが、その賠償費用については、詳細な提示はなかった。一方、帰還をしたら「早期帰還賠償」90万円を支払うが、1年で補償を打ち切る。しかも帰還後は、各人が、個人線量計を使って被曝量を1mSv以下に管理する。

無責任の極み

絶対に忘れてはならないことがあります。

2006年12月に、安倍首相は「全電源喪失は起こらない」と国会答弁しました。ある意味で、福島第一原発事故の原因を作った責任者の一人です。ですが、安倍首相から自らの責任に関して反省の弁を聞いたことがありません。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b165256.htm

それどころか、五輪招致のために、「汚染水は完全にコントロールされている」という発言を繰り返し、その発言を改めないまま「国が前面に出る」として、ずるずると東京電力の救済措置をとっています。

当の東京電力も、福島第一原発事故について、経営者も株主も貸し手も責任を問われていません。にもかかわらず、1兆円の公的資金を返済しないでよいとし、2兆円以上とされる原発の事故処理・汚染水対策を含む廃炉費用を、経産省令ひとつで電気料金に乗せられることにしてしまいました。

さらに、東京電力は社債を含めて8兆円弱もの借り入れがあるのに、生かさず殺さずの状態で金を返済できる見込みがたつのでしょうか。これらは全て国民の税金か電気料金から出されます。

ツケの先送りはかえって国民負担を増大させるだけです。

本当に「中間」施設なのか

重要なのは、福島の放射能汚染は戦後最大の環境問題であるということです。

ところが、政府は、東京電力を生き残らせるために、このような安上がり方式の除染をとろうとしてします。
これを福島の復興を加速させると言ってよいのでしょうか。
むしろ福島の復興を遠のかせてしまうのではないでしょうか。
現在、福島県内では、汚染物質が1万数千カ所で野積みになっています。それゆえ、福島県の住民が、政府がいう「中間貯蔵施設」にそれを持って行って、目の前から汚染土がなくなって欲しいと考えるのは自然です。放射線管理が杜撰だとなおさらです。

しかし、子どもたちが生きる将来を考えてみましょう。

政府は、30年後に他の地域に最終処分場を作ってもっていくので、これは「中間」貯蔵施設だと言います。しかし、「最終貯蔵施設」になる可能性が極めて高いと考えられます。実際、これまでも放射能汚染の疑いがあるという理由から東日本大震災の被災地域のガレキは受け入れられなかったのです。こんなに大量の汚染土を、どこの誰が引き受けるのでしょうか。

さらに、政府は使用済み核燃料の最終処分場を作るといってきましたが、何十年たっても受け入れ地域は出てきていません。政府は「これは中間施設だ」という空約束をずっと繰り返してきたのです。

最終処分場になる可能性が高いとすれば、頭の中で、東京ドーム20個分にもなる2000万トンもの汚染土を積み上げたボタ山を想像してみましょう。巨大な最終処分場を福島に築けば、それが永遠に汚染のシンボルになってしまうでしょう。「風評被害」も終わらなくなります。

もしボタ山を避けるために、土中に2000万トンもの汚染土を埋めることにしたら、どうでしょうか。埋め立てる余地が小さくなり、費用がかかるとなれば、これ以上、表土をはがすな、除染はするな、という圧力がますます高まっていくでしょう。とくに8000ベクレル以上の汚染土はそうなります。

より問題なのは、何ら処理をしていないまま埋め立てられる膨大な量の汚染土や灰は、地下水や集中豪雨で漏れ出す危険性がさらに高まることです。汚染が広がり、半永久的に汚染地域になってしまいます。

にもかかわらず、この中間貯蔵施設は、民間企業による環境アセスメントをしないと環境省は明言しています。

実際の運用は、PCB処理のため事業会社法で作られた「日本環境安全事業」が行います。これでは集中豪雨などで流出する危険性が大きく、一度起こったら汚染水問題の二の舞になりかねません。最初に抜本的対策を打たないと、事態は収拾できなくなるのです。

セシウム回収型焼却炉という技術的選択肢

日本は、水俣、富山、四日市、阿賀野川と深刻な公害被害を繰り返してきました。その経験から言えることは、環境汚染を取り除くには、汚染物質の濃縮処理と隔離が必要だということです。

セシウム回収型焼却炉という技術があります。

すでに郡山で実証実験済みであり、飯舘村でも実証実験が始まっています。

この機械の利点は、汚染された土や草木を1000度以上で焼き、セシウムは気化した後、低温化して分離・濃縮し、もとの土からセシウムが除けます。そして土をリサイクルできます。

分離されたセシウムは、防水を徹底した3層防護の保管施設で長期保管し、減衰を待ちます。

この技術は、ダムやため池などの底の汚染土壌の処理にも必須です。

セシウム回収型焼却炉を森林バイオマス発電につければ、再生可能エネルギーを生み出すとともに除染費用も節約できます。もちろん、作業員が被曝しないように、全自動の機械で伐採・運搬します。

このようにして環境汚染からの回復を進めることが福島の復興に必須になります。

除染の技術は存在しています。しかし、政府・環境省も東電も費用がかかるからと、安上がり方式をとろうとしているのです。

環境省は公害裁判を契機にできましたが、福島の環境回復の責任を放棄し、「4大公害以前の日本を取り戻そう」としていると言われても仕方ないでしょう。

政府・東電の無責任を許してはいけない

いま何が一番大事なことなのでしょうか。

当事者主権の立場です。

それは、原発事故の被害にあった福島県を中心とする人々の立場に立つことです。

帰還か移転かを当事者が決められるようにするには、福島の環境回復が前提となります。環境を回復させない限り、帰還しようとしまいと被災者の苦しみは続くことになるからです。

ところが、政府は、除染を止めて、賠償金を上積みすることで早く帰還するように促しています。しかも、被災者は地元に帰還したら、1年後に賠償は打ち切られ、被曝線量を個人線量計で管理することになります。

  政府は、事故を起こして誰も責任を取らない東京電力をゾンビ状態で生き残らせる一方で、被災者の福島県民の「自己責任」にしようとしているのです。あまりに理不尽ではないでしょうか。

これで、どうして「復興を加速させる」と言えるのでしょうか。「琉球処分」にならっていえば、これは「福島処分」なのです。

  東京電力の破綻処理が先決です。

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