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神野税制調査会会長代理からのメッセージ(メルマガ80号)

~「良き租税制度」を求めて~

経済学の歴史学派の創始者とされるドイツの偉大な経済学者ロッシャーは、「良い財政制度なくして、繁栄した国民経済なし」と唱えています。
このロッシャー名言を口真似をすると、「良い租税制度なくして、幸福な国民社会なし」ということができると思います。

 税制調査会の使命は、「幸福な国民社会のための良き租税制度」をデザインすることだということができます。それは租税を巡って現実に生じている諸問題に、問題解決的に対応することよりも、中長期な視点から「良き租税制度」のヴィジョンを描いていくことが、税制調査会には要請されているからです。

 もちろん、「良き租税制度」といっても、それがア・プリオリに存在しているわけではありません。つまり、どんな時代にもどんな国でも妥当する理想的租税制度なぞ存在しているわけではないのです。というよりも、租税制度は国民の共同意志決定という政治過程を通じて決定されますので、国民の一人一人が「良き租税制度」とは、どんな租税制度かを考えて築いていくしかありません。

 税制調査会の使命はこうした租税制度を決定していく政治過程のスタッフとして機能することにあります。租税と聞けば忌わしい存在と思われるかもしれません。しかし、租税とは社会の共同の困難を解決するための共同負担であることを忘れてはなりません。世界で最も影響力のある経済学者の一人に数えられているジェフリー・サックスは、租税とは「良き社会」において「良き市民」が支払う「文明の対価」だといっています。実際、租税負担率の高い国は幸福度も高くなっていますし、租税負担率の低い国は幸福度も低く、格差や貧困が溢れ出ているといっても言いすぎではありません。

 私は税制調査会の活動を通して、国民の租税への理解が進んでいくことを願っています。「租税を理解する」とは、自己の人生との関連で租税を位置づけることです。国民の一人一人がこうした意味で租税の理解を深めていければ、未来からの光に導かれて、「良き租税制度」が浮かびあがってくると思っています。

 私は中里実税制調査会会長から会長代理を仰せつかりました。この税制調査会では、当面は国際課税やマイナンバーという従来、本格的に取り上げてきたとは言い難い課題に焦点を絞りながら、「良き租税制度」を構想していくことになっています。こうした使命を果すために、会長をサポートし、精一杯の努力をしようと覚悟しています。

東京大学名誉教授
神野 直彦

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