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研究力シンポの報告(1)”あまりにも異常な日本の論文数のカーブ”revisited

 10月19日に開催されたScienceTalksニッポンの研究力を考えるシンポジウムの報告は、すでにツイッターや下のサイト

http://www.sciencetalks.org/ja

でなされているのですが、このブログ上ではまだ報告をしていませんでした。読者のかたから、ブログでも報告してほしいとの連絡をいただきましたので、僕の発表を中心に報告させていただくこととし、発表の時に時間が短すぎて十分説明できなかったことも書いておこうと思います。

 まずは、僕の発表のタイトルですが「国際競争に勝つために、今こそ地方大学の研究力を高めよ!!」ということにしました。今までは、地方大学は地域のために貢献するということの意義が主張されてきました。つまり、世界的な競争は旧帝大を中心とする研究大学がやればよく、地方大学は地域貢献に存在意義があると・・・。しかし、今回のこのタイトルは、国際競争に勝つためには、地方大学の研究力を高めるべきであるという主張です。

 そして、前半は僕の論文数のデータを中心としたプレゼンをし、後半は熊本大学の谷口学長に、地方大学の現場からの主張をしたもらうことにしました。

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 スライドの枚数は10枚にという主催者側からの指示をいただきましたので、かなり精選をして、データを10枚のスライドにし、最後にまとめを1枚のスライドにしました。

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 僕の最初のデータのスライドですが、タイトルは「あまりにも異常な日本の論文数のカーブ」としました。どこかで聞いたことのあるタイトルですね。そう、以前この同じタイトルのブログで、アクセス数が1日6万件にも達したことがありましたね。あの時は、エルゼビアという会社のデータで、原著論文以外の抄録のような小さな論文も含まれていることが、日本の論文数だけが異常に減少していることの1つの説明でした。そして、原著論文では減少は明確ではなく、日本の論文数は”停滞”しているという表現が使われました。

 しかし、今回は、2012年までのトムソン・ロイター社のデータ(InCites™による)で、そのほとんどは原著論文や総説と考えられます。今回の分析では、このトムソン・ロイター社の論文数のデータにおいても、先進国の中で日本だけが減少していることは明白です。

 そして、日本の論文を臨床医学と臨床医学以外に分けて論文数のカーブを調べたところ、臨床医学は最近少し持ち直している傾向がありますが、臨床医学以外の論文は急速に減少し続けていることがわかりました。

 「あまりにも異常な日本の論文数のカーブ」は、単に、抄録レベルの論文の減少だけではなく、本格的な論文の減少も意味しているということになります。そして、臨床医学以外の論文数の異常な減少のカーブは、何らかの大きな原因の存在を感じさせます。

 次に、人口当たりの高注目度論文数のグラフです。同様のグラフは以前にもブログでお示しをしましたね。今回も前回と同様に文科省科学技術政策研究所の被引用数Top10%の論文数のデータを参考にして計算しました。

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 以前のデータと同じく、日本は先進国で21番目です。しかし、前回は20位の韓国との差はわずかでしたし、19位の台湾との差は1.4倍でしたが、今回は、韓国との差が1.4倍、そして台湾との差は1.7倍と拡大し、どんどんと差が広がっています。もちろん欧米諸国との差は、もっと大きいわけです。

 日本がイノベーションで海外から物やサービスを買おうと思えば、その質×量で、相手の国を上回っていなければ差し引き赤字になってしまいます。そして、国民を食べさせるという観点からは、国民1人当たりで計算する必要があります。高注目度論文はある程度イノベーションと相関するとされていますので、国民一人あたりの高注目度論文数は、その国のイノベーション力をある程度反映していると考えられます。

 人口当たりの高注目度論文数の国際順位を21位からなんとか上げる必要があるのですが、逆にどんどんと他国との差が広がっています。この、日本全体の研究力の低下を見れば、山中伸弥先生のノーベル賞で安閑としている場合ではないのです。これは日本の研究力、そしてイノベーション力にとって”危機的”状況です。

 つづきは次回にします。

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