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統計から見るハンターの誤射と高齢化

先日、静岡県でシカ駆除中の猟友会員が、シカと誤って男性を射殺してしまう痛ましい事故がありました。

静岡県警裾野署は4日、同県長泉町の雑木林で3日にシカ駆除中の猟友会員(73)に頭部を撃たれた派遣社員根上武彦さん(66)=同県沼津市新宿町=が4日午前、搬送先の病院で死亡したと発表した。  猟友会員は「シカと間違えた」と話しており、同署は業務上過失致死容疑で事情を聴く。


出典:シカと間違われた男性死亡=猟友会員に頭撃たれる―静岡

このような動物と間違えて人を誤射してしまう事故は毎年のように発生しておりますが、目立つのは高齢者による事故です。今年は5月にこんな事故もありました。

12日午前8時20分ごろ、宮城県女川町鷲神浜の山林で、同県猟友会石巻支部の農業岡田武市さん(64)=石巻市水沼=がニホンジカの駆除をしていたところ、仲間が撃った散弾銃の弾が胸に当たった。岡田さんは病院に運ばれたが間もなく死亡した。


出典:シカ駆除で誤射、男性死亡=猟友会の82歳逮捕-宮城県

高齢ハンターによる死亡事故が続いて起きていますが、背景には何があるのでしょうか。Yahoo!ニュースのコメント欄では、高齢が事故の原因だとする声が多く見られましたが、これは本当でしょうか。環境省の生物多様性センターが鳥獣関係の統計を公開しておりますので、一番新しい平成22年度から遡った10年間のデータから、その原因を考えてみましょう。

大きく減った銃猟ハンター

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狩猟事故による年間死傷者の推移(出典:環境省統計より筆者作成)

上の図は狩猟事故による年間死傷者数の推移を示したグラフですが、これを見るとハンターによる狩猟事故は微減或いは横ばいの傾向にあるようです。また、狩猟事故と一口で言っても、動物に襲われたり、猟の最中に転倒した怪我なども含まれます。ハンター本人に起因する銃の誤射などによる事故は、年間概ね20名以下の死傷者数で推移しています。

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狩猟免状交付者数の年齢別推移(出典:環境省統計より筆者作成)

上の図は、ハンターの数を表す狩猟者免状の交付者数の推移グラフですが、狩猟事故同様に微減か横ばいの状態です。1970年年代に50万人台のピークを迎えてから、右肩下がりの状況にあります。現在の狩猟免状交付者数は20万人行くか行かないかのラインを推移していますが、その大半が60代以上の高齢者で占められており、年々その割合は増してきています。反面、若年層は伸び悩んでおり、近い将来にハンターの更なる大幅減が予想されます。

このように狩猟事故と狩猟免状交付者数には一定の相関関係があるように見えます。今度は交付される狩猟免状の種類を見てみるとどうでしょうか。次のグラフを見てみましょう。

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種別狩猟免状交付者数の推移(出典:環境省統計より筆者作成)

平成19年度に狩猟免許制度に変更があり、それまでの網・わな免許が、網免許・わな免許に分割されました。これは害獣被害に悩む農家が、わなを仕掛けやすいようにする為の措置でもありましたが、この免許制度変更に伴い網猟・わな猟免許交付数がほぼ倍になる形になりました。一方、平成13年度には散弾銃・ライフル銃・空気銃で狩猟ができる第一種免状と、空気銃のみで狩猟ができる第二種の合計交付数は17万人を超えていましたが、平成22年度には11万人台にまで減っています。つまり、わな猟を行うハンターが増加した反面、銃を使えるハンターの数は大きく減少しているのです。

銃を使うハンターが大きく減少しているにも関わらず、狩猟事故数が微減か横ばいに留まっているということは、銃猟ハンターが事故を起こす確率が上がった可能性があるのかもしれません。では、銃猟での死傷者数を銃猟第一種・第二種の銃猟免状の交付数で割ってみて、どのくらいの可能性で事故が起きているのかを見てみましょう。

