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- 2011年01月28日 02:34
「革命のファンページ」では何が語られているのか
2/3エジプト政府は常に、「我々が倒れれば過激派が政権を握る」と言って世界を、特に西側政府を脅してきた。そんなのは嘘で、とんだ笑い話だ。いま彼らは抗議活動の参加者を、エジプトの一般市民ではなく、ムスリム同胞団などの反対勢力と結びつけようとしているが、それこそもっと大きな嘘だ。このファンページが抗議参加者、あるいはエジプト国民との情報共有だけの場であれば、このようなメッセージは必要ないはずです。従って「海外から見ている人々に対するアピール」という側面がある可能性は高いでしょう(もちろんそれは悪いことではなく、ソーシャルメディアの活用法として十分に意味のあることだと思います)。
それでは、アラビア語で更新されている関連ファンページではどのような状況なのでしょうか。ここでもマスメディアの報道を頼らざるを得ませんが、"We are all Khaled Said"と同様に頻繁に紹介されている活動として"6th of April Youth Movement"があります。直訳すれば「4月6日青年運動」ということになりますが、これは2007年に結成された運動で、今回の騒動が起きる前から抗議活動を続けてきた(そしてこれまでは政府に押さえ込まれてしまっていた)とのこと。彼らはファンページ(現時点で26,865人が「いいね!」)とグループ(85,991人が参加)をFacebook上に開設しており、どちらもアラビア語中心で運営されています。
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これも残念ながら僕はアラビア語が読めないので、Google翻訳で英語に変換しながら確認した結果という但し書きがついてしまうのですが、こちらのファンページおよびグループの方がより具体的な情報が交換されているようです。実況一つとっても、「スエズで警察の装甲車が目撃されている」「軍隊の出動は確認されていないが、警官とデモ隊の間で小競り合いが続いているようだ」といった具合。また「デモの場所を変更する」など、活動の組織化という言葉に近い情報がやり取りされています。"We are all Khaled Said"が情緒的な訴えだったのに対して、"6th of April Youth Movement"の方が実務的な情報交換というイメージでしょうか。
こういった情報交換がどこまで実際に「組織化」に役立ったのかは、より詳細な分析を待たなければなりません。少なくとも最大で8万人というバーチャル上の集団では、エジプト人口約8,000万人の前では微々たる存在だと言わざるを得ないでしょう(エジプトのFacebookユーザー数は約408万人とのことですから、それと比べても決して多くはありません)。ただ前述のRafikさんによれば、チュニジアではローカルレベルでの活動家が各地に存在し、(ネットに頼らない形での)活動の組織化は主に彼らが担っていたとのこと。一方で彼ら全体を束ねるようなリーダーは存在せず、同時多発的に抗議活動が起きていったそうです。仮にエジプトでも同じような状況であれば、何らかの形でバーチャル上の情報交換とリアルでの組織活動が組み合わさって、大きな流れを生み出していったと想像できるかもしれません。ちなみに先ほどの"We are all Khaled Said"も、Facebook以外に公式サイトを有しており、参加者は50万人に達しているとの報道もあります。
ところで昨年の10月、人気作家マルコム・グラッドウェルがNew Yorker誌上に発表した1つの論文が物議を醸しました。その内容は「ソーシャルメディアでは革命は起きない」というもの。タイミング良く、クーリエ・ジャポンの2011年3月号画像を見るで「"つぶやき"では革命は起こせない」というタイトルで翻訳されていますので、機会があればぜひ一読してみて下さい。
その中でグラッドウェルは、ソーシャルメディアでは革命を起こせない理由として、「『弱い絆』を土台として発展するソーシャルメディアでは、『強い絆』に基づく覚悟が必要な、危険な社会運動を起こすことには向かない」という点と、「強力な組織力を持つ社会的な権威に立ち向かうには、対抗する側の組織構造もヒエラルキー型でなければならない」という点の2つを挙げています。確かにこの議論には強いロジックがあり、僕が好きなクレイ・シャーキーらも反論を行っているのですが、決着はついていません。



