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映画『かぐや姫の物語』感想

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あらすじ: 今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振ったかぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。

参考リンク:映画『かぐや姫の物語』公式サイト

 2013年34本目。

 火曜日のレイトショーで鑑賞。

 観客は、僕も含めて10人くらい。男性ひとりで来ている人が意外に多かったです。

 しかし、公開4日目としては、けっこう空いているような。

 まあ、平日だし、子どもが来られない時間帯だから、そんなものなのかな。

 この映画、「日本最古の物語」と言われる『竹取物語』を原案にしたものなのですが、上映時間が137分もあるということで、いったいどんな話になっているんだろう?と思っていたんですよ。

 『竹取物語』って、『まんが日本むかしばなし』なら、15分、せいぜい30分(CM込み)くらいじゃないですか。100分くらいなら、あれこれディテールを入れまくって水増ししたんだろうな、と予想するところなのですが、137分ですからね……それだと、子どもには長いだろ、とも思いましたし。

 そんなことを考えながら、冒頭の場面で、また驚きました。

 おそらく、「この上映時間なら、竹取の翁が、光る竹を見つけ、姫と出会うまでのプロセスが、かなり詳細に描かれるはず……」とだったのですが、「アッサリしすぎじゃない?このペースだと、30分で終わるよこの映画……」というくらいの早送りっぷり。

 この映画、緩急が、僕が予想していたのと、真逆なんですよ。

 というか、日本人のほとんど大部分が知っているであろう『竹取物語』の本筋は、ダイジェスト版のようにサラッと流れていきます。

 それに対して、赤ん坊だった姫が、カエルを追いかけたり、ハイハイをしたり、子どもどうしで遊んだり、都の立派なお屋敷ではしゃぎまくるシーンは、たっぷり時間を使って、すごく丁寧に描かれているのです。

 とにかく、ディテールを描くことにこだわった映画、なのです。

 高畑監督は、姫が疾走するシーンや、赤ん坊の動きなどの「ディテールを描くこと」にしか興味がなく、メインストーリーはどうでもよかったのではないか、とか勘ぐってしまうくらいです。

 物語のクライマックスのはずの「月からの迎えのシーン」なんて、『ぽんぽこ』の「妖怪大作戦」のやる気のないバージョンみたいで、失笑してしまったものなあ。でも、もしかしたら、高畑監督としては、「怒りや憂い、悲しみなどの不浄な感情がない月の世界」っていうのは、ああいう安っぽいものなのだ、と言いたかったのかもしれませんね。

 この映画、素直に観れば「周囲の都合で翻弄され、自然のなかで成長することができなかった姫の悲しみ」を描いたもの、ということになるのでしょう。

 もっと自由に、自然を触れ合って生活していくことが「生きる」ということではないか?

 いかにもジブリ的な「自然への回帰」のメッセージ。

 でも、僕はこの映画をそんなに素直には観られませんでした。

 というか、最後のほうは、あまりにももどかしいというか、姫に嫌悪感すら抱いてしまったんですよ。

 姫は悪いことはしていない。

 少なくとも、2013年に生きている僕の感覚としては。

 にもかかわらず、僕は姫がどんどん嫌いになっていきました。

 「問題作」ですよこれ。

 きっと、「もっと自由に、自然と触れ合って生きていこう!」と決意を新たにして、映画館を出て行く人も多いのだろうし、それで良いのだろうと思うのですけど……

 アニメーションとしても、静止画でみると、一般的な「ジブリ絵」ではありません。

 キャラクターがかわいくないことに違和感があるかもしれませんが、僕は「ジブリってこんな表現もできるのか!やっぱりすごい技術者集団なんだな」と感心するばかりでした。

 さて、これから先はネタバレ感想です。

 未見の方は、ぜひ、作品を先に観てから読んでください。

 正直、どっちに転んでも観たら鬱々とした気分になる映画ではありますが、こんなにザラザラした映画をキャリアの晩年につくった高畑勲という人は、本当にすごいと思います。 

 いや、高畑勲監督が『竹取物語』をつくると聞いたときには、「アニメ監督としてのキャリアの『最後』に物語のルーツに『原点回帰』するつもりなのかな」と考えていたんですよ。

 僕は「かぐや姫」が象徴しているものについて、観ながらあれこれ想像していたのです。

 「姫」は高畑勲監督にとっての「アニメーション」ではないのか、それが僕の一つ目の答えです。

 「姫」はある日突然、平凡な生活をしてきた老夫婦の元にやってきます。

 老夫婦は「姫」の魅力に取りつかれ、すべてをなげうって、「姫」のために尽くします。

 翁と媼は「姫」に対して、正反対の養育方針を持っているように見えるのですが、ふたりとも「姫のことを最優先にしている」のは共通しています。

 「姫」はいつのまにか美しく成長し、周囲の人びとを魅了しながら、どんどん大きな存在になっていくのです。

 「姫」は、その一方で「関わった人たちを、不幸にしていく」のです。

 翁は、変わってしまった。

 姫の望む「宝物」を手に入れるために、名だたる貴族たちが苦労しますが、報われません。

 危険な目に遭う者、とんでもないウソをつく者も、出てきます。

 いやほんと、「姫」って、けっこう酷いんですよ。

 「みんなでお花見に行きましょう!」って誘っておきながら、満開の桜の下で、卑しい身分の親子に出会い、ペコペコされたら「疎外感」を抱いて機嫌を損ねます。

「もう帰る!」とようやく到着したばかりの媼や侍女に言い放って帰宅。

 求婚してきた貴族のひとりが、宝物を手に入れようとして事故で落命したら、「私は自由に生きようとしているだけなのに、周りをみんな不幸にしてしまう……」と一瞬思い悩むのですが、それでも、生きかたを変えるわけではありません。

 贅沢な生活を受け入れながら、「私は本当はこんな生活じゃなくて、自然のなかで生きていきたいのに」と嘆く姫。

 「森ガール」かよ!

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