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【読書感想】『風立ちぬ』を語る~宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来~

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『風立ちぬ』を語る 宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来 (光文社新書)


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『風立ちぬ』を語る?宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来? (光文社新書)

内容紹介

長編映画からの引退を宣言した、宮崎駿最後の作品『風立ちぬ』。初めて作られた大人向けアニメをめぐり、賛否両論巻き起こっている。アニメ会社ガイナックス創設者、オタク評論家で知られる岡田斗司夫は、本作品をどう読み解いたか――。その他ジブリ作品も交え、宮崎駿という人間、アニメ作家としての巧みな技術力、今後のジブリの展望に迫る。

岡田斗司夫さんが語る『風立ちぬ』の観かた。

岡田さんは、これまでのジブリ作品と比較して、『風立ちぬ』が異質である点を、このように仰っています。

 特に最新作『風立ちぬ』において、人間「宮崎駿」という視点は強力です。というのも『風立ちぬ』は、宮崎駿が初めて自分の作りたいテーマに真正面から向き合い、作った作品だからです。ある種、私小説的な要素を持った作品ともいえるでしょう。

 一度、宮崎駿像を交えた視点で作品を見てしまうと、もうどうしても、そういう見方でしか楽しめなくなるほどです。

 岡田さんの『風立ちぬ』への評価は、以下のとおりです。

『風立ちぬ』は、宮崎駿監督の最高傑作です。正直、ここまでの作品に仕上げてきたのは、僕にとってまったく予想外でした。

 しかし、

「音も映像もすばらしい! 主人公たちの愛に涙しました!」

 ……なんてことが理由ではありません。

 いや、確かに音も映像もすばらしいです。けれども僕が感動したのは、主人公たちのいびつな愛情だったのです。

 この映画は、薄情者の恋愛の話です。

 岡田さんは、このあと、この映画の主人公・堀越二郎の「薄情っぷり」を、徹底的に検証していきます。読んでいて、イヤになってしまうくらいに。

「宮崎駿ほどの監督が、作中に意味のないシーンを入れるはずがない」という岡田さんの言葉は、岡田さん自身もガイナックスで数々の作品をつくってきているだけに、説得力があるんですよね。


 しかもその堀越二郎という天才技術者と、天才アニメ監督、宮崎駿の「薄情っぷり」をシンクロさせていくのです。

 「美しい飛行機をつくること」にしか興味がない技術者と「美しいアニメ映画をつくること」にしか興味がないアニメ監督。

 岡田さんの立場、人脈なら、ジブリの「内情」についてもかなり知っているはずです。

 その岡田さんが、こんなふうに仰っています。

 宮崎駿、宮崎吾朗の親子関係は並ではありません。

 宮崎吾朗は母親、つまり宮崎駿監督の奥さんから、

「あなたはお父さんのようになってはいけない、あの人は何ひとつ人間らしいこと、父親らしいことをあなたにしてくれなかった。あなたはそんな人間、アニメ屋になってはいけない」

 と言われ続けて育ちました。

 だから、宮崎吾朗も、

「僕は子どもの頃から何ひとつ親らしいことを、宮崎駿さんにしてもらったことはないです」

 とブログに書いています。

 宮崎駿監督は、ずっと家に帰らずにアニメを作り続けていた人間です。だから、彼が家族から赦されることはないかもしれません。でも、映画の中で、本来ならありえない赦しが主人公に与えられると、僕らはなぜか感動してしまいます。

 何も僕は、「宮崎駿はこんなにひどい人間だ」と言いたいわけではありません。僕らだって何かを成し遂げようとしたとき、絶対に犠牲を払っているはずです。「夢を追いかけよう」「家族を食わせよう」、そんな当たり前の望みを叶えるために誰かを犠牲にしなければならないのが、この世界のあり方なんです。

 あらゆる人の営みは、犠牲の上に成立しています。だからこそ、せめて綺麗な夢を見せたい。それが、『風立ちぬ』のラストシーンで宮崎駿監督が伝えようとしていることではないでしょうか。

 この宮崎駿さん、吾朗さんの親子関係については、この新書のなかの別項で、『ゲド戦記』の顛末を絡めて書かれているのですが、読んでいて、これまで「才能もあんまりなさそうなのに、宮崎駿の息子だからジブリで監督をやれているだけ」だと思っていた宮崎吾朗という人に、なんだかすごく親しみがわいてきたんですよね。

 これ、吾朗さんのほうが、よっぽど「まともな人間」だなあ、って。

 でも、常識的な人間だからこそ、破ることができない壁みたいなのもある。

 そして、「宮崎駿の呪縛」もある。

「お父さんのようになってはいけない」と、お母さんに言われながら育った息子。

 でも、その父親は、世間的には「偉人」なのです。

 しかも、引退作では、こんなふうに「自己の救済のセルフプロデュース」までやってしまった。

 世間からすれば「すばらしい作品をつくるためなら、犠牲もしょうがない」のだけれども、家族からすれば、たまったものじゃなかったはずです。

 ブログで、父親のことを「宮崎駿さん」って呼んでいるだけでも、吾朗さんの複雑な心境がうかがえます。

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