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『夢と狂気の王国』を撮った砂田麻美監督が、あまりに現代的な表現者だった。

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どうも鳥井(@hirofumi21)です。

11月16日にスタジオドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』が公開され、公開初日に観終わった後、僕はこんな記事を書きました。

『夢と狂気の王国』はジブリを題材にしたドキュメンタリー作品史上最高傑作だった。 | 隠居系男子

しかしこれを書いた時「自分がなぜこれほどまで、この作品に惹かれたのか」正直理解できずにいたんです。

記事内で「すごい!」の連発になっているのが、それを表していると思います。笑

でも、今回やっとわかりました。

今までのジブリのドキュメンタリーと圧倒的に違う理由、それは「砂田麻美という現代的な思想を持った女性監督が撮っていることである」と。

SWITCH スタジオジブリという物語と、鈴木敏夫さん・川上量生さんがこの映画について語った『ジブリ汗まみれ』を聞いて、それが腑に落ちたので、今回はこの事について書き残しておきたいと思います。

一人の表現者としての砂田麻美

砂田麻美さんは現在35歳の若手映画監督で、前作『エンディングノート』がヒットし、一躍脚光を浴びた女性です。

そんな彼女が、川上量生さんプロデュースのもと、今回スタジオジブリのドキュメンタリー映画をつくりました。

鈴木さん川上さんの彼女に対しての評価は一貫していて、「映画監督として付き合うのが難しく面倒な人、何を考えているのかわからない。だけど、その才能は素晴らしい!」と。

過去に存在した“職業監督”のように、「これをつくって!」と言われたら、「はい!つくります!」というようなタイプの人間ではなく、自己が表現したいモノを徹底的にこだわる、一人の作家的な表現者であると。

しかも、その“表現”したいモノというのは、既に何か彼女の中に存在するわけではなく、作りながら一体それがなんなのか、見つける作業も同時にやっているとても不思議な監督であると、お二人は語っていました。

ただ、僕はこのお二人の話を聴きながら、ものすごく納得してしまったんです。

社会的な評価よりも、自分が納得出来るかどうかが一番大切な基準。

お二人が笑い話のように話していたお話の中で「これもすごいわかるなー!」と思ったのが、以下の2つです。

ジョン・ラセターを唸らせておきながら完全に無視。

知っている方も多いと思いますが、ピクサーの映画監督で『トイ・ストーリー』などをつくったジョン・ラセターという方がいます。

彼とスタジオジブリは親交が深く、今回スタジオジブリのドキュメンタリー映画を作るにあたって、彼の映像もかなり撮影したんだそうです。

本来であれば、映像の権利関係にかなり厳しい方のようですが、「ジブリであれば!」と快諾してくれたようです。

そしてその際に、彼女のプロモーション動画をみたジョン・ラセターは「編集能力が大変素晴らしい!」と彼女を大絶賛したらしいのですが…!

完成した映画を既に観た方はお気付きだと思います、なんとこの映画の中にジョン・ラセターは一度も出てきません。笑

宮﨑駿引退記者会見の日、2時間2人っきりでカメラを回さなかった。

今回のドキュメンタリー映画は、宮﨑駿さんの引退記者会見までの様子がおさめられています。

もちろん引退記者会見当日も砂田さんは宮﨑駿さんに密着取材をしていており、会見前2時間ものあいだ、宮﨑駿さんと二人っきりだったそうです。

しかし、その間、彼女は一切カメラを回しませんでした。

そして、その理由が「なんか違う。」だったそうです。

彼女の映画が僕ら若い世代に響く理由。

上記の2つのお話から分かるように、彼女は一切自分の考えに妥協をしません。自分の表現したいものを作るのが最重要課題であって、社会的な評価や正しさなどは、完全に二の次です。

今までのドキュメンタリー映画監督、それこそ職業監督であれば、絶対にジョン・ラセターの映像は使ったはずだし、宮﨑駿引退記者会見の当日という歴史的瞬間は、ここぞとばかりにカメラを回したはずでしょう。

しかし、彼女は全くそれをしなかった。

お二人は、この彼女の考えは全く理解できないと笑いながら、彼女の作品をこんな風にも評価していました。

「彼女は彼女の作品の中に住んでいる。でも自分を1回も映さないし、ナレーターをやるのも最後まで拒んだ。自分を反映させたくない。しかし、思いっきり自分を反映させている作品であり、その葛藤を抱えながら作っていたんだと思う」と。

上手くは言えませんが、僕はこの彼女の作り方にものすごく共感できるんです。

糸井重里さんが使う「インターネット的」という意味とは、また少し違いますが、ものすごくインターネット的な作り方だな、と僕なんかは思ってしまいます。

インターネットがもたらした情報の洪水の中で育ってきた人間だからこそ、「素材(情報)の集め方、素材の使い方、素材から表現したいもの」というのが、ものすごく消極的でありながらも、ものすごく積極的。かつ表現欲が強く、信じるべきは自分の直感だけであると。

正に僕らの世代のそんな価値観をそのまま映像作品に持ち込んだ映画で、とても今っぽい思考過程を辿って、この作品が作り上げられたんだと思います。

だからこそ、こんな良い映画評も書かれるわけで…。
狂気のない魔法なんて多分きっと腑抜けてる(「夢と狂気の王国」を見た) – インターネットもぐもぐ

最後に

この映画の初日舞台あいさつで、鈴木さんが砂田さんのことを、少しディスっている雰囲気だったので「あれっ?」って思ったんです。

それはなぜかって言うと、鈴木さんって本当にすごいと思うモノ、もしくは自分の理解の範疇を超えたモノに対して、最初否定から入るんですよ。これはあくまで僕の仮説でしかないんですけど。

だから、いつもとは違う評価をしているのを観て「あ、これはなにかあるな」と。

実際に今回、鈴木さんはこの映画の最大のセールスポイントは彼女であり、だからこそ、キャッチコピーを「ジブリにしのび込んだマミちゃんの冒険」にしたとおっしゃっていました。

このドキュメンタリー映画は、彼女がジブリにしのび込み、そして馴染んでいくところを追体験できるように描かれています。そしてそれが実に心地よい。

まだ劇場公開しているはずなので、観ていない方はぜひ劇場で観て欲しい作品です。

特に、『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』どちらも今年観たのであれば、絶対にこれは見るべき作品だと思います。

それでは今日はこのへんで!

ではではー!

鳥井弘文

その他この投稿に関連した記事はこちら!

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『かぐや姫の物語』は完璧で美しく、虚しくて残酷な映画。 | 隠居系男子

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