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特定秘密保護法案の何がおかしいのか?

 特定秘密保護法案が、昨夜、衆議院で強行採決されました。

 賛否両論、多くの意見が述べられているので、私が今さらコメントする必要はないかもしれませんが‥それでも一般の人が抱くと思われる疑問を解決するために、そして、この問題の本質を理解してもらうため私にも意見を言わせて欲しいのです。

 こうした法案に賛成する方は、外交や国防上の秘密を守ることは重大な国益であるから、そうした秘密を国家公務員が漏らすことは決して許してはいけない、と言うでしょう。

 そのように言われて、貴方はどうお感じになるでしょうか?

 多分、そのように言われれば、それはそのとおりだと言わざるを得ないでしょう。

 何故ならば、そうした重要な情報は日本の国益に関係してくるからなのです。幾ら国民に知る権利があるとしても、そのような微妙な情報については、一定の制限が課せられたからと言ってもおかしくはない、と。そしてまた、そのような重要な情報が漏れることのないように罰則を強化することが必要である、と。

 まあ、一般論からすれば、賛成派の意見は、一見それほどおかしくは見えないのです。

 しかし、現実の政治や行政、或いは外交の世界を知っているものからみれば、とてもおかしく思えてしまうのです。

 そもそも、今でも、そうした重要な情報を漏らした国家公務員等は処罰される規定があるのです。国家公務員法では懲役1年以下、自衛隊法では懲役5年以下。

 そうした規定が軽すぎると言えるのでしょうか? というよりも、国家公務員などが重要な情報を漏らす事件がそれほど頻発しているのでしょうか?

 今世の中で問題になっていることの多くは、正確な情報を流さないことと関係のあるものばかりであるような気がするのです。例えば、食品偽装。要するに、隠ぺい体質であることの方がより大きな問題であると言っていいでしょう。

 いずれにしても、国家公務員が重要な情報を漏らす事件がそれほど頻発しているとは、私には思えません。それに、仮に重要な情報が漏れるようなことがあるとすれば、それは圧倒的に政治家筋から漏れることが多いというのも事情通ならよく承知しているところです。

 それに外交や防衛などに関する重要な情報を必死で守る必要があると現政権が考えるのであれば、何故米国政府が、総理の電話内容などを含めて日本側の様々な情報を盗聴している事実に対して真剣に取り組もうとしないのか?

 日本のマスコミは報じませんが‥日本に駐在している外国の外交官の間では、日本ほど情報を収集しやすい国はないというのが共通認識になっているのです。

 日本政府は、どこまで外国政府関係者のスパイ活動に対する防衛策を講じているのか?

 そのような本当に必要と思われる対策を講じることなく、秘密を暴露した国家公務員とその関係者を厳しく処罰するという特定秘密保護法案。だとすれば、その法案の狙いとするところは、重要な情報が海外に漏れるのは見逃しながらも、重要な情報が主権者である国民に知られることだけはどうしても阻止したいということであるのは明らかです。

 そうなのです。今回の特定秘密保護法案の最大の目的は、秘密情報が海外に漏れることを防ぐためにあるのではなく、主権者である国民に都合の悪い情報が漏れることを防ぐためにあると考えた方がいいでしょう。

 だから、特定秘密保護法案という名前は決して相応しいものでありません。

 もう一つ大きな欠点がこの法律にはあるのです。

 それは、何を秘密にするかが全く為政者の意思で決まってしまうことです。

 もちろん、本当に国益のために秘密にしておいた方がいい情報もあるでしょう。しかし、そもそも主権者は国民であり、国民はその権利を国会議員に委任しているだけなのですから、基本的には全て国民に知らせるのが筋というものなのです。ただ、繰り返しになりますが、全ての情報を国民に知らせるならば、確かに不都合が発生するのもそのとおりだから、必要最小限の範囲でそれを制限すべきだということになるのです。

 その必要最小限度という範囲の判断が政府に委ねることが論理的におかしいのです。何故ならば、
国民と政府の間では、利益が相反することがしばしば起こり得るからです。

 日本はアメリカのポチだと往々にして言われることがあります。そして、多くの人々は、まあ、そんなところもあるよなと内心思っている。総理になる政治家も、アメリカの意向には逆らわない方がいいと、過去のいろいろな出来事から学習している。

 例えば、あれほど人気があった田中角栄元総理が、ロッキード事件で失脚をせざるを得なかった。橋本元総理も、米国債を売り払いたいという誘惑に駆られることがあるなどと不必要な発言をして、おかしなことになってしまった。

 だから、日本の総理はどうしてもアメリカの意向を最大限に尊重しようとする。確かに、日本の国としてもアメリカとの関係が良好である方が、良い結果をもたらすことが多いとも想像されるのですが‥しかし、アメリカの利益と日本の利益が相反する場合が多いのも当たり前の話なのです。従って、総理がアメリカの意向を尊重しようとすればするほど、国民の利益には反することになることも多いのです。だから、そうした情報が政府の判断で全て秘密になってしまうようなことになれば、日本が民主主義の国であるというのは名ばかりになってしまうのです。

 どう考えても、この法案が今必要であるとはとても思えません。

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