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かぐや姫の物語レビュー、超大御所のラディカルな挑戦はジブリ屈指の名作を生んだ

スタジオジブリでも最もラディカルな追求をした作品であり、かつ成功してしまっていますね、この作品。ジブリ屈指の名作では。

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アニメが基本的に1枚1枚描かれた絵である、という原点に立ち返って絵そのものの、それも日本の伝統的絵画の持つ美しさに立ち返ろうという野心的な作品。

最近だと、聖地としてのタイアップ戦略という理由の他、リアリティの獲得のために実際の街を参考にトレースかと思うような、実写に近い背景描写をするアニメを多くなってきましたが、それはそれで大変美しく眼福なのですが、そういう作品とはまるで指向性を異にする作品ですね。業界トップのスタジオが、しかも超大御所がこんな大胆なチャレンジをしてしまうというのがスタジオジブリのすごいところ。

水彩画のようなタッチで描かれたこのアニメ。画面には白描かれていない部分も多く、緻密な背景を描かず、画面の情報量を抑え気味にしているのがなんとも心地良いです。それでいて、表情の変化する一瞬のリアリティがすごい。例えばかぐや姫が帝に後ろから抱きつかれるシーンのかぐや姫の恐怖に引きつる表情など。日本画には能面のような表情の欠落が特徴という側面がありますが、このかぐや姫の物語の登場人物は非常に表情豊か。それは日本のアニメーション特有の表現もあるし、高畑監督の追求してきたリアリズムアニメを引き継ぐ部分もあります。

実写映画でもこれくらい表情豊かな作品で減ったな、と思いますが、人物の表情、仕草、人物間の距離感などから感情が溢れまくってるんですよね。本当にすごいな、と。

また長絵巻のようなどこまでも横移動し続けるカメラワークもすごい。どこまでも森の中を駆けていく三船敏郎を撮影するのに、黒澤明監督は、カメラの周りを周回させて、それを撮影したりしていましたが、ああいうどこまでも続くかのような横移動の感覚、久々に味わったなあ。

ヒロインのかぐや姫の可愛い。アニメ的な可愛さもあり、日本画的な気品も同時にある。日本のアニメが歩んできた可愛らしさの追求に全く背を向けているというわけではなく、日本の伝統的絵画とそれを上手く融合させているという感じ。日本の美の歴史を徹底的に知らなければできない芸当でしょう。


おおかみこどもの雨と雪のプロデューサー、齋藤優一郎氏は「重要文化財」レベルと絶賛していますが、同意です。


あの美しさ、何と言葉にしたらいいかわかりません。
ただ見終わって、「日本に生まれてよかったなあ」と心底思いました。


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