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アル・ゴアが肉を食べない理由

元アメリカ副大統領アル・ゴア氏が、肉や乳製品を食べず野菜のみを食べる菜食主義者(ビーガン)になったと報じられました(Washington Post)。

元副大統領の食生活など取るに足らないゴシップネタともいえますが、その背景に見られるアメリカの食に対する意識の変化がなかなか興味深いので、お伝えしたいと思います。

ゴア氏はアメリカ人のエコ意識を目覚めさせた人物として一目置かれている存在です。その彼がビーガンになったということで、理由は何なのか、環境と関係があるのか、単なる健康志向からか、元上司であるクリントン大統領が数年前の心臓バイパス手術後に健康維持のため大好きな肉食を諦めたことが影響したのか、と様々な憶測が飛び交いました。

本人が公式にビーガンになったことを認めているわけではないので、理由は明らかにされていませんが、過去に環境視点から肉や乳製品の消費を大幅に減らしていると発言していることや、卵を使わないマヨネーズを開発する企業に投資していることなどから、やはり環境対策の一環として肉や乳製品を絶つ決断をしたのだろうと推察されています(NPR)。

人口肉の開発に投資するビリオネイヤ

これまで、ベジタリアンといえば動物愛護に関心のある人や健康オタクのような人が多かったのですが、昨今はゴア氏のように環境対策として、あるいは将来起こり得る食糧不足に備えて肉の摂取量を減らす人が増えています。

また、ベジタリアンにならずとも、肉や乳製品の代替食品を開発するベンチャー企業を支援する投資家も増えています。たとえば、牛の幹細胞から作る人工肉「カルチャード・ビーフ」に資金援助するグーグルのセルゲイ・ブリン氏、同じく細胞組織工学により人工的に肉やレザーを開発する企業に投資するペイパル共同創始者のピーター・シエル氏、そして、ゴア氏が投資しているマヨネーズの企業にはビル・ゲイツ氏も投資家として名前を連ねています。彼らがこうした企業に投資しているのも、環境問題や将来の食糧不足を見据えてのことです。

では、なぜ肉の消費量を減らすことが環境・食糧危機対策になるのでしょうか。

家畜の飼育には、野菜や穀物を栽培するよりも多くの土地や資源を必要とします。現在放牧と飼料栽培用に使われている土地を合わせると、世界の農地の75%を占めます(Nature)。また、家畜の飼育によって排出される温室効果ガスは、世界の総排出量の18%に上ります(FAO)。さらに、家畜の排泄物による大気や水質の汚染も懸念されています。

肉の消費を減らして人口増加に対処

そして最も大きな問題が、飼料です。

現在世界で栽培されている穀物のうち、36%が家畜の飼料用に使われています(IOP)。一方で、世界の人口は現在の70億人から2050年には90億人に増え、人々の胃袋を満たすためには現在の2倍の穀物が必要になると予測されています(PNAS)。30%の人口増加で2倍の穀物が必要とされる理由は、単に人口が増えるだけでなく、人々の食生活が変化するからです。貧困国が豊かになると、肉や乳製品の消費が増え、それに伴い家畜飼料用の穀物が必要になります。どれだけ栽培効率を上げても、現在の2倍もの穀物を作ることは難しいと考えられています。

この問題に対処するには、肉の消費量を減らすしかありません。

ミネソタ大学の研究チームによると、飼料用の穀物をこれ以上増やさず、人が直接消費するための穀物生産量を現在のペースで増やすことができれば、理論的には現在の人口プラス40億人分の食糧を賄うことが可能だろうとしています(IOP)。

アル・ゴア氏がビーガンになり、ビリオネイヤたちが肉の代替品の開発に巨額を投資しているのは、こうした事情があるからなのです。

貧困や飢餓撲滅を主張するのは簡単ですが、それを実現するのは簡単なことではありません。限られた資源の中で途上国が豊かになるためには、先進国に住む人が生活を変える覚悟をしなければならないということでしょう。

※Yahoo!ニュースからの転載

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