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大量資金供給の効果がない理由

少し考えてみた現象がある。日本も欧米も大量の資金を中央銀行が供給している。それにもかかわらず、その効果が顕著だとはお世辞にも言えない。何故なのだろうか。

政策効果に関する従来の標準的な考え方では、大量の資金を供給すれば、金利が低下し、資金の借入が容易になるから、需要が高まり、経済活動に刺激を与え、経済が活況になるはずだった。

現在の状況は、上で述べた理論的プロセスのうち、金利の低下と資金借入が容易になるところまでは機能しているとみていいだろう。もちろん、そうでない企業や個人がいることも確かであるが、平均的には理論的プロセスが働いている。

働いていないのは、「需要が高まる」プロセスである。1980年代だったが、日本の所得が増えていた。我々世代も豊かになっていった。その時に上司が「給与が上がったとしても、欲しい物なんて大してないやろ」と言った。こまごまとしたものはあったが、テレビも自動車もそんなに高嶺の花ではなくなっていた。欲しいとすれば家くらいだったか。現在では、その家も、遠さ、古さなど、少し我慢するつもりなら、両親から譲り受けることができる。

以上をマクロ経済的に表現すれば、1人当たりの潜在的需要が乏しくなっている。さらに人口が減ってきている。このことから、需要を喚起することが難しい。だから、バレンタインとかボージョレヌーボとかハロウィンとか、無理矢理外人の祭りの席に押し入らないと(企業としてそっちに関心を向けないと)いけないわけだ。そんな状況だから、企業も国内で設備投資する機会がない。

ということで、中央銀行が資金を大量に供給したところで、実物経済には資金の行き場がないから、結局は金融資産や不動産を買うしかなくなる。つまり、需要が一巡した(欲しい物が見当たらない)成熟国においては、金融緩和政策は効果に乏しい。むしろ、株式や不動産の資産価格バブルを招きやすい。金融政策の舵取りは、金融資産価格がバブル的になっているかどうかを判断し、決定しなければならない割合が高まる。

この点で、格差が少なく(極端な貧乏が少なく)人口の減少も始まった日本が一番成熟しており、次いで欧州となる。アメリカは格差の問題と人口増加がまだ生じている現実からすると、金融政策の効果がそれなりに期待できよう。

ざっと考えたところはこんなものだ。

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