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希代の悪法 秘密保護法案は廃案しかない

 東京・日比谷野外音楽堂での1万人の反対集会、福島市の地方公聴会での反対・慎重意見、全国で広がる怒りの声―自民、公明、みんなの党はこうした国民の声を無視し、26日の衆院国家安全保障特別委員会で「秘密保護法案」を強行採決しました。「修正」合意した維新の会さえ退席せざるを得ない暴挙です。そのわずかな審議でも、国民の目・耳・口をふさぎ、日本を暗黒社会に変える法案の姿は浮き彫りになりました。

 

今も「秘密」だらけ いっそう暗黒に

 「情報隠し、隠蔽(いんぺい)そのものだ。文科省は謝罪にも来ない」(浪江町長)、「情報操作・隠蔽の結果、福島県民はじめ、東日本全域に重大な(事故)被害をもたらした現実を直視いただきたい」(いわき市議)―。

 25日に福島市で開かれた地方公聴会。7人の公述人からは、福島第1原発事故をめぐる政府・東電の対応に怒りと不信の言葉があふれました。

 4人の公述人が触れたのが、政府が事故直後に放射能拡散予測システムSPEEDIの情報を開示しなかった問題です。政府は放射能拡散に関する試算結果を、住民の避難が差し迫った原発の周辺自治体には提供せず、米軍だけに提供していました。県民の怒りは、当然公表すべき命や安全に関わる情報まで隠蔽する政府の体質そのものに向けられています。

 国民の安全よりも保身のための隠蔽を優先させる体質は、日米同盟を優先し、密約を否定し続けてきた歴代政権の姿勢に象徴されています。密約の存在は、米公開文書や当時の外務省担当者の証言でも裏づけられているにもかかわらず、政府は「密約は一切ない」という過去の虚偽答弁を撤回しようとしません。

 そのうえ、すでに書籍として流通している機密文書「日米地位協定の考え方」についても公表を拒否し、秘密指定を否定していません。

 原発事故でも日米密約でも過去の情報犯罪に反省も検証もなく情報隠しを続ける政府が新たな秘密保護法制をつくれば、日本はいっそうの暗黒社会になります。

検討過程も「黒塗り」

 法案の作成過程そのものが、秘密だらけで、政府の隠蔽体質を物語っています。

 関係省庁間で法案の構成や内容をやりとりしてきた文書も、国会に提出されたものはほぼすべてが黒塗り(非開示)です。

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は11日の特別委員会で、政府内のどのような議論を経て法案が出てきたのか国民に全く分からず、「国会審議の前提を欠く」として開示を要求。森雅子担当相は「原則すぐに開示すべきもの」と答えましたが、政府は今に至るまで開示していません。

「立法理由」も説明できず

 安倍首相をはじめ政府・与党は衆院の審議で、なぜ「秘密保護法」が必要なのかを最後まで説明できないままでした。

 衆院特別委の強行採決の直前になっても、安倍晋三首相は「情報漏えいの恐れが高まっている」と繰り返すだけでした。

 情報漏えいといっても過去15年間で情報漏えいは5件だけ、最高懲役は10カ月にすぎません。これでは「国内に不穏な動きがあるわけでもないのに、何の必要があって時代にそぐわない法案が出てきたのか」(俳優の菅原文太さん、「朝日」26日付)と批判の声が上がるのも当然です。

 安倍首相や森担当相は「各国のNSC(国家安全保障会議)との協議も可能になる」「諸外国に合わせるため」と説明しますが、「秘密保護法」ができれば情報が入ってくるというものではありません。

 政府・与党側は、アルジェリアで起きた日本人らの人質事件(1月)を例に「秘密保護法」の必要性を述べる場面もありましたが、日本だけでなく、NSCがある米国もヨーロッパ諸国も情報を入手できませんでした。

秘密は無限、処罰は政府次第

審議で危険ますます明らかに「秘密」指定の競争も

 衆院の審議で、「秘密保護法案」で「特定秘密」の範囲が際限なく広がる点にも批判が集中しています。

 安倍首相は26日の特別委員会で、「すでに政府が保有する『特別管理秘密』等の文書の総数が42万件あるが、その9割が情報収集衛星(スパイ衛星)の写真、暗号だ」と強調しましたが、「秘密保護法」で新たに生まれる「特定秘密」の件数については「現時点で確たることを申し上げることは困難」というだけです。

