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堀江貴文、岡本茂樹が語る:このままだと日本の刑務所はダメになる

日本財団×BLOGOSによる「ホリエモンが語る刑務所からの”社会復帰”~岡本茂樹×堀江貴文対談~」に参加してきました。貴重な話を聞くことができたので、その内容をダイジェストでお伝えします。

日本の刑務所のここがおかしい

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この日登壇したのは、ご存知「ホリエモン」こと堀江貴文さんと、「反省させると犯罪者になります」の著者・岡本茂樹さん。岡本さんは受刑者の更生支援に長らく携わる専門家です。

彼らが一致して指摘するのは日本の刑務所のおかしさ。まず、運用ルールが恣意的で、主席官が変わると刑務所運営、懲罰の方針がガラッと変わることがあるそうです。

堀江さん:例えば、本の差入れの制限なども、原則自由のはずなんですよ、今の法律って。冊数制限などもないはずなのに、でも内部ルールではそうなっていない

言い訳なんだろうけど、刑務所の検閲をする人員が足りないから、月あたり1人の差し入れは10冊まで、とか決まっていて。1人あたまというのは、受刑者1人あたりじゃなく、差し入れ人1人につき10冊までです。

事実上、無限に差し入れできますが、最初の処遇官に言われたのは、だからといって、何人もの差し入れ人から何十冊も差し入れてもらったりするなよ、と言われたり。でも、適当にごまかしていました。そういう恣意的な運用がされていましたね。

運用ルールが恣意的なのは、皮肉なことに、6年前に行われた監獄法の改正が関係していると見られています。

岡本さん:いきなり内幕を話しますが、2006年に法律が変わりましたが、受刑者の人権とかが言われていて、規則が緩やかになりました。でも、矛盾することがありまして…。

受刑者に手紙の発信などの自由が少し増えてくると、逆に受刑者の管理がだんだんとしにくくなるという矛盾が出てくるんですよね。

すると、受刑者の自由の範囲を増やすということは、受刑者が規則に従わなくなるのではないかとか、意見を言ってくるんじゃないかとか、そういうことを恐れるわけです

刑務所がいちばん恐れるのは、ハッキリ言うと受刑者が問題を起こしたり、外に出るようなスキャンダルです。法律によって規則が緩くなったと同時に、内部の統制は反比例するように厳しくなっている現状があります。

岡本さんは、こうした恣意的な運用ルールが、受刑者たちの社会復帰を妨げていると指摘します。

堀江さんが仰ったことは、実は社会復帰という点で非常に大きな問題をはらんでいます。

上司が替わるごとによって規則が微妙に変わる。前言ったことが今回はダメになる。そうなってくると、結局、どんどん自主的な気持ちがおさえられていくパターンにはまっていくんですよね。

受刑者が一番の目標にしていることは仮釈放をもらうこと。仮釈をもらうためには、上の者に逆らわず、言われたことに従うことが必要。

年度年度によって運用ルールが異なれば、それにあわせて自分を殺して、その年度の、その場所の上司や刑務官に従っていくことが「賢いやり方」になるわけです。

そこに反省とか、本当に必要な人とつながって社会で働いていくとか、そういうものは全く欠落していくことになるわけです。

ハッキリ申し上げると、刑務所は罰を与えるところとして機能はしていても、更生する場としては機能していないではない。自分の気持ちを押し殺したり、人とつながれなかったり、人の顔色を見たり。そういう社会で人とつながって生きていくという側面を奪われている。



反省させると犯罪者になります

加えて、岡本さんが特に強調していたのは、「反省を重視することで、かえって人間が悪くなってしまう」という点。これはまさに著書「反省させると犯罪者になります」で指摘していたことです。

僕の理想を言えば、刑務所に入った最初の段階でしっかり話を聞いて、いろんなことを整理しないと、裁判に不満があったり、被害者とか、「アイツがいたからオレはここに入った」とか、そういう問題をずーっと持ったまま、刑務所で生活していると自分の問題と向き合えないんですよね。

最初に不満があるという視点に立って、その不満を取り除いて、刑を過ごしていかないと、自分がなぜ犯罪を犯したのか、自分のどこに問題があったかに、いつまでも向き合えないのです。



刑務所だけでなく、世の中の風潮にも、「受刑者は反省しないといけない」という価値観がある。それだと受刑者は「すみません、ごめんなさい」という反省を行っただけで、根本的な問題が解決しない。

二度とやりません、という言葉と反省を繰り返すことで人間はどんどん悪くなっていくのです。

そうじゃなく、あなたかそういう考えに至るには、過去にどういうことがあったのか、教えて下さいという視点でまず接しないといけない。



ぼくなりの言葉で表現すれば、これは「加害者の持つ被害者性に着目する」ということなのでしょう。加害者は、常に何らかの被害者性を持っています。家庭でも職場でも、「何があったの?」と聞かずに、一方的に「お前が悪い!反省せよ!」と言われてしまっては、本当の意味での反省は実現されません。


厳罰化が進む日本

論点として興味深かったのは、日本は厳罰化が進んでいるが、その理由は何なのか?という堀江さんの問い。

堀江さん:なんでヨーロッパとかだと逆に、EUに加盟する時、基本、死刑はなくなるわけじゃないですか。

どちらかというと厳罰化ではに方向に進んでると思うんですけど、なんで日本だけ厳罰化が進んでるのかすごく疑問です。

例えば僕の場合、証券取引法違反って、懲役の上限は5年だったんですよ。ライブドア事件のさなかに国会で金融商品取引法が成立して、懲役の上限が10年に伸びたんです。

そういうのも含めて、なんか犯罪者を増やす方向に進めようとしてるっていうのは何なんですかね。



この問いに対して、岡本さんはメディアに責任がある、と指摘します。

岡本さん:それはハッキリしています。マスコミです。

報道の問題です。それで被害者サイドに焦点を当てるから厳罰化の方向に誘導されていったというのはハッキリしているわけです。

それは例えば少年犯罪について言うと、酒鬼薔薇の事件、あれから一気に少年法や刑罰が重くなっていたわけですね。あとはバスジャック事件とか、ああいうものをマスメディアが取り上げていった。

