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格差スパイラル 順調に進んでいます

赤木智弘の眼光紙背:第298回

 総務省が今年7〜9月期の労働力調査の平均値を発表した。パートや派遣社員などの非正規雇用は1908万人で、2002年1〜3月期以降、最多だという。(*1)

 雇用について言えることは「いくら求職側が努力をしようと、政府が雇用政策を行おうと、雇用は必要によって最適化していく」ということ。

 雇用は労働需要から生まれるわけであり、労働需要を喚起するのは景気の向上や、人手不足。

 しかし、アベノミクスは一時的に株価を上げたただけで、後は消費税増税によって効果の消尽一直線といった模様で期待できない。また、人手はただでさえ大卒の学生が就活ゲームに奔走し、経済学者を名乗る人たちの中には、大卒見込み学生たちの就職内定率だけで雇用は堅調などと言い出す者までいる始末。もはや既卒の人たちは労働市場から、全く必要とされていないようだ。

 しかしながら、必要とされていないにもかかわらず「働かざるもの食うべからず」とばかりに、労働の責務ばかりは押し付けられる。そうなると労働者はいかに低賃金低福利厚生でも働かざるを得ない。そんな理不尽さを利用して、企業はいつでも使い捨てられる非正規労働者をどんどん増やして、会社の安定を図るという構図である。

 この構図を「企業のワガママ」として批判するのは簡単だけれど、政府がこの構図に対してできることがあるとすれば、せいぜい労働基準法の適用を厳格化し、企業経営を法の枠内で行うように是正することくらいである。そしてそれを厳格化すれば間違いなく雇用は減る。企業だって無い袖は振れないのだから。

 労働側が正社員の保護を求めれば、その保護の原資は非正規労働者から奪い取らずを得ず、そのためにはどんどん非正規労働者を増やすしかない。だから僕は「正規労働者こそ非正規労働者の敵だ。正規労働者の保護を第一に考える労組と、非正規労働者は共闘できない」と常に主張している。

 そしてこうした状況は「当然」であるといえる。現状の日本人の労働観で労働環境を整えれば、当然のようにこうした状況が生まれる。

 経営者は偉く、その成果はすべて「努力の上の必然」として理解される。正社員はお父さんで尊ぶべき存在であり、彼らの労働を守ることは日本を守ることにもつながる。非正規労働者は怠け者であるがゆえに、彼らが低い待遇に甘んじるのは必然であり、彼らは家族を持たないから保護するに値しない。そのような日本人の最大公約数的な理解を当てはめれば、現状の雇用環境に対して、日本人の大半から大きな不満も出ないのも当然と言える。

 雇用が最適化することにより経済格差という状況が生まれる。その状況が長く続けば続くほど、状況を肯定するための言説が生まれる。その言説をその状況にある多くの人が受け入れる事によって、その状況は意識の上でも肯定され、ますます堅牢なものとなる。  僕たちが陥っている格差スパイラルは、雇用状況が順調に悪化することにより、ますます先鋭化していく。正社員にあらざれば人にあらずの時代はこれからも続くだろう。

 そのスパイラルに歯止めをかけるための銀の弾丸は、果たしてどこにあるのだろうか? 僕たちはそれを探さなければならない。

*1:労働力調査:非正規雇用79万人増(毎日新聞)

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