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農家の所得は13%増えるのではなく6%減る。

先日、農政の見直し案が発表され、マスコミ各社は「40年ぶりの農政の大改革」、この政策変更で「農家の所得13%増」と高らかに報じた。

しかし、本日の農林水産委員会における農水大臣とのやりとりで、報道とは全く異なる実態が明らかになった。

結論から言うと、農家の所得は13%増えるどころか、6%減ることを大臣が認めたのだ。

農林水産省の資料をよく読めば分かることだが、13%増えるのは「農業集落の所得等」である。ここで“役人文学”に注意する必要がある。決して「農家」の「所得」と言っていないことがポイントだ。

まず、農家ではなく農業集落となっているが、その理由は、非農家にも支払われる「多面的機能支払」をカウントするためである。

次に「所得等」と言っている点だ。「等」を入れているのも、多面的機能支払をカウントするためだが、この多面的機能支払は、地域の人との共同事業や、簡単な農道や用水路の整備に対して支払われるため、個々の農家の所得が直接増えるものではない。つまり「所得」そのものではないのだ。

もう一つのからくりは、水田で家畜のエサに使う飼料用米をつくった場合、これまでは8万円/10aが支払われていたが、今回は、10.5万円/10aがすべての対象農家に支払われる前提で所得計算が行われていることだ。

しかし、飼料米に導入される「数量払い」は、平均的な収量を上回る収穫を上げた農家に対して最大10.5万円/10aを支払うもので、この単価は、あくまで平均収量を上回った一部の農家のみが対象になるものである。したがって、定義上、すべての農家に適用されるものではなく、あくまで平均的な単価は8万円/10aとして計算すべきである。

そこで、本日の農水委員会では、こうした問題(からくり)を指摘した上で、「所得等」から「等」にあたる多面的機能支払分を除き、また、飼料米に対する交付単価を全国平均の8万円/10aで計算した場合、農家の所得はどのように変化するのか改めて聞いたところ、林大臣は、農家の所得は6%減少するとあっさり認めた。

今日指摘されるまで、あたかも「農家」の「所得」が増えるように宣伝してきた農林水産省の対応もどうかと思うが、同省から発表される資料を何の検証もなく垂れ流しているマスコミもいかがなものかと思う。

全国の農家が、今、農政の大転換の中で悩み、迷っている。政府もマスコミも、意図的に歪められた情報を流すのではなく、正確な情報を誠実に伝えるべきだ。単なるイメージと期待だけで農家を幻惑するべきではない。

そもそも、今回の見直しに伴う所得の増加分は全て税金によるものだ(特に、飼料用米に対する転作補助金)。安倍政権の目指す農政の改革は、こうした補助金に頼らない農業を作り出すことであったはずである。

もしそうだとしたら、見た目の所得増を無理して演出するのではなく、所得が下がるなら下がるという事実を正直に伝え、構造改革を促していくべきではないか。

安倍政権の農政が、効率重視の産業的な農業を伸ばそうとするものなら、補助金頼みで所得を向上させるような政策からは手を引くべきだ。

民主党時代に既に廃止されて存在しない「減反政策」を廃止したと喧伝し、あたかも農政改革が進んだかのように見せる一方で、補助金の積み増しで所得を上げようとする、いや、上がったように見せようとする、そんな姑息なやり方はやめるべきだ。

「農村所得倍増」にしても、「農産物の輸出倍増」にしても、今回の「13%所得増」にしても、根拠希薄なイメージ戦略が乱発されている印象だ。

しかし、イメージやムードで農家所得は上がらない。現場の実態を踏まえた着実な農政改革を進めるべきである。

私たちは、戸別所得補償制度を見直し・改善した対案を既に国会に提出している。また、今国会で審議されている農地バンク法案に関し、「人・農地プラン」を法制化し効果的で効率的な農地集積を推進する対案を用意している。

政府は、来年の通常国会に、農政改革に関する法律案を提出すると思うが、我々も、これらの対案を示し、望ましい日本農業のあり方について、農林水産委員会の場などで堂々たる議論を展開していきたいと思う。

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