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特定秘密保護法案修正案を読む

11月26日に衆議院を通過した特定秘密保護法案。
みんなの党と維新の会と作成した修正案が可決されたわけですが、いったい何が変わったのか精査してみたいと思います。

修正案の私注を作りましたのでご参考までに。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_law2.pdf

ちなみに修正前の法案の私注はこちら。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/h-sebata/secret_law.pdf

では主に何が変わったのか。

①目的や罰則の部分に「外部からの侵略」などの限定が入った(1条、24条1項)

②「特定秘密」を指定できない機関を内閣総理大臣が決めることが可能になった。また5年間特定秘密を指定しなかった機関は、自動的に指定できない機関に移行する(3条1項、附則3条)

③「特定秘密」は原則30年で解除。ただし、暗号などを除いて60年を延長上限とする。延長を許可されなかった文書は全て国立公文書館等へ移管(4条3、4、6項)

④国会が特定秘密の提供を求めた場合、原則的には行政機関は従う(10条1項、附則10条)。

⑤政府は特定秘密の指定などについての報告を、毎年国会に報告し公表する(19条)。

⑥有識者会議が特定秘密の基準を作成する(閣議決定で確定)。また、政府は特定秘密指定などの報告について有識者会議から意見を聴くこと(18条2、3項)

⑦「特定秘密」は内閣総理大臣がコントロールし、各機関の長に資料提出や改善指示を出せる(18条4項)

⑧検証・監察機関の設置を検討する(附則9条)

⑨「特定秘密」の文書類型のうち、「その他の重要な情報」という曖昧な記述は削除(別表)

順番に見ていく。

①について
「外部侵略」などの限定を付けたのは、おそらく「国内の言論弾圧に使うのではない」と主張したいということだろう。
だが、法技術的な問題だと分かってはいるが、「等」が付いている以上、拡大解釈は可能だろう。
また、24条1項についても、別にこれを限定したところで、報道の自由等への影響が軽減されるわけでもない。

②について
維新が主張していた「特定秘密」を指定できる機関を限定すべきという主張を容れたもの。
だが、わざわざ内閣総理大臣がそんな限定をするとも思えないし、5年間特定秘密を指定しなかった機関を外したところで「だからどうした」と。
維新の顔を立てたというだけで、実質的には何も意味が無い改正。

③について
これが「改悪」されたとメディアなどから総叩きにあった部分。
30年で原則解除と書いたまでは良かったが、7つの類型(政令で決める事項があるから実質はそれ以上ある)以外は60年までOKと入れたのは致命的な改悪。
これでは60年までは延長できるとみなされるのがオチ。

すでにこの問題についてはブログで書いたので詳細には書かないが、各機関で保存するのではなく、国立公文書館に移管して、そこでいつ公開するかの判断をするのが筋。
各機関で抱え込むということが前提になっている時点で、公文書管理制度が何一つ分かってない。
この条文ははっきり言って「酷い」の一言に尽きる。

あと、延長を内閣が拒否した場合には、その文書は国立公文書館等に全て移管(廃棄できない)と決めたのは良いのだが、「拒否した場合」のみなのかが気になる。
つまり、延長申請をせずに解除した文書を全て移管対象とするとは読めない。
この点は、最低限参議院ではっきりさせておくべきところ。

・・・まあ、監視機関が無い以上、特定秘密から解除される前に闇に葬られていても気づけないんですけどね。

④について
ここは改正してかなり良くなった部分。
さすがに自分たちが特定秘密を見れるか否かという部分だったので、自民党側もある程度は妥協しやすいところだったか。
国会の求めに対して、行政機関側が「特定秘密」を提供するか否かの決定権があるように読めた部分が、原則的には提供するというように読めるようにはなった。

ただ、「安全保障に著しい支障」の時には拒否できるという部分は残ったので、恣意的な情報隠しが行われる可能性は排除できていない。
この点については、民主党が対案として提出している国会法改正案を取り入れ、議長がインカメラ審査を行って最終判断を行うという仕組みにするべき。
そこまでやらないと国会のチェック機能は働かないだろう。

⑤について
政府は「特定秘密」の指定解除について、毎年国会に状況を報告して公表する仕組み。
これ自体は必要だと思われる。
ただ、公表する以上、件数などぐらいしか出ないだろう。

それよりも問題なのは、この報告書に異議があるときに、国会が行政機関の長から意見を聴取する権限がないこと。
つまり、報告を受けるだけで、その報告の監査のようなことを国会が行う規定が存在していない。
チェックする機能もセットで作らないと、ただ単におざなりな報告書が出てきて終わりになるだけだ。

⑥について
結局「有識者会議」がなんぞやということに尽きる。
基準を作ったり、毎年の報告書に対する意見が言えたとしても、その会議自体が法定組織ではなく、法的にどのような地位・権限があるのか全く決まっていない以上、まともに機能するとも思えない。

せめて⑦の監査を内閣総理大臣が行うときにこの会議を絡ませろと思うが、そういった規定も無い。
結局おざなりな会議を作ってお茶を濁そうという発想からなにも変わっていない。

⑦について
各行政機関任せにせずに内閣総理大臣が「特定秘密」の指定解除に関与できるというのは、総合的に特定秘密をコントロールするという側面では評価はできる。
だが、あくまでも「内部統制」の話であり、これが「監査機能」として働くかと言われると違う次元の話ではと思う。

またせめて、実地調査をできる権限とか、「指示」に対する「回答義務」(どういう取り組みをしたのか)ぐらい無いとおかしいだろうと思う。
別にこれがあっても監査機能にはなってないですが。

この条文は「付け焼き刃」として作られたとしか正直思えない。
どうやって機能させる気なのかさっぱり見えない。
結局「機能する監視機関」をどうやって作るかという発想が無いから、なんだかよくわからない仕組みを作ってごまかすということになっているのだ。

⑧について
検証・監視機関は絶対に必要。
だが、法を作ってからこの機関を検討するのはおかしいでしょう。

最初からこういった機能を組み込んだ上で法律を作っていないとおかしい。
附則はしょせん「附則」にすぎないので、これをやらなかったからといって責任を取る必要は無い。
なので、こういった文章が入っているから大丈夫と主張するのはおめでたいとしか思えない。

⑨について
前にも書いたが、情報の類型を限定するのは限界がある。
よって、「その他の・・・」を削ったところで、拡大解釈を止めることはできない。

以上、述べてきたが、はっきりいって「小手先に色々なものを直したが、本質的な欠陥をほとんど変えていない」というものでしかない。
評価できるのは、国会への特定秘密提供に関わる部分が多少改善されたという所ぐらいで、あとは改悪されている部分すらある。

前回のブログでも書いたが、結局「機能する監視機関」を設置しなければ、この法案の欠点は解消されないのだ。
いくら小手先で文面をいじっても、各行政機関の恣意的な拡大解釈や廃棄は止められない。

何度もくり返し書いているが、どのような監視機関を作るのかを議論するのが先。
それをせずにこの法案を通してしまえば、後世に重大な禍根を残すことになると思う。

以上で分析は終わります。引き続き、参議院での議論も注視していく予定です。

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