実は少年犯罪でいうと、戦後とかあるいは戦後10年くらい経ってから、日本の少年たちっていうのは448人ぐらい殺してるんですよね。でも、その時にはニュースにならないわけです。

なぜかというと、1日1人以上殺してることになりますよね。当たり前になるわけです。変な言い方ですが…。今は、少年犯罪の数が少ないから逆に目立つんです。目立つから取り上げるわけですよ。新聞もよく売れるし、テレビでも報道される。



これは有名な話ですが、実は少年犯罪は戦後の方が多かったのです。「昭和20年(1945年)の少年犯罪」なんかを見ると「ケンカで18歳少年が5人を斬る」「20歳(満18~19歳)ら2人組が内務大臣を襲う」「18歳が米軍基地でMP殺害し死刑」なんて信じがたい事件が起こっていることがわかります。犯罪全体の件数はもちろん、凶悪犯罪の件数も減っているわけです。なのに、少年法は厳罰化に向かっている。これ、すごく興味深い構造だと思いませんか?


刑務所を変えるためには、人々の意識を変えなければならない

では、刑務所改革にはどのような方法がありえるのか。世界では「アミティ」の取り組み(参考:坂上香「ライファーズ 罪に向き合う」—終身刑受刑者の更生を描く)など、成果が出ているアプローチも見られます。しかし、日本においては、まず市民の意識改革から始めないといけないのでは、と岡本さんは語ります。

今、大学で教えていますが、学生は非常にマジメで素直です。でも、それは逆から見れば、自分の気持ちを言えなくて、他人の目を非常に気にしているともいえる。「抑圧」をして、最後に爆発するという可能性を持っている。

それを考えると、僕もそうですし、みんな犯罪者になる可能性はあるわけです。

日本人の価値観を問い直すことが必要です、例えばしっかりしていることが良いことなのか。もう少し自分のチャイルドな部分、素直な気持ちを言い合える世の中を作った方がいいのではにか。これを受刑者支援を通じて、世の中に伝えたいと思います。



堀江さんは、メディアを変えるためには、結局市民の意識が変わらないといけない、と詩的なさっていました。これは激しく共感。メディアを叩いても仕方がないのです。ぼくらが変わらないといけません。

結局、大衆がテレビに対して犯罪報道みたいなもの、センセーショナルなものを求めるから、テレビはそれで視聴率が取れるから、作り出すような報道をしてしまう。

マスコミのレベルっていうのは、自分たちのレベル。

それは1つ1つ意識改革をしなくてはいけないし、僕もそういう活動をしたいと思います。

刑務所の中で「この人、絶対、再犯するな」っていう人、僕の工場でも半分はそうだった。 このままだとダメだと思います。でも、刑務所を変えないとそれはできません。

ここにいる皆さんが、周りにそういう話をする、刑務所を変えないと社会はよくならないと、社会的に提言をしていかないといけないと思います




「ホリエモン」が刑務所を語る社会的意義

この種の問題については、個人的な関心があり、本ブログでも何度か解説記事を書いたり、関連本を紹介したり、意見を書いてみたりもしました。

前科44犯の障害者。マスメディアが隠蔽する「触法障害者」問題を知っていますか
「刑務所に入る障害者」たちに見る、加害者の持つ「被害者性」
シャッド・マルナ「犯罪からの離脱と『人生のやり直し』(Making Good)」
坂上香「ライファーズ 罪に向き合う」—終身刑受刑者の更生を描く
(本)山本譲司「獄窓記」—投獄された元衆議院議員が刑務所で見たものとは
(本)山本譲司「累犯障害者」―福祉の課題を告発するノンフィクション

が!この種の話って、あんまり日常的じゃないので、どうにもうまく伝わらないんですよね…無論、ぼくの力不足も前提にはあるのですが。

「受刑者支援」というのは、あらゆる社会問題のなかでも、特に伝わりにくい領域だと思います。「途上国の子どもが飢えています!」みたいな話に比べるとわかりにくく、「犯罪者は悪いヤツだ!支援なんてする必要はない!」という一方的な断罪で話が終わるケースも多々あります。

そういう社会的な課題について、堀江さんレベルの影響力を持つ方が発言していくというのは、本当に社会的意義があると感じます。ご本人はまさに当事者なわけで、今後もこのテーマについては問題提起なさっていただけるはずです。触法障害者のお話なんかも、きっと言いたいことはたくさんあるでしょうし。

山本譲二さんがかつて出版した「獄窓記」「累犯障害者」は、社会に大きな衝撃を与え、確実に世の中を変えました。歴史的に見ると、堀江さんは山本譲二さんと同様に、言論の世界から刑務所を変える人になるんじゃないかな、と思っていたりします。


まずは堀江さんが語るように、刑務所のことを知ることから始めましょう。彼の手記はKindleでも出版されておりますので、気になる方はぜひ手に取ってみてください。

画像を見る刑務所なう。 ホリエモンの獄中日記195日[Kindle版]

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リンク先を見る刑務所なう。シーズン2 前歯が抜けたぜぇ。ワイルドだろぉ?の巻: 2[Kindle版]

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さらに関心がある方は、以下の書籍もおすすめです。

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リンク先を見るライファーズ 罪に向きあう

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