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  • 兎園

第303回:TPP協定知財章リーク文書(新しいタイプの商標、特許要件、パブリックドメイン利用の推進他)

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 引き続きTPPリーク文書のその他の部分から日本の知財法制との関係で私が特に気になったところを一通りあげておきたいと思う。

(1)新しいタイプの商標、団体・証明マーク、地理的表示

 まず、最初に商標に関するC節の冒頭から、商標保護の対象に関する部分を訳出すると、以下のようになる。

Article QQ.C.1: {Types of Signs Registrable as Trademarks}

[NZ/US/AU/CL/PE/SG/CA/JP/MY(Footnote: Negotiators' Note: MY supports this article subject to further domestic implementation.) propose: 1. [VN/BN/MX oppose: No] Party may require, as a condition of registration, that a sign be visually perceptible, [VN/BN/MX oppose: nor may a Party] [VN/BN/MX propose: and] deny registration of a trademark solely on the ground that the sign of which it is composed is a sound [CL/CA/JP/MY oppose: or a scent] [CL/CA/MX/MY propose: Each Party may provide trademark protection for scents].] A Party may require a concise and accurate description, or graphical representation, or both, as applicable, of the trademark.

Article QQ.C.2: {Collective and Certification Marks}
1. Each Party shall provide that trademarks shall include collective marks and certification marks. A Party is not obligated to treat certification marks as a separate category in its domestic law, provided that such marks are protected.

Each Party [JP/MX propose: may][ JP oppose: shall] also provide that signs that may serve as geographical indications are eligible for protection under its trademark system [(Footnote: [JP propose: For clarity a Party may require that a sign has acquired distinctiveness through use, where the sign consists only of names of place.])](Footnote: For purposes of this Chapter, geographical indication means indications that identify a good as originating in the territory of a party, or a region or locality in that territory, where a given quality, reputation, or other characteristic of the good is essentially attributable to its geographical origin. Consistent with this definition, any sign or combination of signs shall be eligible for protection under one or more of the legal means for protecting GIs, or a combination of such means.)[PE/NZ/MX/CL/BN/AU/US/JP/SG oppose; VN propose(Footnote: Negotiators' Note: CA/MY is flexible on this proposal.): A Party may provide that Signs descriptive of geographical origin of goods or services, including geographical indication as defined in Article 22 of the TRIPS Agreement, may not be protected as trademarks other than collective and certification marks, unless they have acquired distinctiveness through use.]
...

第QQ.C.1条:{商標として登録可能な標章のタイプ}
[ニュージー/米/豪/チリ/ペルー/シンガ/加/日/マレ(原注:交渉官注:マレーシアはさらに国内で実施することとして本条を支持している。)提案:第1項 [ベトナム/ブルネイ/メキシコ反対:どの]加盟国[ベトナム/ブルネイ/メキシコ反対:も][は]、登録の条件として、標章が視覚的に知覚可能であることを要求でき[ベトナム/ブルネイ/メキシコ反対:ず]、[ベトナム/ブルネイ/メキシコ提案:そして][ベトナム/ブルネイ/メキシコ反対:どの加盟国も]音[チリ/日/マレ反対:又は匂い]から構成される標章であることのみを理由として商標の登録を拒絶でき[ベトナム/ブルネイ/メキシコ反対:ない][る][チリ/加/メキシコ/マレ提案:加盟国は匂いの商標の保護を与えることができる。]]加盟国は、商標について、適用可能なものとして、簡潔で正確な説明若しくは画像表示又はその両方を要求できる。

第QQ.C.2条:{団体及び証明マーク}
第1項
 加盟国は、商標が団体及び証明マークを含むことを規定しなければならない。その様なマークが保護される限り、加盟国は、その国内法において証明マークを別カテゴリーのものとして扱うことを義務とされない。

加盟国は、地理的表示となり得る標章を商標法制において保護可能とすることも[日/メキシコ提案:できる][日反対:しなければならない][(原注:[日提案:明確化のため、加盟国は標章が、場所の名前のみで構成されている場合、使用を通じて識別性を獲得したものであることを要求できる。])]。(原注:本章の目的のため、地理的表示とは、物を加盟国の領土又は領土内の地域又は地方内の原産の物として特定する表示であって、本質的にその地理的原産に起因する物の質、評判又はその他の性質を示すものを意味する。この定義に合致するあらゆる標章又は標章の組み合わせが地理的表示を保護する手段の1つ若しくは複数又はそのような手段の組み合わせの下で保護され得るものとしなければならない。)[ペルー/ニュージー/メキシコ/チリ/ブルネイ/豪/米/日/シンガ反対;ベトナム提案(原注:交渉官注:カナダとマレーシアは本提案について柔軟である。):加盟国は、使用を通じて識別力を有するようになっていない限り、TRIPS協定の第22条で定義されている地理的表示を含め、物品又はサービスの地理的原産地を示す標章が団体及び証明マーク以外に商標として保護されないことがあり得ることを規定できる。]
(略:第2項は普通名称と商標の関係について)

 合わせて、地理的表示に関するD節から、これも冒頭の条項だけを訳出しておくと、

Article QQ.D.1: {Recognition of Geographical Indications}
The Parties recognize that [US propose; CL/PE/CA/MX/SG/MY/BN/VN/JP oppose: , subject to Article QQ.C.2(1),(Footnote: Negotiators' Note: [JP is still considering this issue depending on the outcome of discussions on Article QQ.C.2][AU/NZ: will go with consensus.]) (Gls eligible for protection as trademarks)] geographical indications may be protected through a trademark or sui generis system or other legal means.

第QQ.D.1条:{地理的表示の保護}
加盟国は、[米提案;チリ/ペルー/加/メキシコ/シンガ/マレ/ブルネイ/ベトナム/日反対:第QQ.C.2条第1項(商標として保護され得る地理的表示)に従って([原注:交渉官注:日本は、第QQ.C.2条の議論の帰結に依存するこの事項をなお検討している。][豪/ニュージー:コンセンサスに従う])]地理的表示が商標若しくは独自法制又はその他の法的手段によって保護され得ることを認める。

となる。

 これらの条文案の中でまず気になるのは、日本が匂いの商標に反対しながら、音の商標に既にコミットしていることだろう。特許庁の産業構造審議会・知的財産分科会・商標制度小委員会で新しいタイプの商標について検討され、今年の9月には最終版の「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」という報告書もまとめられているので、その限りにおいて政府方針に沿っていると言えば沿っているのだが、法改正が本当にきちんと行われるのかどうか良く分からない協定交渉でそのままコミットしてしまうのはいかがなものかと思うところである。

 そして、日本は一応反対しているようだが、団体・証明マークや地理的表示の保護法制も国内の議論が不十分なところで、これらに関する条項がTPP交渉文書に含まれているのが分かったことは大きい。これらの保護法制に関する検討が特許庁や農水省で今まともに動いている気配はないのだが、TPP交渉の進展に合わせてまた審議会なり研究会なりが動き出すのだろうか。

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