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在日の通名報道への批判について

 10月29日付の記事「在日が通名で犯罪歴を消せるとの竹田恒泰氏の発言と論評を読んで」で私は、通名を用いることで捜査機関の犯罪歴を消すことはできず、竹田氏の発言は事実誤認だと述べた。

 これに対してネット上で、竹田氏が言っているのは捜査機関の犯罪歴ではなく、報道が通名で行われることにより当人が罪を犯したことが世間に認知されず、社会的制裁を受けないという趣旨ではないかとの反応があった。また、竹田氏も、10月24日付けでYou Tubeに投稿された動画で、在日の犯罪報道が通名によって行われていることを問題視している。

 この点について少し述べてみる。

 田中一郎(仮名)という通名を用いている在日3世の李正煕(仮名)という人物がいるとする。彼が何らかの容疑で逮捕され、報道されたとする。その場合、

「大阪市○○区△△の会社員、田中一郎容疑者(30)を□□□□容疑で逮捕した」

と報じられたのでは、李正煕という本名ではないから、社会的制裁を受けない。しかも、在日による犯罪であるにもかかわらず、日本人風の名で報じられることにより、在日が犯罪を行っていることが世間にわからず、隠蔽されてしまう。日本人には同じことができないから、これは「在日特権」だ。こういう場合は、

「大阪市○○区△△の会社員、李正煕容疑者(30)=韓国籍=を・・・・・・」

と報じるべきである――というのが彼らの主張であるらしい。

 しかし、前にも書いたが、通名というのは、普通はコロコロ変えるものではない。在日2世や3世であれば、生まれてから死ぬまでその通名を使い続けるものだ(結婚などで姓が変わることはあるだろうが)。

 李正煕が、田中一郎という通名を用いているとすれば、それは表札に「田中」と掲げ、田中一郎の名で名刺を作り、田中一郎の名でビジネス上の書類を作成し、田中一郎の名で近所付き合いをし、田中一郎の名でレンタルビデオの会員になるということだ。普通の公立の小中学校に通ったのなら、やはり田中一郎を名乗ったことだろう(私が子供の頃はそうでした。最近のことはよくわかりません)。

 それが、「李正煕容疑者」と突然報道されても、職業上の知人や近隣住民、昔の同級生など、彼を知る人がその本名を知らなければ、彼のことだとはわからない。そちらの方が社会的制裁にはならないのではないか。

 もっとも、職場を長期欠勤したり、家宅捜索が入ったりすれば、職場や近隣にはわかってしまうだろう。しかし、単なる知人や昔の同級生などにはやはりわからない。

 どうも、最近の私の一連の記事に対する反応を見ていると、通名とは、在日が都合が悪くなったときに日本人になりすまし、経歴に汚点を付けないための仮の名だと思い込んでいる人が一定数おられるようだ。しかし、普通の在日はそういう使い方はしていない。

 ならば、

「大阪市○○区△△の会社員、田中一郎こと李正煕容疑者(30)=韓国籍=を・・・・・・」

といった具合に通名と本名を併記すればいいと主張する方もおられるようだ。

 しかし、李正煕がその本名や自身が韓国籍であることを周囲に明らかにしていなかった場合、それを広く報じる権利が報道機関にあるのだろうか。

 よく指摘されるように、犯罪報道における通名と本名の扱いが、同じ事件でも報道機関によって異なることがある。また、同じ報道機関でも事件によってその対応を変えている。

 警察発表ではおそらく通名と本名の双方が明らかにされているのだろう。そのどちらかを、あるいは双方を報じるかどうかは、各報道機関が、それぞれの事例に沿って、独自に判断しているのだろう。

 そもそも、氏名はプライバシーではないという考え方もある。通名と本名を併記しての報道が一概に悪いとは言えない。しかし、通名のみの報道に留めることも、それはそれで理解できる。

 とりあえず、在日が通名報道により社会的制裁を回避しているという主張は、一般的には成り立たないものだということは指摘しておきたい。

 通名報道で社会的制裁を受けたとしても、在日はすぐ通名を変更できるから、その経歴を社会的に消すことはできるのではないかという反論があるかもしれない。

 しかし、田中一郎として社会生活を送ってきた者が、通名を変えて、今日から私は山田大助(仮名)ですと、同じ住所、同じ職場でそのまま社会生活を送るわけにはいかないだろう。

 犯罪歴があろうが、以前からの社会的な立場を維持したいのであれば、同じ通名を名乗らざるを得ない。

 通名を多数回変更することにより身分を偽って詐欺を行った事件が複数報じられているから、そうでない在日もいるにはいるのだろう。しかし、それが在日一般に通じる話だというのは、勝手な思い込みにすぎない。

 そして、氏名の変更は日本人であってもできるし、それを悪用する日本人もいる。

 私は不思議なのだが、この報道後の通名変更を問題視する人々は、日本人における結婚や離婚や養子縁組・離縁による氏の変更をどう考えているのだろうか。

 鈴木花子(仮名)が罪を犯して実名で報道された。その後彼女は結婚して佐藤花子(仮名)となり、住所も交友関係も変わった。もう彼女の周りには身内を除いて彼女の犯罪歴を知る人物はいない。こういうケースについては別に何とも思わないのだろうか。

 あるいは、結婚中に罪を犯して報じられても、離婚して転居すれば別人になりすますことができる。

 また、夫が妻の父と養子縁組して妻の氏を名乗ることにより、別人になりすますことができる。

 ほかにも「やむを得ない事由」による氏の変更や「正当な事由」による名の変更が戸籍法により認められている。これには家庭裁判所の許可が必要だが、さまざまな事情により認められるケースがあることが判例から確認できる。

 これらによって、犯罪が報道された日本人であっても氏名を変更することは「できる」のだが、ではこれらは廃止すべきで、夫婦も別姓とし、人は生まれたときの氏名を死ぬまで持ち続けなければならないのだろうか。

 結婚や離婚による氏名変更は未婚者にはできないわけだが、だからといってそれを「既婚者特権」とでも呼ぶのだろうか。

 通名変更が容易であることが問題なら、通名変更の運用を厳格にすべきだと主張すればいい。例えば「やむを得ない事由」であれば日本人に準じて家庭裁判所の許可を必要とするとか。

 しかし、在特会や竹田氏は、通名使用は「在日特権」であるから廃止すべきだと主張している。

 それは、彼らにとっては、在日が通名を用いることそれ自体が許せないのであって、悪用云々はその主張を補強するための方便でしかないからだろう。

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