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移民の推進はちっとも「人道的」じゃない

今日の横浜北部はまたしてもよく晴れました。それにしても風は強く、気温は下がっておりますね。

久々に親戚の法事に出てきまして、色々と思うところがありました。それにしても法事というのは普段なかなか合わない親戚に顔をあわせるという意味で大変貴重な機会だと実感しました。

さて、移民問題というのは日本ではそれほど意識されませんが、先進国ではどこでも非常に深刻な問題となっております。その中で冷酷な物言いの面白い分析が少し前の記事でありましたので、その要約を。

この記事の著者はオックスフォード大学の教授で、「アフリカへの援助は役に立っていない」という内容の著作で有名になった人物でもあります。

この意見記事もそれと似たような形のもので、リサーチから見えてきたあからさまな事実を堂々と暴くというものです。

===
海外移住は母国に有害だ
By ポール・コリア―

● リベラルたちは移民たちに権利を与えるように長年活動してきた。しかしビジネス界は移民を呼び込むために、移民する権利を与えようとしてきた。しかしこの二つは異なるものだ。

●フェイスブックのマーク・ザッカーバーグはFWD.usというロビー団体を立ち上げ、この二つの運動を統一してアメリカの移民法の改正に動き始めた。彼は「アメリカには1100万人もの不公平な権利しか与えられていない人々がいる」と述べている。移民はテクノロジー企業にとっては有利に働くので、彼がこの運動にかかわるのは理解できるし、これは人道的にも高尚なことに見える

●しかし、これは誰にとって「人道的」なのだろうか?なぜなら貧困にあえぐ国からの移民にとって良いことというのは、実は彼らが出てきた国にとっては必ずしも良いこととは限らないからだ。

●他国への移住というのは貧困国には良いものかもしれないが、それでもそれは条件つきだ。ある移住の研究によれば、若い人々がアメリカのような民主制国家に高い教育を受けてから帰国すれば、たしかにその国の利益にはなる。若い彼らはクラスで得た高いスキルを持ち帰るだけでなく、そこで習った政治・社会制度も持ち帰るからだ。彼らのスキルはスキルのないその他の国民の生産性を上げるのに貢献するし、彼らの行動が民主化を進めることになる。

●たとえば貧困国からの学生について調べた1950年代からの世界中のデータが示しているのは、民主制国家に留学した学生たちは、帰国してから母国の政治の自由化を進めたことがわかっている。ラテン・アメリカ、アフリカ、そしてアジアにおける民主化は、このようなプロセスによって支えられてきた

●去年の春のワシントン・ポスト紙の論説記事の中で、ザッカーバーグは「アメリカはなぜ40%以上の理系の留学生の院生たちを退学させてしまうのだろうか?」と問いかけている。これにたいする私の答えは、「その理由がなんであれ、これこそが貧困国を助けるかなり効果的なやりかただからだ」というものだ。

●「頭脳流出」のように見えることも、時と場合によっては有益になることがある。たしかに教育を受けた人々がより豊かな国へ移住してしまうと、貧困国側にとっては直接的な損失になる。ところが教育を獲得しようとする努力は最終的に身を結ぶことを周囲に見せることにより、周囲は逆に教育を受けようとやる気になる面もあるのだ。「頭脳流出」が深刻になるのは、あまりにも多くの教育を受けた人間たちが移住してしまった場合だ

●ところが貧困国の多くでは、海外に移住する人の数が多すぎるのだ。もちろん私は移住するべきではないと言っているわけではないが、明らかにその数は少ないほうがいい、と言いたいのだ。

●教育を受けた移民たちによって最も利益を受けているのは、中国とインドである。両国には十億人以上がいるために、割合的には母国を離れる人々の数は少ないのだ。

●それとは対照的に、小さな後進国は、経済状態がよくても移住する人々の割合が多い。たとえばガーナは教育を受けたスキルの高い人材が移住してしまう割合が中国に比べて12倍も高い。さらにもし母国の経済状態が悪ければ、彼らは教育面でも損害を被ることになる。

●たとえばハイチは教育を受けた85%もの若い人材を海外に失っており、この割合はハイチにとって有害でしかない。もちろん移住した人々は母国に送金するのだが、それも変革にはつながらず、単なる一次しのぎにしかならないのだ。

●中国とインドは海外移住する人の割合が低く、帰国する人の率も高いのだが、この両国が世界における移民とその祖国の関係についての考え方のモデルとなってきた面が大きい。

