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機動戦闘車の評価

戦車に引導を渡す機動戦闘車」に対しては、非常な反響がありましたし、誤解されている部分もあるので、補足の意味も含めて、機動戦闘車の評価について、書きたいと思います。

防衛装備の評価において、何より大切なのは、その装備を投入する戦場における脅威対象です。

近々発表される防衛計画の大綱では、「統合運用を踏まえた能力評価」が行われると「防衛力の在り方検討に関する中間報告」で示されていますが、当然に統合運用を踏まえた脅威の評価がその前提にあります。

防衛省の脅威評価の詳細が公開されることはないでしょうが、”各種事態への実効的な対応”の項目には、本格的な侵攻事態は入っておらず、陸戦に関する対応措置としては、②島嶼部に対する攻撃への対応と③弾道ミサイル攻撃及びゲリラ・特殊部隊への対応があるだけです。

各種事態への実効的な対応
 ①警戒監視能力の強化
 ②島嶼部に対する攻撃への対応
 ③弾道ミサイル攻撃及びゲリラ・特殊部隊への対応
 ④サイバー攻撃への対応
 ⑤大規模災害等への対応


そのため、防衛省としては、対処すべき脅威として、MBTは、あっても極少数だと認識していると思われます。
私も、それが正しい選択だと思っています。

であれば、自衛隊が装備すべき戦車も、少数か、コストパフォーマンスによっては将来的には、ゼロとする選択もあり得るでしょう。
(ゼロにするなら、何らかの対戦車火器が必要ですが)

そして、機動戦闘車が対処すべき脅威は、ゲリコマを含む歩兵と戦車以外の装甲戦闘車両という事になります。
それに、戦車以外の装甲戦闘車両でも、戦場である先島の有人島に上陸される可能性は、相当低いと思われます。つまり、機動戦闘車のメインターゲットは歩兵です。

戦車以外の敵装甲戦闘車両としては、中国の97式歩兵戦闘車や05式水陸両用歩兵戦闘車があります。
機動戦闘車では、路外機動性が乏しく、行動が限られますし、装甲もこれら戦闘車両の100mm級の砲にはとても耐えられないでしょうから、これらと正面から戦う事は困難だと思いますが、攻撃力としては十分なモノを持っています。
これらとの戦闘では、戦車を投入するか、機動戦闘車が当たるのであれば、空からの攻撃も含めて立体的に作戦を行なう事になるでしょう。

機動戦闘車の装甲がどの程度の防御力があるのか不明ですが、車重を考慮すれば、歩兵に対しては、対戦車火器以外では、乗員が死傷することはない程度の防御力は確保されているとでしょう。
砲は十分過ぎる攻撃力がありますが、携行できる弾数が限られることを考えれば、戦闘だけを考えるなら、むしろ中口径砲の方が良かったと思われます。(中口径砲にしてしまうと、近接戦闘車になってしまいますが)
ですが、74式の砲弾を利活用するとのことなので、コスト面で採用したという側面もあるのでしょう。

戦略機動性の点は、やはり素晴らしいと思います。

公開されている動画では、高速走行の際には操縦手用のカバー?を取付けており、単純に速度が出せるというだけではなく、安全性の考慮や操縦手の負担も考慮した仕様になっているようです。

これなら、先導車を付ければ、高速道路を利用してゲリコマの襲撃予想地点に急行できますし、島嶼に展開する際も、数が限られる艦船での輸送距離を縮減できます。

陸自自身が、これから機動戦闘車をどう評価し、配備数がどうなるのか興味深い所です。
ただし、その評価が決まる前に、機動戦闘車は戦車に引導を渡すための存在という使命を負わされる可能性が出てきました。
新防衛大綱 陸自戦車数を削減へ」(日テレニュース13年11月9日)

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