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サービス業は全てブラックと思い込んでいる大学生に伝えたい、「おもてなし」について。

先日、ユーキャンが主催した2013年の新語・流行語大賞では4つの言葉が同時に大賞を受賞して話題になった。その一つが元アナウンサーの滝川クリステルさんが五輪招致で使った「おもてなし」という言葉だ。現在、多くの企業が「おもてなし」こそが集客の要になると考えている。おもてなしという言葉に悪い印象を受ける人は少ないだろう。

一方で、多くのサービス業が「ブラック企業」として、つまり仕事がきつくて給料が低い仕事として認識されている。おもてなしは受ける分には良いが提供するのはキツイという事なのだろうか。それを考えさせられるTV番組が先日放送された。

■おもてなしを訓練するマナーコンサルタント。

テレビ東京で放送されている「ソロモン流」は、毎回様々な業界で活躍する人物を紹介している。12月22日に放送された内容は、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんがタイトーステーションというアミューズメント施設(ゲームセンター)や老舗の呉服屋で接客サービスについて指導をするという内容だった。

タイトーステーションでは、若い男性が店員が細かい指導を受けていた。この店員は客から聞かれた質問に対して、回答する内容が何を言っているのか意味が分からない。そして常に焦っている。見るからに接客が苦手そうなタイプに見えた。もっと落ち着いて、もっとゆっくり、と何度も指導を受ける中で「プライベートで人と接する機会が少ないんですよ……」といった本音を吐露していた。

番組後半ではマナー講師がしっかり指導したはずの呉服屋の男性店長が、フランクを通り越して明らかに馴れ馴れしく、敬語を使わずに若い女性へ対応している場面も放送されていた。

この二つの場面は接客業を、そしておもてなしを考える際に非常に重要なポイントだろう。


■「無意識」を「意識」する。

日常生活を送っていれば、接客業と同じ事をやる場面は毎日のようにある。人と会話をする、質問に答える、電話をかけるなど。さらに言えば立つ、歩くといった立ち居振る舞いも日常生活では無意識におこなっているだろう。これらを日常生活で「意識」して行動する人はほとんど居ない。

例えば今のこの文章を読んでいるアナタ、座っているならお尻の感覚を、立っている人ならば足の裏の感覚を明確に意識している人は一人も居ないだろう。そして今、こうして指摘を受けて改めてこの椅子は硬いとか、靴の中で指が動く感触を意識しただろう。立ったり座ったりをあえて意識して行う人はいないからこうなるわけだ。高度なおもてなしは、このような無意識の行動を意識させた上で一から矯正しなければいけない。

例えば接客業のアルバイトで声が小さい!と注意されて「オレって声が小さかったんだ」と生まれて初めて気づいた人も居るだろう。つまり、サービス業は無意識を意識し、修正する事が求められる。

しかし、これを徹底指導するのは非常に難しい。特に指導を受けている側が、サービスは無意識にやるものではない、という事に気づいていないと「何も悪い事をしていないのに注意される」と気分が悪くなるだけだ。しつこく、繰り返し指導しなければいけないので、教える側の能力も問われる。

タイトーステーションの若い男性店員はコミュニケーションが苦手だと意識している。苦手、下手であっても意識できている事はサービス業では重要な事だ。本人が嫌にならなければ上達する余地はいくらでもあるように思う。

一方、若い女性客にフランク過ぎる接客を提供していた呉服屋の男性店長は慣れた接客対応と言った感じだが、明らかに無意識に対応しているように見えた。自身より年上の顧客にタメ口で接客するとは思えないので、これは勝手な想像だが、もしかしたら同年代の娘さんが居て、普段の慣れが無意識に出ていたのかもしれない(娘さんやその友人との会話など)。もっとも、これについても映像でしっかり見せ付けられた以上、意識せざるを得ない。店長になるくらいの有能な人物ならば簡単に直す事は出来るだろう。


■We are on the stage.

高度な接客で知られるホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンでは、新人ホテルマンに対して We are on the stage という表現で、お客様から常に360度見られている事を「意識」するように、と指導をしているという。意識が出来る事は行動や立ち居振る舞いをコントロールするための第一歩だ。意識出来ていなければ接客態度が良い・悪いという以前にコントロールする事すら出来ない。

演劇の指導では、役者へ台詞を喋る際に力を抜いて勝手に体を動かさないように意識させる所から演技の指導をするそうだ。無意識に体が動いてしまうという事は意識して体を動かせない事でもあり、そんな状況では舞台に立つ事が出来ない。これは接客業で求められる事と全く同じだ。つまりサービスを提供する人は「おもてなし精神にあふれた店員」を演じきれば良いという事になる。立ち居振る舞いのダメな所を人に言われて気づくようでは舞台に立てない大根役者のように、「おもてなし」は提供出来ないだろう。


■おもてなしの対価は?

もちろん、こういった仕事を低い給料で求められるのは余りにキツイ。サービス業の給料が低いのは、一人で多数の人間を相手にする仕組み、つまりテコの原理を働かせられないからだ。サービス業では工場による大量生産やIT・ウェブを活用した仕組みが適用できないケースが多い。そこで収入を増やすには一人当たりの売り上げ、客単価を上げなければいけない。具体的には高級なレストランやホテル、結婚式場、高価な品を扱う店員等がそれにあたるだろう。

今後急激に増えていく高齢者世代では、わずかの価格差は気にしない客層も多い。先日「ザ・リッツ・カールトン大阪は「紳士淑女」なのか?」でも書いたように、昨今の表示偽装で人気がガタ落ちしたと思われるホテル業界は学生にとってはかえって狙い目かもしれない。もちろん、今更このような問題が出てくる業界というのは相当にコンプライアンスのレベルが低く、ほかに問題が無いとは到底思えないが、ウミを出そうとしている段階ならば若手にもチャンスは回って来やすいかもしれない。

就職活動や働き方に関する記事は以下を参考にされたい。
就職活動を始めた大学生はNHKのお天気お姉さん・井田寛子さんに学べ。
就職活動を始めた大学生に伝えたい、幸運は偶然じゃない件について ~お天気お姉さんになる方法~
正しすぎるライフネット生命の新卒採用 アゴラ掲載原稿
ライフネット生命の新卒採用に挑戦してみた。
女子大生でも分かる、3年間の育児休暇が最悪な結果をもたらす理由。

就職活動が解禁されても、いまだにやりたい事が見つからないと嘆いている学生は少なくないだろうが、お客様に喜んで貰う、そしてそれに見合った高い料金を頂く、というビジネスは確実に需要が存在する。学生にとってはあまり馴染みの無いビジネスかも知れないが、おもてなしを極める事は人生を掛けるに値する仕事に十分なりうるだろう。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
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