●ところが開発面での問題は、弱小国がそれに追いつけるのかどうかという点だ。中国やインドとちがって、弱小国たちはあまりにも移住者が多いのだ。彼らにはそれを止めることもできないのだが、逆に彼らを受け入れる側であるわれわれは、この問題にたいしてかなり効果的なことができる。たとえば移民政策によって、彼らの受け入れる率を決めることだ。

●さらに急速な圧力は、家族や親戚まで連れて祖国から移住したいと考える移民たちから来る。ところがこのような圧力に屈することは、必ずしも人道的であるわけではない。家族や親戚をアメリカに連れてくるということは、祖国に送金するようなインセンティブを減らしてしまうからだ。

●移住した家族たちは、たしかに救命いかだに乗ることで先進国に向かうことはできるのだが、彼らが残してきた大規模な家族たちを犠牲にした状態で出てくることにもなるのだ。

●その中でもとくに明らかなのは、難民を受け入れることによって祖国の社会の崩壊を招いてしまうことだ。高収入の民主制国家はこのような難民を受け入れる傾向が高いが、難民できたからといって、それがその国への移住になるとは限らない。なぜなら崩壊する国から逃げられるのはエリートたちであり、本当に貧困層に属している人々は、国境を越えたところにある隣国の難民キャンプより先には行けないからだ。

●崩壊後にエリートたちは帰国しなければならないのだが、すでに難民先で永住権をとってしまえば、彼らが祖国に帰る気は起こらなくなる。

●たとえば世界の最貧国の一つである南スーダンは、国民の海外移住で疲弊している国だ。この国の政府高官たちが私に教えてくれたところによると、重要な人物たちを祖国に呼び戻して働かせるために必要なのは唯一「高い給料」だけであり、それで戻ってきてくれたとしても家族を海外に置いたままにして、南スーダンで儲けた金を海外の家族に送ってしまうというのだ。

まずわれわれがやることの一つは、難民に対する政策をしっかりと構築することだ。紛争が終わった後の祖国の政府にたいして、国家再建のための人材を戻すことができるような対策をうつことだ。

●ところが移民たちは同調問題に直面する。なぜなら他の人も同じように帰国すれば、自分がやっていることの希少価値が下がるからだ。

●難民の権利には和平合意と紛争後の政府の行動の監視などが盛り込まれるべきだ。そして若くてやる気のある起業マインドをもった優秀な人間たちが経済や政治の進化の起爆剤となるのであり、彼らが意図するかしないかはともかく、社会をつくっていく存在なのだ。

●もちろん彼らのような優秀な人材を最貧国から連れてくることは先進国側にとっても魅力だ。才能を安く雇うことができるからだ。経済学者たちにとってもこれは効率の良いことになる。なぜなら金の卵たちは貧困国よりも先進国でのほうが(資本やスキルが豊富なために)生産性が上がるからだ。

●リーバータリアンたちにとっても人間の選択肢を広げてくれるという意味で魅力的に映る。官僚からのコントロールを緩和してくれるからだ。さらに過激な思想を持つ、たとえばアイン・ランドの信奉者のような人々にとっては「強いマイノリティーを弱い多数派の縛りから解放すること」と映るであろう。つまり「肩をすくめた移民」である。

●ところが左派の多くは、われわれが貧困国の金の卵を奪っていることを認めたがらないものだ。彼らは祖国の困難な状況に直面しているかわいそうな人々を助けていると信じたがるものだからだ

●われわれは悪循環を起こしている可能性を考えなくてはならない。なぜならわれわれは金の卵を祖国から引き離すことによって、その祖国の状況を悪化させているかもしれないからだ。

●人道主義者たちは個人たちを助けようとしているから、その背後にある大きな構造を見えなくなっているのかもしれない。つまりかわいそうな貧困者がいるから、貧困社会が生まれるということだ。

才能のある人間に門戸を開くことは、フェイスブック社の業績にはよいことかもしれないが、数十億人の貧困層を助けることにはならないのだ。
===

これを読むと、明治の頃に留学した人々というのは、そのほとんどが祖国に帰ってきてよい働きをしたということになりますな。

日本はまだそれほど移民を受け入れているわけではないですが、このような問題は今後のグローバル化する社会では増えこそすれ減ることのない問題であるわけで。

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