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欧州危機は去った

 女性として初めてドイツ政府経済諮問委員会(五賢人委員会)のメンバーとなった、マインツ大学のビアトリス・ウェーダー・ディ・マウロ教授は、ニューヨーク大学教授のヌリエル・ルービニ氏と賭けをして、その結果、マウロ教授が勝ったそうである(ブルームバーグ11月15日の記事より)。

 その賭けの内容とは、2012年1月にギリシャがユーロ圏を同年に離脱するかどうかを賭け、勝った方はシャンパンをもらうというもとか。国際会議に頻繁に参加するルービニ氏とマウロ氏は顔を合わせるたびに「シャンパン!」と言い合うそうである。

 ドイツの五賢人委メンバーは政府にユーロ圏危機への対応法を助言していたそうで、賭けに勝ったのはマウロ教授だけではなく、ドイツ政府を中心としたユーロ加盟国の首脳達達ということになりそうである。どうやらシャンパンを空ける時が来た。

 アイルランドは14日、欧州連合(EU)から2010年末以降受けてきた金融支援を12月半ばに終えると発表した(日経新聞11月15日朝刊)。支援の条件として国際社会に約束していた財政再建を着実に進め、自力で市場から資金を調達していく目途がついたためである。金融危機後にユーロ圏で支援を受けた国のなかで、アイルランドが初めて脱却を果たすことになり、ユーロの債務危機はひとつの節目を迎えた。アイルランドの10年債利回りは2010年秋に7%を上回り、2011年夏には一時15%にまで達していたが、足元では3%台半ばで安定している(日経新聞11月15日朝刊より)。

 個人的にはユーロ危機は2012年の7月あたりで最悪期を脱したものと見ている。これは為替市場におけるユーロの動きや、イタリア国債の利回りのチャートなどをみても明らかである。ただし、これはECBの積極的な金融政策などをきっかけに、あくまで市場のマインドが変化したものであり、具体的に何かしらそれを示唆するような出来事があったわけではない。今回のアイルランドが金融支援脱却の発表は、それを示す象徴的な出来事と言えよう。

 もちろん危機が完全に過ぎ去ったというわけではない。ポルトガルも順調に行けば来年にも支援を終えると期待されているが、肝心の危機発生元となっているギリシャについては難航しており、追加支援が必要との見方もある。ユーロ危機が完全に去ったとみるには、ギリシャに対する支援が終了する必要がある。

 ただし、ユーロ危機はあくまで市場が招いたものである。ギリシャ危機はギリシャ国債への信認失墜が大きな要因であり、それが格下げ等により、まさに売り浴びせといった状況となり、国債価格の急落が危機を招いた。その国債価格がEUの支援やECBの金融政策等により沈静化し、国債利回りの急激な上昇は収まり、危機前の水準に戻りつつある。不安は完全に払拭されたわけではない。しかし、そろそろシャンパンを空けても問題はないのではなかろうか。欧州の危機は去った。あとはその危機対応の後片付けが待っている。

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