 「秘密」を指定する「行政機関の長」も、「修正」で絞られることもなく政令で定めるとされただけでした。審議では自衛隊の活動なら何でも「秘密」に該当することが明らかになり、自民党議員も「では全部ですか」と困惑したほどでした。防衛省、外務省、警察庁などが「特定秘密」の指定競争に突き進み、暴走する可能性を否定できませんでした。

60年も「秘密」

 秘密の指定期間は、「修正」と称して原案の「30年」を実質「60年」と改悪されました。安倍首相は「例外中の例外を除いて60年を超えることができない仕組みに『修正』された」(同日、特別委)と胸を張りました。しかしこれも、半永久的に秘密になる例があることを明確に認めたにすぎません。

 驚くべきことに、森担当相は同日の特別委で、「秘密指定が解除されたものは通常の行政文書になり、保存期間が満了した場合には公文書館に移管するか廃棄するかを首相の同意を得て決める」と「廃棄」に言及しました。安倍首相も、将来的な「廃棄」の可能性を否定しませんでした。

厳罰対象の範囲不明

 秘密を扱う国家公務員約6万4000人を対象に行われてきた身辺調査(適性評価)がどこまで拡大するかも明らかではありません。

 法案で新たに軍需産業やスパイ衛星製造関連の民間業者も調査対象になりますが、対象は一部大企業に限られません。

 鈴木良之内閣審議官は「下請け業者や孫請け業者等の従業者についても適性評価の対象となる」と説明。一方、調査対象の企業数や人数については「確たる数字を申し上げることは困難」(20日、衆院国家安全保障特別委)として、厳罰対象となる企業・人数の範囲を政府自身がいまだに把握していない無責任ぶりを示しました。

 民間業者も秘密を漏らした場合は懲役10年以下の厳罰。従業員に対する教唆(そそのかし)などでも国民が処罰される可能性が広がります。

 また、身辺調査では家族・親族の個人情報も国に集中するため、対象者が増えるほどねずみ算的にプライバシー侵害の範囲が広がる危険があります。

 審議では日本共産党の追及で、海上自衛隊員への身辺調査で携帯電話の通話記録の提出や「うそ発見器」での捜査協力まで誓約させられているプライバシー侵害の実態が明らかになっています。

広く国民が処罰対象

 衆院特別委での法案審議で明らかになったのは、広く国民が処罰対象となることは明確な一方、誰がどのように対象となり捜査を受けるかは政府の裁量次第ということです。

 「何が秘密かも秘密」であるため、国民は情報が「秘密」かどうかの認識はないのが普通です。しかし、政府は「客観的な状況から特定秘密であると認識していると認定できる場合」(鈴木審議官、12日)には処罰対象となると明言。これは共謀や教唆(そそのかし)、扇動(あおる)などにも適用される考え方であるとされました。米軍基地情報や原発情報を調べたり、調べようと話しあったりするだけで処罰対象となりうる構造です。ブログ(簡易ホームページ)で時事評論する人も「個別具体的な状況」(鈴木氏)で処罰対象となることが明らかになりました。文字通り幅広い国民、報道機関、市民運動が対象になります。

 報道機関の取材も、「著しく不当な方法」と判断されればやはり処罰の対象となります。何が「著しく不当」かは「個別具体的な判断」(鈴木氏、14日)とされ、政府が決めるのです。報道機関に対する捜索も問題になりましたが、谷垣禎一法相は「個別的な状況に照らして判断」(14日)と答弁。警察の判断しだいで弾圧されるのです。

米国の意向で国会に秘密

 法案では、国会に非公開の秘密会を強制し、秘密会で知った事実を院外で公開すれば国会議員も処罰されます。

 核密約やイラク戦争への参加を決する背景情報など、議員が主権者国民に知らせるべきだと考えても、公開は許されません。所属政党内で議論することも許されません。

 こんな理不尽な制約をかけたうえで、さらに「支障がある」と判断すれば国会に出さないとしています。

 審議で浮かび上がったのが、米国はじめ外国の意向による国会への公開制限です。鈴木審議官は「外国から第三者提供の制限を前提に提供を受けた情報」(8日)は国会に提出できない場合があるとしました。

 他方で法案9条は、必要に応じて秘密保護システムを備えた外国には「秘密」を提供できるとしています。アメリカなどの「同盟国」に情報は渡すが、国民にも国会にも秘密という驚くべき法案の構造です。

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