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アベノミクス三本目の矢の一本「産業競争力法強化法」は的を射ることが出来るか

政治の話題が特定秘密保護法案一色となっている感がある11月。

しかし、安倍総理が「成長戦略実行のため」として始まった第185回臨時国会は、アベノミクス三本目の矢の真価を問う国会でもあります。 その目玉である「産業競争力強化法案」の審議が昨日の経産委で行われ、私は本会議での代表質問を含め三度目の質問(昨日は参考人質疑)に立たせていただきました。

本法案の目的である「我が国の産業を中長期にわたる低迷の状態から脱却させ、持続的発展の軌道に乗せる」ということに反対する人はいないでしょう。しかし、中身を見ると、産業競争力強化という名の下に、省庁の権限を大きくし、大企業を優遇して行こうという古い自民党の方策がしっかり根付いているのが分かります。

そのことを象徴するのが、「認定」という単語の出現回数。何と法文に501回も登場するのです。企業が規制緩和の特例措置を受けようとする際は省庁の「認定」を受けなければならない、事業再編の優遇措置を受けようとするときは省庁の「認定」を受けなければならないといった具合です。

認定を受けるための基準は、「この法律及びこの法律に基づく命令その他関係法令に違反するものでないこと」「新事業開拓事業者に対する積極的な経営又は技術の指導を伴うことが確実であると見込まれるもの」など抽象的で裁量の幅が極めて大きなものとなっています。

このことから予想されるのが、省庁と仲の良い企業=大企業や大企業によるファンドばかりが優遇され、中小・ベンチャー企業の競争力がかえって削がれてしまうという事態です。

私が通常国会でクールジャパン推進機構法に反対した大きな理由は、500億円もの国費を投じてクールジャパンを世界に発信するための官民ファンドをつくり、SPC(特別目的会社)を通じてその資金とビジネスモデルを大手広告代理店や大手デベロッパーに回し、最後は中小事業者やベンチャー企業にリスクを負わせるという、あまりにも趣旨とかけ離れた内容だったからです。本当にCOOLなことが出来るベンチャーや、日本の文化や芸術を広げようとしている工芸家の支援にはならず、NOT COOLな大企業に委託費、転貸料、コンサルティングフィーなどの名目で利益だけが流れることが容易に予測できたのです。 本法案にも同様の懸念がつきまといます。

例えば、「ベンチャー投資の促進」という制度では、ベンチャーファンドに出資した企業はその金額の8割を損金算入することが出来ます。これは間違いなく、ベンチャーファンドにお金が集まる呼び水にはなるでしょう。しかし、その対象となるベンチャーファンドも認定される必要があります。数回に渡る質問を通じて明らかになってきたのは、認定されるベンチャーファンドは大手に限られるということ。そうすると、幾つかの問題が発生します。一つは、大手ファンドと独立系のファンドに資金調達の差が出てしまうこと。しかし、本当の意味で目利きができ、ハンズオンで育てる事ができるような人財は独立系のファンドに多いのです。大手にいるようなサラリーマン・キャピタリストには出来ません(大手は、出資を融資のように考えているところがあります)。つまり、ベンチャー企業を本気で育てたいと思うなら、独立系の中小ファンドにももっと育ってもらい、活躍してもらわなければならないのです。両者は車の両輪の関係にあるのです。

もう一つは、ベンチャーが育っていない現状では、大手ファンドが狙うような会社は限られているということです。つまり、一部の知名度があるベンチャーのバリュエーションだけが歪んで高くなり、変なバブルが再度発生してしまう可能性があるということです。これではIRRが益々低下し、出資企業も損金算入は出来たけど、やっぱり儲からない→ベンチャー投資は止めようという悪循環に陥ってしまいます。中小ファンドの方が、ダイヤの原石を発掘する力を持っています。大手ファンドの社員たちは「金はあるけどタマが無い」と既に困っている状況なのです。雨が降ったら傘は出さず、雨が降っていない時だけ必死に傘を差しだす考え方は銀行と同じです。

政官業癒着の構造は、産業競争力強化、ターゲティングポリシー、官民ファンドなどと新たな衣をまといながら、巧妙に、そして脈々と受け継がれています。しかし、特定の業界・企業を優遇する政策は、実力競争であるべき資本市場の理念を歪め、国民の負担ばかりが増える結果を生み出すのです。

今日本に必要なのは、新陳代謝が自然に起こる土壌をつくることです。イノベーションや新しいアイディアは、旧態依然とした組織からは生まれません。会社法・倒産法見直しによるコーポレートガバナンス強化や新産業への円滑な移行のための雇用流動化、挑戦的な試みを邪魔する規制の改革こそ競争力を強めるのです。

ここまで見ると、アベノミクス三本目の矢はカーボンシャフトではなく、プラスチックで出来たものだということが分かります。矢がしっかりしていれば、後は射手に任せようという気にもなりますが、このままでは誰が撃っても、的に当たる前に落ちてしまいます。

日本の経済を真に強くするためには、ベンチャーによる新陳代謝が不可欠です。そのための三本目の矢であるべき。省庁の恣意性を薄め、認定基準などを少しでも改善し、より良い矢を作る為に引き続き追求していきます。

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