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就活解禁は時代遅れ

 12月1日に、就活が解禁になったと聞きました。

 就職活動に忙しい学生のみなさん、ご苦労様です。簡単には就職先が決まらないかもしれませんが、どこかに必ず自分に向いた就職先がある筈です。あせらず精進して下さい。

 それにしても、3年生の12月から就職活動が始まるなんて、なんと早いことでしょう。私たちが学生の頃は、4年生の9月頃から始まったと記憶しています。まあ、そんな昔のことを若い人々に言っても、時代遅れだよ、と笑われるだけかもしれません。

 しかし、時代遅れだと笑うのであれば、そもそも就職活動がある時期に一斉に解禁されるという制度自体がおかしいとは思いませんか?

 自分が芸能人になりたいとして、先ずあこがれのスターの付き人になることを考えたとする。そんなときに解禁日などないのです。身近なところにある職場は、大抵いつ求職を申し込もうと自由。しかし、どういう訳か大企業だけは別。自分勝手に大企業の人事担当者に面接を申し込んだりしても、君は就活がまだ解禁されていないことも知らないのか、と呆れられるのがオチ。

 いずれにしても、今必死で就職先を探している学生さんたちは、そんなことを考える余裕はないでしょう。ひたすら、どうしたら希望の企業に入社できるか、それだけを考えていると思います。

 否、それでいいのです。もし、学生さんのなかに、私のように何故就職活動の解禁日などが存在するのか、と疑問に思う人がいたら、そのような人は、普通の企業に就職するよりも、学者か起業家になることをお勧めします。

 いずれにしても何故就活の解禁日などというものがあるのか?

 お分かりですか?

 実は、就活解禁といっても、それはあくまでも経団連に加盟した企業にだけ適用される自主的規制なのです。従って、外資系企業など、そのようなルールを守る必要のない企業にとっては何の意味もない、と。

 但し、そうは言っても経団連のこの自主規制ルールが、我が国ではデファクトスタンダードになっているのです。

 では、何故経団連は、就活解禁日などという自主規制を維持しているのか?

 私は、それには大きく言って2つの意味があると思うのです。

 第一は、企業側の過当競争を自粛しようという意味合い。

 企業は人なり。即ち、どれほど規模の大きい資金力のある企業でも、そこで働く優秀なスタッフを集めることができない限り、いつまでも繁栄を続けることはできません。だから、どうしても優秀な人材の確保に躍起になる。しかし、だからといって各企業が人材確保のためにどのようなことをしてもいいとなれば過当競争が起こり、弊害が発生する、と。そこで、企業側が人材確保のための競争について、一定の制限を設け、過当競争が起こらないようにしているのです。

 第二は、学生生活を守るという意味合い。

 学生は勉学に勤しむことが本分。その学生が、3年生とか2年生の段階から、求職活動にばかり時間を割くようでは、勉学のために必要な時間を確保することが難しくなってしまう、と。

 如何でしょうか?

 そのような話を聞けば、やっぱり就活解禁日というような制度があって当然だと考えますか?

 私は、全くナンセンスだと感じています。

 「あんたら、どれだけ頭が古いのか」と思わずにはいられません。

 そんな旧態依然とした制度をいつまでも守ろうとしているような日本の社会において、どうしたらビルゲイツやスティーブジョブスのような人間が生まれると予想することができるのか、と。

 そうでしょう?

 まあ、私は血液型がB型であるせいであるのかもしれませんが、そのような余り合理性のない規制をかけられるのが嫌いなタチなのです。

 それに百歩譲って、経団連に属する各企業が、そうした自主規制を厳格に守るというのであれば、まだ分かります。しかし、実際の運用はどうかと言えば、私たちの時代には特に銀行を中心に多くの企業がフライングを犯して、内定を乱発していたのです。

 今はどうか知りませんが、銀行などは本当に一番早く学生にアプローチをかけ、その後暫くしてからメーカーが動くようなことが一般的だったのです。そして、正式の入社試験が行われるよりも遥か以前に内定が出されており、だから入社試験は儀式的なものに過ぎなかったのです。

 大事なことを言います。

 古い慣習やしきたりのなかにも、末永く維持してくべきものと、そうではなく見直すべきものがあるのです。

 企業は人なりです。ですから、仮に中小企業が、大企業に伍して発展を目指そうとするならば、優秀な人材を集めなければいけません。もちろん、学業の成績が全てではありませんが、しかし、総じていうならば、学業の成績がいい学生の方が就職後に活躍する可能性が大であるのは否定できないでしょう。

 であれば、どうして就職協定など守っている余裕があるでしょうか。というか、そのような新卒者の一括採用を中心とした採用形態そのものを見直す必要性があるのです。

 第二地方銀行や信用金庫は、メガバンク以上に発展を遂げることは考えられないのか? また、そこで働く職員たちは、メガバンクの職員以上の給料やボーナスをもらうことは考えられないのか?

