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デジタル雑誌なんていらない?

今回は、先週第2号をリリースした
ネット出版部マガジンLAPIS」で試みた実験について。

リンク先を見るネット出版部マガジン LAPIS(ラピス)vol.2 世界を目指すサムライSP (ネット出版部マガジンLAPIS) [Kindle版]
鈴木 秀生
ネット出版部
2013-11-01


●デジタルマガジン創刊をめぐる2つの実験

昨今の電子書籍ストアでも、紙の雑誌から特集記事だけ切り出した雑誌記事のデジタル版が増えてきました。出版社が「ワンテーマデジタルマガジン」と呼ぶべきマイクロコンテンツ配信を始めるケースが増えてきています。

21世紀以降に出現したデジタル雑誌と作り手、読者をめぐる歴史は当ブログでも綴ってきました。
とても短いデジタル雑誌の歴史

総花的な雑誌は全ページ読まない。
紙の誌面をそのままデジタル化した電子雑誌は、なんだか読みづらい。
読みたいコンテンツだけもっと安く読みたい。

SNSや検索結果で表示されたリンクを辿って、読みたい情報だけ読むネットユーザーの自然な感情でしょう。雑誌界においても、デジタル時代の雑誌のありかたを巡って様々な議論と試行錯誤が繰り広げられてきました。

とはいえ、何事も議論しているだけでは見えてこず、やってみた結果が全てです。

kindleストアにおいて、1クリックで躊躇なくポチる値段は99円から150円ぐらいでしょうか。その価格帯の中で、特集主体のデジタルマガジンを創刊してみたらどうだろう?特集周辺のお役立ち情報や読み物を盛り込んだうえでポチッとな価格で提供する、ワンテーママガジンです。

情報の鮮度が古くならないうちに、創刊することを決めてから1ヶ月以内にリリースしたい。

今夏に創刊したネット出版部マガジンLAPISで試みた実証実験は以下の2点です。


実験1.だれでも編集長は本当か?

出版をコモディティ化していくためには、出版、雑誌編集経験を持たない素人でも創刊できるかどうかがポイント。

KDPの登場で、誰でも著者、誰でも編集長時代が訪れた気がしますが、本当にそうなのか実験してみました。

雑誌のプロが多少のお金と経験をもとに作ったデジタルマガジンはすでにたくさん創刊されています。しかもそのほとんどがあまり売れていない。

無料で情報が手に入るインターネットやケータイに読者が奪われてしまい、有料の雑誌が売れなくなった――。
もはやデジタル雑誌は要らない存在なのか?

従来の紙の雑誌の作り手はそう嘆きがちです。

時代と読者のせいにしてもしょうがないし、先人と同じことを踏襲したところでオモシロくない。

時代に合わなくなったのは、雑誌ではなくて従来の作り手の固定観念じゃないのか?

そんな疑問を感じて、ネット出版部で立候補してくれた未成年の大学生を創刊編集長に起用してみました。

本人に話を聞いてみると、出版はもちろん電子出版やフリーペーパー作りの経験もありません。かろうじて最近、ブログを書き始めたとのこと。これは何かオモシロいことが起きそうだなと。

ブログが書ける素人であれば、経験豊富なネット出版部参加者の知識やネットワークを借りて、なんとか創刊できるんじゃないか。AKB48ではないですが、素人であっても情熱さえあれば、どこかにいる読者に届くはず。

何よりも、広告クライアントがいなきゃ作れないとか紙のレイアウトを再現しなきゃとか、われわれ出版経験者が囚われがちな既成概念を持っていない点がイイ。新しい器には新しい人材がふさわしいのかもしれません。

そんなこんなで今年6月に当プロジェクトはスタート。まっさらな大学生編集長に、創刊コンセプトやコンテンツ企画を練ってもらい、ネット出版部内の掲示板に投稿してもらいました。あとは雑誌編集経験を持つ参加者の助言待ちかと。

ところが、参加者のコメントは助言というよりダメ出しの連続。企画を投稿するたびに百戦錬磨の出版経験者による厳しいコメントが相次ぎ、うぶな大学生編集長の雑誌作りのモチベーションは徐々にしぼんでいき...。

夏前に体調を崩した本人が、大学の期末試験や旅行準備も控えていたことから、ネット出版部管理人としてリングサイドからタオルを投げ入れました。

思うに、私を含む参加者それぞれが、雑誌の対象読者である若者ではなくオヤジである自分にとって面白い雑誌なのかどうかをコメントしたことが若者の意欲を削いでしまったかなと。全ての層を満足させる雑誌が存在しないことの難しさでしょう。

あとあと考えてみると、デジタルマガジンは編集作業よりむしろ校正やEPUBチェック、表示検証が大変です。

現時点の結論としては、素人でもデジタルマガジン創刊は可能。ただし、それなりのクオリティを担保するためにはEPUB編集経験者の手も必要、といったところでしょうか。


実験2.No編集会議

LAPISは編集会議を一度も開催せず、Facebookグループ間の投稿やメッセージ、メールのやりとりだけによる完全オンライン制作体制で創刊しました。

コンテンツコンテンツ制作コストで最も大きいのは制作期間という名の人件費。なので、まずは会議コストから削減します。

そのためには、編集長を置かないこと。
実際に手を動かさない編集長仕切りの編集会議を開催すると、編集長と他の実務者やライターとの意思の疎通やそれぞれの企画がまとまるまでに時間がかかってしまう。編集長を置かず、実際に手を動かす人、すなわち書く人電子化する売る人だけで素早く制作するのも一つの手ではないかと。

次に、編集者の手を入れて品質を保ったうえで99円というお買い得価格を実現するために、外注コストを削減します。

ネット出版部有志のみで執筆、編集、デザイン、制作、校正、販促のすべてを実施。外注はせず、それぞれの仕事の合間をぬって執筆や編集を行えば、追加コストを気にせずに細かいレイアウト修正やテキスト差し替えが出来ます。もっとも、最終的には編集人に負担がかかるので適度なバランスが必要ですが。

表紙デザインやePub制作が出来る編集人を中心に、創刊コンセプトに沿ったコンテンツ、すぐに誌面に掲載できるコンテンツを中心に台割を作ってオンライン進行したところ、見る見るうちに誌面が出来上がっていきました。

結果、仕事の合間をぬいつつ、企画から1ヶ月足らずで創刊号をリリース。続く秋号も大袈裟な編集会議はしていません。会議コストや制作期間を圧縮して、ローコストかつスピーディなデジタルマガジンを創刊できたかなと。

とはいえ、横書きのテキストを縦書き表示用に編集し直して校正する手間はかなりかかります。1人で原稿編集、ePub制作、校正を担う編集人に相当な負担がかかるプロダクトであることは間違いありません(編集人のUZAWA・K氏、たいへんおつかれさまでした)。

プロダクトとしての質を担保しつつも従来の雑誌制作の慣習にとらわれず、スマートフォンでさくさく読むのにちょうどいいマイクロマガジンをいかにスムーズに作っていくか。

来年2月頃、リリース予定のLAPIS冬号の課題はこのへんにあるかなと。

ボーンデジタルマガジンの可能性とともに課題にも思いを寄せる今秋です。

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