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シリコンバレーの起源をミリオタに解説させると

シリコンバレーはどのように始まったのでしょうか?

ソフトウェア企業、エピファニーの創業者で、カリフォルニア大学バークレーのハース・ビジネス・スクールなどで教えているスティーブ・ブランクは、シリコンバレーの起源に関して以下のように解説しています。

先ずシリコンバレーの「シリコン」は半導体(セミコンダクター)の素材から来ています。それまでの真空管がセミコンダクターに置き換わったことは、あらゆる電子製品のサイズを小さくし、真空管が焼き切れることから発生する、真空管の交換の必要性を取り除きました。これは、画期的です。

今でこそシリコンバレーは「やれソーシャルだ」とか「やれモバイル・アプリだ」とか、その手の起業をする人が後を絶ちませんが、1960年代は圧倒的に半導体関連の企業を興すひとが多かった……

「ああ、ゴードン・モーアと、ボブ・ノイスでしょ」

この話をすると、ちょっとシリコンバレーの歴史に詳しい人は、インテルを創業した、この有名な二人の名前を出します。

そうです。でもその二人が勤めていた会社がフェアチャイルド・セミコンダクターであり、フェアチャイルド・セミコンダクターは「裏切り者の八人」と呼ばれる八人の若い研究者によって始められたのです。

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その八人は、もともとショックレー研究所に勤めていました。ウイリアム・ショックレーは半導体を発明した一人で、1956年にノーベル賞を受けた素晴らしい科学者ですが、人を使うことは下手で、マネージャーとしては最悪でした。半導体の研究をする志を持ってわざわざ東海岸からカリフォルニアまで来た若い技術者たちは、研究の方向性がコロコロ変わることに腹を立てて、辞めてしまうわけです。


その時、誰かが「おい、どうせ皆、辞めるのなら、オレ達で会社を立ち上げないか?」と提案します。「フェアチャイルド氏に、話を持ちかけてみなよ」というわけです。フェアチャイルドは、こんにちの用語を使えば、いわゆるエンジェル投資家です。航空機や、航空写真装置など、いろいろな事業を立ち上げ、同じく飛行機のビジネスに関わっていたハワード・ヒューズと親交があり、ニューヨーク社交界の花形でした。だから「頭脳」は「裏切り者の八人」が出し、カネはフェアチャイルドが出したわけです。この際、「裏切り者の八人」はレストランで新品の1ドル札にお互いのサインを署名し、この話に乗ることを誓ったのです。


このフェアチャイルド・セミコンダクターから、後のインテルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、ベンチャー・キャピタルのクライナー・パーキンス(KPCB)などが生まれるわけです。

さて、ウイリアム・ショックレーは、もともとコロンビア大学で潜水艦探索システムの研究を指揮した後、国防省の兵器開発グループの副長官を務めました。第二次世界大戦の頃です。

ショックレーをカリフォルニアに招聘したのは、スタンフォード大学電子リサーチ研究室(ERL)を設立したフレッド・ターマンです。

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フレッド・ターマンは無線技術の研究の第一人者でしたが、第二次大戦が勃発し、連合軍がドイツの防空システムの仕組みを解明しなければいけなくなった時、その任務の責任者としてスカウトされた人です。彼は当時、優秀な研究者が多く居たハーバード大学に、ハーバード・ラジオ・リサーチ・ラボ(RRL)を設立します。

欧州戦線でドイツ本土爆撃に参加したイギリス軍とアメリカ軍は全部で4万機の爆撃機や戦闘機を作戦で失いました。これは世界で現在運航している全ての航空会社のジェット機の数の2倍に相当します。

B17などの爆撃機がイギリスの基地から離陸するとすぐに、その動向はドイツのレーダー監視網に捕捉されました。

ドイツ軍は「マンモス」と呼ばれる早期警戒レーダーを1942年に20基占領下のフランスに配備しました。もうひとつのレーダーは「ワッサーマン」と呼ばれる可変型レーダーで、おなじく1942年に150基が配備されました。ドイツ軍は下の動画に見るように、このレーダー監視網を高射砲と連動させ、爆撃を待ちうけたのです。


さらに1500基にものぼる「ウルツバーグ」と呼ばれる追跡レーダーで爆撃機はしっかり追跡され、迎撃戦闘機が急行する際の道案内を果たしました。

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さらにドイツの戦闘機には「リヒテンシュタイン」と呼ばれるレーダーが搭載されていました。


アメリカはドイツのこの防空システムがどのように構築されているか知りませんでした。そこで敵の防空システムを解明し、それを無力化するために極秘のプロジェクトがスタートされたのです。それがハーバード・ラジオ・リサーチ・ラボ(RRL)です。

RRLは1943年7月にハンブルグ上空でアルミホイルの短冊を散布することで「ウルツバーグ」を無力化する方法を編み出しました。またレーダー妨害装置を爆撃機や戦闘機に搭載しました。

このRRLを指揮したのが先述のスタンフォード大学のフレッド・ターマン教授です。ターマンは1926年にスタンフォードの教授となり、ヒューレット・パッカードを創業したビル・ヒューレットとデビッド・パッカードの指導教官を務めた人でもあります。

ターマンは第二次世界大戦が終わった後、スタンフォード大学に戻り、スタンフォードを短波と電子技術研究の最先端の大学にすることを決心します。そしてハーバードから11人の研究者をリクルートし、スタンフォード大学に電子リサーチ研究室(ERL)を設立するのです。

その後、米ソの冷戦が起こるとアメリカ政府はスタンフォード大学における防衛関連の研究開発予算を倍増させます。

ターマンはスタンフォードの卒業生が起業して防衛産業などに貢献することは、アメリカを強くすると信じ、卒業生が大学の研究室で積み上げた知的所有権を買い取り、それを基に起業することを奨励しました。ヴァリアン・アソシエーツ、リットン・インダストリーズ、ワトキンス・ジョンソンなどの企業は、こうして生まれたのです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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