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<11月24日>(日)

○特定秘密保護法案についての続きです。

○私見によれば、政府が法案を急いでいる理由は2点あって、ひとつはNSC法案とセットだということである。日本版NSCが間もなく誕生し、来年4月からは予算もついて、正式に活動を開始する。ところが、「お前には言えないなあ」と言われてしまっては困るということである。日米のインテリジェンス協力ができないというのでは、せっかくNSCを作った意味がない。安倍政権としては、せめてポーズだけでも、防諜体制を強化しているところを見せたいという事情がある。

○もうひとつは、東京五輪招致が決まったことがある。政府としては、テロ対策に全力を挙げなければいけない。ところが、国際的なテロ関連情報をアメリカに出してもらおうと思ったら、これまた「お前は秘密が漏れるからなあ」と言われてしまいかねない。なにしろ「日本人は秘密を守れない」ということは、1971年のキッシンジャーによる日本の頭越し外交の時代から定評のあることですので。

○誤解を避けるために言っておきますが、日本の公務員はわりと口が堅い方でありまして、最近ではたまにメモワールを書いて全部ばらしちゃう人が居ますけど、昔はそれこそ墓場まで持っていくのが普通でした。日本人で口が軽いのはもっぱら政治家なんですよねえ。ところが議員さんは憲法で身分が保障されているものだから、秘密を漏らしても罰することができない。この点は今回もスルーされていて、残念なことだと思います。

○日米間のインテリジェンス協力については、2000年10月の「第1次アーミテージ・ナイ・レポート」が6つの項目のうちの一つとしてわざわざ取り上げています。全文をご覧になりたい方は拙訳をご参照ください。あのときは、①政治、②安全保障、③沖縄、④諜報活動、⑤経済関係、⑥外交関係、という構成になってました。懐かしいねえ。こんなことを書かれているんです。
日米間のより緊密な情報関係には、両国の政治的な支援も必要となる。この観点から、日本は以下の数点の措置を取る必要がある。

● 日本の指導者層は、機密保持のための新たな法律について国民的、政治的支持を得ることが必要である。

● 諜報能力の改善は日本の政策決定の支援体制を改善することになるが、日本の指導者たちはみずからの意思決定プロセスをも改善する必要がある。諜報の共有は日米間だけではなく、日本政府内でも行われるべきである。

● これまでの経験からいって、諜報プロセスにいかに国会を含めるかについての議論が必要である。民主主義国家における諜報の監視は、政治的な支持を維持するにあたり決定的に重要な要素である。

要するに、日本が将来の防衛の必要性を論じ、行政改革に取り組んでいる今こそ、いよいよ日米の諜報協力を箪笥から取り出すときが来たということである。
○呆れたことに、上記の部分の前段も、今読んでも全く古くなっていない。お暇な方は通読してみてくださいまし。なにしろ13年も前に、「日本との戦略的な諜報協力は遅きに失したといえる」とか、「日米の諜報部隊では規模が大きく違っているので、より均衡の取れた分担をするためには時間がかかるだろう」とか、「米国は、日本が自前の情報衛星を含む、独立した諜報能力を開発したいという合理的な願望を支持すべきである」などと見通しているのである。アーミテージ・ナイ・レポート恐るべし。

○こんなことを言われたのが今から13年も前のことで、この間、日本の歴代の政権は分かっていながら問題を先送りし続けてきた。逆に世界では、9/11テロがあったり、インターネット革命があったり、ウィキリークスが登場したりと、インテリジェンスの世界はどんどん先に進化していった。2000年当時から全く変わっていない日本は、何週も遅れているランナーということになる。アメリカ側から見れば、「今頃何をやってるんだ」てな感じでありましょう。

○でもねえ、長期政権だった小泉首相も、基本的に内閣記者会を敵に回さないようにやってましたから、この問題には手を付けなかったんです。この間に、イラク戦争とか北朝鮮核開発とかがあると、マスコミは「日本政府はもっと情報収集に力を入れよ」と言うのでありますが、そこで政府が「じゃあ本気で諜報活動をやりますから、秘密保護にご協力を」と言うと、彼らは「それは国民の知る権利(≒マスコミの既得権)が危うくなる」といって反対するんですよねえ。

○幸か不幸か、マスコミへの信頼感がこの10年くらいでずいぶん落ちましたので、今度の法案が通りそうな感じになっている。通せるものなら、通した方が良いのではないだろうか。少なくとも「拙速」ではないと思うぞ。

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<11月22日>(金)

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