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2014年以降の欧州経済

欧州経済は2014年以降も低迷が続くでしょう。その根拠は、欧州では三重のバランスシート不況に苦しんでいるからです。

かつて日本では、1990年代初めのバブル崩壊後、企業のバランスシートが急速に悪化しました。そのために、企業は設備投資を控えて、借金の返済を優先するようになりました。これが、日本の長い不況の始まりでした。その後、1997年の金融システム危機後には、銀行のバランスシートも悪化したために、銀行は財務体質を改善させる手段として貸し渋りを行い、日本は2000年代半ばまで深刻な不況を経験することとなります。 

米国では2007年に住宅バブルが崩壊し、家計のバランスシートがひどく傷みました。家計のバランスシート不況はすでに最悪期は過ぎ去りましたが、日本とこの米国の例は、バランスシート不況を克服するためには、10年単位の時間が必要なことを教えてくれます。

米国の家計でバランスシートが大幅に悪化したときに、欧州の家計は米国ほど重症ではなく、欧州の人々は米国の住宅バブル崩壊やそれに伴うサブプライム問題に対して、借金に依存しすぎだと非難していました。

しかし、事態は大きく変わりつつあります。IMFの2013年5月の報告書によると、米国の可処分所得に対する家計債務比率は2007年の130%から2012年には105%まで下がっている一方で、ユーロ圏の家計債務比率は同じ期間で100%から110%まで上昇してしまっているのです。 

つまり、日本が企業と銀行の二重のバランスシート不況、米国が家計の単一のバランスシート不況を経験したのに対し、いまや欧州は国家と銀行のバランスシート不況に加え、家計のバランスシート不況にまで陥ってしまっているということです。三重のバランスシート不況を克服するためには、とても10年単位の時間では難しく、15年あるいは20年の長期低迷も覚悟しなければならないでしょう。

EUの見通しによれば、2013年のユーロ圏の実質経済成長率はマイナス0.4%と2年連続のマイナス成長になりますが、2014年にはプラス1.2%に浮上するとのことです。しかし、この見通しは楽観的すぎると思います。ユーロ圏の失業率は2013年10月現在で12%台と過去最悪の水準にあり、改善の兆しはまったく見えていません。今のところ、欧州経済では内需がしばらくの間は期待できない状況にあるのです。

それならば、米国や中国などの外需に期待したいところですが、債務危機が落ち着きを見せていることもあり、主要通貨に対するユーロ相場は2012年半ばを起点に大幅に上昇しています。実体経済は悪化し続けているのに、ユーロ高により域内の輸出競争力は下がってしまっているのです。

現在、ユーロ圏のフランスをはじめ中軸国では、財政再建が思うように進んでいません。ドイツが主導して財政規律を厳しくする新しい条約をつくったにもかかわらず、ドイツを除いた中軸国でルールを守れないケースが続出しているのです。各国が2014年も財政規律を緩和しようとすれば、金融市場で再び債務危機が蒸し返されることになるでしょうし、財政規律を厳格に守ろうとすれば、景気の悪化に拍車がかかることになってしまうでしょう。

こうなってしまうと、財政出動や金融政策では期待できる効果を生みだすことはできません。長い時間をかけて、国家と家計は地道に債務を返済し、銀行は不良債権を処理していくしかないのです。とくに国家は財政を再建するために、少なく見てもこれから10年単位の時間を必要とするでしょう。その間、欧州経済は長い低迷の時期を迎えるでしょう。

2014年単年の懸念材料としては、ECBにより約130の大手銀行の資産査定が始まることです。ECBの査定が甘くなっても厳しくなっても、どちらのケースでも欧州にとっては厳しい結果が予想されるからです。査定が甘くなれば、金融市場からの納得が得られず、銀行株が急落するリスクが高まりますし、査定が厳しくなれば、南欧の大手銀行を中心に深刻な貸し渋りが起きるでしょう。

おまけに、銀行が資本不足の場合の穴埋め処理については、EUでは具体的な方策をまだ決定していないのです。先が見えない見切り発車の資産査定では、欧州の政治・経済だけでなく、世界の金融市場が動揺することも想定しなければならないでしょう。

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