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  • 2013年11月30日 06:58

中国の力に対する盲信と戦争の可能性

 昨日エントリーした「自分たちで設定した防空識別圏で、苦悩する中国」ですが、有り難いことにいろいろな所に転載いただき、様々なコメントいただくことができました。

 その中であったもので、私の中国に対する発想が甘いのではないかという感想を持たれている方が何人かおられたようなので、その点について補足を少し。

1 パワーポリティクス

 中国はどうしても第二次世界大戦で自国の国力が弱かったが故に半植民地となったという歴史的トラウマから国際政治を認識するにあたって絵にかいたようなパワーポリティクス的発想をする方がかなり多いようです。

 つまり、国際政治はパワー(力)が全てで、力があれば、他国からの(不当な)圧力を受けることもなければ、自分たちの主張を通すことができると考えています。こうした考え方は昔から存在しますが、いろいろ問題点もあります。

 最もわかりやすいのは、力が全てなので、力のない小国を馬鹿にする傾向がでてきます(フィリピンやベトナムを「小国」「蚊」扱いする中国)。そして反対に中国は力があるだから、他国は中国の言うことを聞くべきだと本気で考える様になります(経済力で他国に言うことを聞かせようとする中国)。

 はっきり言ってかなり時代遅れの発想ですが、こうした発想で怖いのは今回の防空識別圏の問題で譲歩したとしても、これはアメリカの力の前に譲歩したと考える人が多いのではないかということです。

 そのため、今の中国の力ではアメリカに勝つことができないから言うことを聞いているだけで、今後力をつけていけば、誰も中国の行動を制限できなくなると考えている節があるかと思います。

 実際、鄧小平以来の中国の伝統的外国政策に「能力を隠して力を蓄えろ(能ある鷹は爪を隠す)」というのがあり(中国外交記事2題)、能力的に相手にかなわないうちはおとなしくしていろというものがあります。

2 イメージ

 こうした発想は他にもいろいろ問題があります。例えば、認識の問題で、ここでは安全保障の話をしているので軍事力という観点に限定して見ることも可能ですが、そうは言ってもどこまで自分と相手の力を正確に認識できるかという話になります。

 第二次世界大戦の例を見ても日本とアメリカの場合はあまりに物量に差がありすぎたので、あのような結果となってしまいましたが、欧州を見ると、ドイツとフランス・イギリスに誰だけの差があったかという話で、単純にどこまで比較できるかという問題もあります。

 冷戦時代は核兵器の問題もありながら、米ソが互いに相手の能力をどこまで正確に把握できていたかという問題もあり、イメージだけがお互いに膨らんでいた可能性も否定できません。

3 戦争の影響

 本当に戦争となれば、核兵器の問題もあり、下手をすれば取り返しのつかない事態になる可能性も否定できません。当然戦死者などの問題も考慮しなくてはならないわけですが、そうした直接的な影響だけではありません。

 現在これだけ貿易や物流で相互に依存している状態でそれらを全て失くしてしまえばどうなるかという話です。最もわかりやすいのが石油で、日本にしても中国にしても石油は大半を海外から輸入しているわけですが、戦争となればそれもどうなるかわかりません。

 日中の直接貿易に限定してもに、日本で中国からの輸入が全てなくなったらどうなるか、日本からの輸入が全てなくなったらどうなるかという話です。

 尖閣諸島国有化で日中関係が悪化した時には、日本企業が中国から資本を引き上げるのではないかと心配する意見が中国で見られましたが(日本にダメージを与えることを期待する一方で、日本企業の撤退を恐れる中国)、戦争となればその比ではありません。

4 最後に

 確かに現場で偶発的に衝突が発生するという可能性は否定できません(中国の「レーダー照射」に対する日本の対応)。しかし、それが本格的な戦闘に発展するかというと私はかなり否定的というだけの話です。

 中国共産党は抗日戦争に勝利したということを統治の正当化の理由としていますが、最近では中国を豊かにしたことを理由にしているので、戦争とまでに行かずとも世界各国と関係が悪化し、貿易に悪影響がでたら、困るのは自分たちなので、そこまで馬鹿なことはしないというのが私の考えです。

 もちろん、中国はよく私の予想の斜め上を行く国なので、私ごときの予想などは当てにならないと言われてしまえばそれまでですが。

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