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スター新聞記者はリッチを目指す

ちょっと古いのですが10日余り前にタブロイド紙ニューヨーク・ポストに載った「Editor exodus continues at NYT」という記事に行き当たりました。NYTとはNewYorkTimesの略称です。そこからのExodus集団脱走が止まないというのです。

記事によると、今月になって3人の”major player”がNYTを辞めると表明したということで、これを「Exodus」と表現したのは、ここ数ヶ月で大物スター記者の退社が相次いでいるからです。

Nate Silver氏。NYTサイトにアクセスした5人に1人が読んだという超人気政治ブログ「FiveThirtyEight」(538=大統領選選挙人の数)を書いていましたがESPNに移籍。David Pogue氏。超人気テクノロジーコラムニストであると同時に、テレビ・ラジオでも活躍し、ツイッターでは150万人のフォロワーを抱え、「ワンマンマルチメディアコングロマリット」などと称された超人気ぶりでしたがYahooに去ってしまいました。

さらに、ワシントン政治を長く担当し、編集局次長を務めたRichard L. Berke氏は、今やワシントン政治報道で最も有力とされる新興メディアPoliticoの編集長に迎えられ、NYTマガジンの副編集長だったMegan Liberman女史はYahoo Newsの編集主幹に就任、NBA(プロバスケットボール)のBest reporterと言われたというHoward Beck氏がスポーツサイトBleacher Reportに移っていました。

そして今回の”脱走”3人組。まず、Brian Stelter氏は28歳の若さ。メリーランドのTowson大学在学中の2004年に始めたテレビニュース関連のブログが人気となったこともあってか、卒業と同時の2007年、NYTに入社して、メディア関係のコラムを書いていました。今回はCNNに移籍して、日曜昼前の報道番組「Reliable Souces」のホストになります。

NYTマガジンの政治記者11年というMatt Bai氏は45歳、Yahoo Newsで国内政治コラムニストになります。Yahoo Newsの編集主幹はかっての上司だったMegan Liberman女史ですから、職場を移ってまた一緒なわけです。

3人目はそのNYTマガジンの編集長だったHugo Lindgren氏。Bloomberg Businessweekの編集局長から転じて3年余で去ります。行き先は明らかにされていませんが彼もまた、まだ45歳。<Looking forward to the next challenge>次の挑戦が楽しみ、ってメールに書いているそうで、意欲満々。

さて、米国の新聞記者は、日本のように大学卒業と同時にNYTやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルといった有力紙に採用されることはありません。(上記のBrian Stelter氏氏は例外中の例外でしょう)最初は小さなローカル紙で修業し、スクープを重ねることで、徐々に大手紙記者に向けてステップアップしていくのがキャリアパスと言われてきました。

冒頭に掲げたニューヨーク・ポストの記事を書いたKeith J. Kelly記者も書いています。<Where once the Times was a destination where people generally ended their career,>かって、NYTは記者のキャリアを終える目的地だった。

そして続けます。<one departee noted that it has increasingly become a pit stop on the path to greater riches outside the Times>そこを去ったある人は記している。NYTは急速に、余所で金持ちになるための給油所に化している、と。

今回の”脱走者”の契約金や年俸がどのくらいなのかについての報道は見当たりません。しかし、このブログでも以前紹介したように、Business Insiderを主宰するHenry Blodget氏は、2011年にNYTからHuffington Postに移籍した二人の著名記者について、それぞれ「50万ドル」「35万ドル」と報じていました。NYT記者の年俸は10万ドル程度とも言われているので、本当なら破格です。

また、NYTのPublic EditorのMargaret Sullivanさんが、Nate Silver氏の退社事情について書いた記事<Nate Silver Went Against the Grain for Some at The Times>では、Silver氏の独特なデータジャーナリズム的なやり方に社内の反発もあったので、居心地が悪かったのかもとしながら、<The deciding elements more likely were money>とすっきり書いていました。やっぱお金でしょう!と。

Henry Blodget氏は、高い年俸で新興ネットメディアが、新聞記者を誘ってくれるんだから最高の時期だ、と新聞不況を逆説的にとらえていましたが、NYTはじめ、広告収入減に苦しむどの新聞社も、看板記者だからといって特別な待遇をする余裕がないのは明らか。今後とも、有力紙からの「リッチ」を求めてのExodusは続かざるを得ないのでしょう。

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