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マンデラ追悼式のでたらめ通訳、精神病院に収容。コネはやっぱり与党ANC。

12月10日に行われたネルソン・マンデラの追悼式で、図らならずも世界中の注目を集めてしまった、「でたらめ通訳」タムサンカ・ヤンキー(Thamsanqa Jantjie)。

南アフリカの国営放送(SABC)を見ていた人は、ヤンキーの「実況通訳」の大部分を惜しくも見逃してしまった。SABCでは独自の手話通訳を用意しており(鼻っから政府の手配を信用していなかったのだろうか?)、画面ではオバマその他の要人が中央から向かって僅かに右寄り、四角に入った手話通訳が左下に位置。要人の向かって右に立っていたヤンキーは、たまにしか画面に入っていなかったからである。

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左がSABC通訳、右がヤンキー。殆どの映像で、ヤンキーは右肩程度しか映っていない。(「Sajhav.com」より)

「すぐ傍に南ア政府が用意したプロの手話通訳がいるのだから」と、わざわざ自前の通訳を雇わず、ヤンキーをフィーチャーしてしまった、海外メディアのおかげで、南ア政府の手抜きがバレてしまったわけだ。世界中のニュースで取り上げられただけでなく、トークショーやお笑い番組の恰好のネタとなった。

なかでも秀逸なのが、「サタデー・ナイト・ライブ」(Saturday Night Live)。大笑いしてしまった。

一体誰が雇ったのか、誰が責任を取るのかに関し、政府も与党ANC(アフリカ民族会議)も口を濁している。追悼式ではズマ大統領に対するブーイングが起こったが、ANCはその犯人探しに躍起になり、16日、大統領府前でズマ大統領がマンデラの銅像をお披露目した際は、ブーイングが絶対ないよう、かなり厳しい警備が敷かれたのとは対照的である。

ANCのスポークスマン、ジャクソン・ムテンブ(Jackson Mthembu)によると、「ANCは長年の間、ヤンキーを通訳として使ってきた」が、今回は「政府が調達した」。

女性子供身体障害者省(Department of Women, Children, People with Disabilities)のヘンドリエッタ・ボゴパネ=ズル(Hendrietta Bogopane-Zulu)副大臣は、「どの省が雇ったか不明」。ヤンキーが働くのは「南アフリカ通訳」(South African Interpreters)という会社だが、オーナーが見つからなかったので、この件は諜報局(National Intelligence Agency)に回したという。

10年も20年も前の出来事ではない。大きなイベントで手話通訳を手配する部署(そんな部署くらい決まっているだろう)が「南アフリカ通訳」という会社を通じて、つい数日前に手配したのだ。諜報局の手を借りるほどのことか?と思っていたら、『サンデータイムズ』紙があっさり「南アフリカ通訳」社をつきとめた。

オーナーはANCから給料をもらっている職員。それも、平の職員ではなく、宗教や伝統的な事柄を担当する部署の長、バンツバフレ・コズワ(Bantubahle Xozwa)。

「南アフリカ通訳」のサプライヤーには「アサンゲ・イメージ・スタジオ」(Asange Image Studio)という写真スタジオがある。そのオーナーはバンツバフレの妻、キキズワ・コズワ(Cikizwa Xozwa)。そして、キキズワはANCスポークスマン、ジャクソン・ムテンブの事務所のマネージャーなのである。アサンゲ社はANCからも仕事を受注している。

自民党で働く夫婦が別々に会社を設立し、自民党から仕事を貰うばかりか、自民党のコネで、国の行事も請け負っていたようなもの。

そして、この2社からANCにあてた請求書は全て、偽の住所と偽の登録番号を使っているというからあきれる。正式に設立した会社ではなかった、ということか。

な~んだ、やっぱりANCのコネじゃん。

しかし、「長年の間」ヤンキーを通訳として使ってきて、今までクレームがつかなかったのか?

実は、ついていた。

昨年、ANCの創立100周年式典でのこと。ヤンキーの通訳に首をかしげた「南アフリカ聴覚障害者協会」(Deaf Federation of South Africa)の会員、エミリー・マタバネ(Emily Matabane)さんが、通訳の模様をビデオ撮影し協会に送付した。プロの通訳者たちが分析した結論は、「ヤンキーの手話は恣意的な動きで、正確さゼロ」。つまり、適当に手をぴらぴら動かしているだけ、というのである。

協会は「ヤンキーは偽物」と結論づけた報告書を添付し、ANCに計3通メールを送ったが、完全に無視された。

政府の説明では「跡形もなく消えてしまった」南アフリカ通訳社。そのオーナー、バンツバフレ・コズワは『サンデータイムズ』紙の取材に応じ、ヤンキーを雇っていることは認めたものの、「事務員」だと主張。

「タムサンカは通訳ではない。健康上の問題から、何年も前に資格を失った。追悼式では(会社派遣ではなく)個人の資格で通訳を務めた。」

ヤンキーに直接、政府が頼んだってこと?(失った「資格」というのは、手話通訳ではなく、コサ語の法廷通訳としての資格らしい。)

しかし、ボコパネ=ズル副相は、「会社を通さず雇われたなんてありえない」。また、身元調査がされていない個人・企業を南ア政府が使うことはない、そして、身元調査をするのは、警備担当局(つまり、自分の省ではない)、という。

警備担当局のスポークスマン、ブライアン・ドゥベ(Brian Dube)は、「こういうことは現在すべて調査中」。怪しいな~。

どう考えても、責めるべきはヤンキーではなく、やることなすこと、あまりにもお粗末なANC。

ヤンキー本人は「自分は立派な通訳者」と心底思っているのかもしれない。なにしろ、与党ANCが、党創立100周年式典を含む大きなイベントで何年も使ってくれていたのである。「立派な通訳」でなくて何だろうか。

マンデラの追悼式当日、精神病院に定期検診に行くことになっていたが、急遽通訳を頼まれたので、奥さんが病院に電話して、アポを17日に変更してもらった。世界中から揶揄(やゆ)されたためか、「この数日、辛がっていた」と奥さん。

そして、17日。定期検診に行ったヤンキーは、そのまま精神病院に収容されてしまった。

この件、このまま闇に葬り去られそうである。

(参考資料:2013年12月15日付「Sunday Times」、12月19日付「The Star」など)

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