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家族より他人 -「後見人は他人」時代- ‐ 片桐由喜

1 成年後見制度の登場

若夫婦と6歳の子供がマンションのモデルルームを見学に行った。広くて新しい部屋を見て、子供が販売員に「このおうちを買う」と言って、売買契約書に覚えたばかりのひらがなで名前を書いたら、マンション売買契約は成立するだろうか。もちろん、否、である。

契約をするには、契約締結能力、すなわち意思能力(物事を理解・判断する能力)が必要である。6歳の子供にその能力は認められない。

2000年に介護保険制度が始まった。これを機に、高齢者がグループホームに入所するにも、訪問介護を利用するにも、契約が必要となった。では、これらのサービスを必要とする重度認知症高齢者や、寝たきりの高齢者に契約締結能力はあるだろうか。これも、否である。

契約しないと施設に入所できないのに、入所が必要な当事者にその能力がない、というこのギャップを埋めるために、同年、成年後見法が登場した。これはすでに明治以来、民法に定められていた旧後見制度を介護保険制度にも使い勝手の良いように改正したものである。

旧制度が想定した被後見人は「資産と家族」、いわゆる家産のある者である。判断能力が減退した者が、家の財産を放蕩の果てに使い尽くしたり、騙されて奪われたりしないように、とりわけその相続人らが将来の相続財産の減滅を危惧して活用していたものである。したがって、多くの場合、後見人には家族が選任されていた。

しかし、改正後の成年後見制度は守るべき資産も頼りになる家族もいない者も射程の範囲内となった。なぜなら、介護保険サービスを必要とする高齢者すべてが資産と家族を持っているわけではないからである。

2 成年後見制度の普及と変容

後見手続きは、家庭裁判所への申立てにより始まる。家族による申立てを期待できない高齢者を想定して、介護保険施行と同時に老人福祉法を改正し、市町村長に申立権を付与した。

この10年間、成年後見をめぐる状況は大きく変化した(下表参照)。

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上記表のとおり、市町村長申立は激増している。そして、2012年ショックともいうべき現象が制度施行後、初めて第三者後見が過半数を超え、親族後見を上回ったことである。

成年後見制度の本旨は被後見人らの権利擁護である。その役割は、長いこと、もっぱら家族の役割であった。それが、ついに第三者、つまり他人が主役の座に回った。

3 紙一重の安心と危険

2012年12月末現在、成年後見制度利用者実数は約16万6,000人である。2000年の制度発足以来、一貫して増加しており、この傾向はしばらく続く。高齢化は今後も進み、これと歩調を合わせるように認知症に罹患する高齢者の数と、彼らの後見ニーズが増加するからである。

後見利用の活況にともない、後見をめぐるトラブルも散見されるようになった。最も多い事件が後見人らによる被後見人らの財産の詐欺、横領である。加害者は第三者、親族を問わない。振り込め詐欺のような犯罪や、世の中にある多くの危機から彼らを守り、穏やかな晩年のための要となるはずの後見人が、全く逆の権利侵害者に変身している例である。ただし、親族についての唯一の救いは、当該行為が禁止行為と知らずに被後見人の財産を使ったという例が少なくないことである。

このような後見人らによる不祥事を防止するには後見監督人の選任、複数後見、親族に対する後見事務に関する研修などがある。これらを駆使して、信頼できる後見人を確保する体制を作らなければならない。

2025年には何らかの支援を必要とする高齢者は410万人(高齢者の12.8%)と推定されている。他人ごとではないのである。

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片桐由喜(小樽商科大学商学部 教授)

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