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銃猟免許交付数に対する銃猟事故死傷者の割合の推移(出典:環境省統計より筆者作成)

上のグラフを見ますと、平成20年度のみ突発的に上昇が見られるものの、この10年間は銃猟免状交付数に対する事故率は0.015%近辺で推移しており、銃猟ハンターによる事故率が上がっているとは言えない状況にあるようです。つまり、ハンターの高齢化によって事故率が増加していると統計の上では証明できないようです。高齢による身体能力の低下を、長い狩猟経験でカバーしているのかもしれません。

増加する狩猟以外での捕獲数

意外なことに、ハンターの高齢化と事故率に相関性は見い出せませんでした。しかし、銃猟ハンターの減少と高齢化が進んでいる事は事実であり、ハンターの出番は増加傾向にあります。下のグラフは、イノシシとシカの年間捕獲数の推移を表したものです。

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イノシシの年間捕獲等数(出典:環境省統計より筆者作成)画像を見る
シカの年間捕獲頭数(出典:環境省統計より筆者作成)

イノシシ・シカ共に、捕獲総数と、狩猟以外の有害駆除・個体数調整による捕獲の割合が増加している事が分かります。ハンターの減少に伴い、逆にイノシシやシカの生息数が増加しており、この逆転現象によりハンター1人あたりの捕獲数が増えていることになります。それも、趣味や食肉目的で行う狩猟以外のケースである有害駆除や個体数調整による捕獲が増してきており、有害駆除の度に猟友会が呼ばれる形になっています。ハンターの高齢化が事故率に関係が無さそうとはいえ、あまりに駆除数が増加すると、ハンター1人あたりの負担が高齢化と相まって増えることは想像に難くありません。

ハンターは趣味・食肉目的で狩猟を許されていると同時に、地域で行う有害駆除に協力する事が求められています。冒頭で挙げた2つの誤射も、シカ駆除で猟友会が呼ばれた際に起きています。狩猟が行える期間は本州では通常11月中旬から2月中旬までに限られており、その間は可猟区周辺では誤射を避ける為の注意喚起が行われていますが、猟期以外に行われる有害駆除は目立った注意喚起も無い上、木々も生い茂っている時期なので誤射を招きやすい環境にあると言えます。

まとめ

ここまでの結論をまとめてみましょう。

  1. 銃猟ハンターの高齢化と銃猟事故に相関関係は見られない。
  2. 総捕獲数に占める、狩猟以外の駆除数とその割合が増えている。
  3. 猟期以外の時期での捕獲は、誤射を招きやすいのではないか。

結論1、2はデータ的に証明が可能なものの、3は推測混じりである点は補足しておきます。

しかし、ハンターの高齢化が懸念要素である点に変わりなく、ハンターの更なる高齢化で、肉体機能の低下に経験が追いつかなくなるケースも今後出てくるとも考えられます。その一方でイノシシやシカ等の動物数は増加しつつあり、このままのペースで増え続ければ、2025年度にはシカの生息頭数が、北海道を除く地域で500万頭に達するという環境省の推計が報道されています。少数の高齢ハンターが、ますます増え続ける動物を相手にする事態は、事故の可能性を増やすもので望ましいものではありません。

長期的・抜本的な解決策としては若年ハンターを増やす事なのですが、近年の強まる銃規制の動きや、煩雑な行政手続きや費用、更には動物の命を奪う事に対する抵抗感が大きな壁となっています。しかし、野生動物と人間の軋轢は増しつつあり、どこかで共存可能なバランスを見出すことが、昨今話題の生物多様性や持続可能社会を考える上でも重要なテーマとなっています。

今月中旬には、日本のほとんどの地域で猟期に入ります。狩猟事故が起きないことを願うと同時に、どうやったら事故や動物との軋轢を少なくすのかを考える機会になればと願っております。

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