 そんな質問をすれば、そのようなことは普通はあり得ないと殆どの人が考えるのではないでしょうか?

 何故なのか? 何故って、世の中はそのようなものだから、と。

 昔から、銀行で働く職員の給与は、規模が大きな銀行ほど多かったのです。昔の言い方で言うならば、先ず興長銀や都銀、そして、地銀、そして相互銀行、その後信用金と続いていたのです。

 いいでしょうか?

 成績の優秀な人でも、仮に規模の小さな銀行や信用金庫の方が高い給与を支払うというのであれば、それならそうした規模の小さい金融機関で働く選択肢も考える訳です。しかし、給与の格差は歴然としていた。それなのに、どうして優秀な人材が敢て給与の少ない規模の小さい金融機関で働くことを選ぶことなどあるのか?

 あるとしたら、地方で就職する必要があるからというような場合に限られているのです。

 仮に、規模の小さな企業が大企業にもできないような商品やサービスを世の中に提供することができれば、必ずや大発展を遂げるでしょう。それが経済の現実なのです。そして、そのためには、必ずしも学業の成績とは関係なくても、その企業にとって必要な優秀な人材を確保する必要があるのです。

 だから、そうして真の発展を目指す企業は、そもそも古臭い新卒の一括採用に拘ることなどあり得ないのです。

 我々日本人は、就職と言えば、新卒の一括採用が当たり前だと考えるのが普通です。そして、我々は何期生だとか、何年採用組だとかと称するのです。

 しかし、世界中が全てそのような採用形態を取っているのではないのです。でも、我々日本人は、海外のことには疎いから、日本の新卒一括採用が当然だと考えるのです。

 もちろん、一括採用が悪いという訳でもないのです。しかし、だからと言って、それをどうしても守り抜かなければいかないというほどのものではない。何故ならば、世の中はどんどん変化を遂げ、それに合わせて企業の活動内容も時と共に変化を遂げる。そうなれば、必要とされる人材もそれに合わせて変化する。だから、そうなると必要な人材を確保するには、年に1回の採用では対応が不可能になるのです。

 でも、学生の採用に関する最終決定権を有する年配の経営陣たちは、どうしても自分たちが経験した制度が当たり前だと思っている。

 そして、そうやって一括採用され、何年採用組だなどと名乗っている普通のサラリーマンたちは、一定の年数が来れば、ほぼ同時に昇進をするような仕組みになっているのです。例えば、部長になるには相当に頑張らなければいけないにしても、係長や課長相当職程度までは、同期が同じように昇進をしていくのが珍しくないのが日本の平均的職場の姿だと言っていいでしょう。

 おかしくありませんか?

 そんな制度を維持しておいて、どうしてイノベーションなど期待できるというのか?

 ところで、このイノベーションという言葉を大変好きな政治家がいます。それは安倍総理。

 先月、自動運転のできる自動車に試乗した安倍総理が、「日本を世界で最もイノベーションが起こりやすい国にしたい」と述べていました。

 というよりも、偉い地位にあるような人々は、この言葉が大変好きなのです。何となく格好がいい。

 そう思いませんか?

 イノベーションとは革新、或いは新機軸。シュンペンターという経済学者がかつて、経済発展のためにはイノベーションが必要であると喝破しました。まさにそのとおり。そして、イノベーションを起こすためには、場合によっては創造的破壊が必要であるのです。

 でも、現実には、この破壊活動がなかなか難しい。何故ならば、旧態依然とした体制に慣れ親しんだ
人からすれば、それは自分たちの生活を脅かすものであるからです。

 この就活解禁ですが、来年度からは3カ月間後倒しにされるのだとか。というのも、安倍総理がそのように経団連側に要請したからだ、と。

 イノベーションを起こしたいというのであれば、安倍総理は、3か月就活解禁を遅らせるようなことではなく、就活解禁そのもについて見直しを迫ったら如何だったのでしょう。しかし、国会議員の定数是正についても相変わらず手がついていないのですから‥他人にイノベーションの必要性を説く資格はないとしか言えません。

 日本の企業文化を見直すことが日本を一番イノベーションの起こりやすい国にする第一歩です。そして、その日本の企業文化の象徴の一つが就活解禁制度であると思うのです。

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