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「TOEFL」は絶対か 若者よ海外に出よう

「TOEFL」を重視する日本

日経新聞によると、政府は2015年度の国家公務員試験・総合職試験から英語能力テスト「TOEFL」等を使う方針を決めたそうだ。受験勉強がお家芸の日本のこと、TOEFL受験の専門塾や教材がさらに増えるとみて間違いないだろう。

大阪府教育委員会はこれより先に府立高校入試にTOEFL、IELTS、英検など外部の英語検定試験を活用する方針を決定している。個人的な経験から言えばTOEFLを受検するより、できるだけ早く海外に留学する機会を見つけた方が英語力は確実にアップする。

筆者は39歳の誕生日、当時、小泉純一郎首相と竹中平蔵経済財政政策担当相が打ち出した能力開発の助成金を受け、「NOVA」に駅前留学して英語の勉強を一からやり直した。まず、英語の音が聞き取れない。舌がうまく回らない。悔しくて涙が出た。

筆者は現在51歳、海外生活はニューヨークとロンドンで7年6カ月になる。その間、産経新聞のロンドン支局長を4年10カ月務めたが、正直言って、サッカーの人気クラブ、マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン前監督が話す強いグラスゴー訛りの英語は今でもはっきりとは聞き取れない。

先日の記者会見で、今季、出場機会が減っている香川真司選手について「ケガが原因」と話しているのはわかったが、それが事実なのか判断がつかなかった。香川選手が本当にケガをしているのなら、ベンチから外れているはずだと思ったからだ。

英BBC放送のキャスターやキャメロン英首相の英語は聞き取りやすいが、北アイルランドの英語、ロンドンの労働者階級が話すコックニーを正確に聞き取るのは難しい。グラスゴー出身の友人ジョージの話すことはいつまでたってもほとんど理解できない。

英語を話す土地柄によって母音の発音は信じられないほど変化する。表現方法やワード・チョイスも大きく異なる。言葉の意味も専門分野ごとに変わってくる。バックグラウンドの知識が英語力以上に大切になってくる。

TOEFLのスコアにこだわらず、基本的なことが話せるようになったら、まず海外に飛び出してみることが一番大切だ。語学は現地で学ばないと上達しない。文化の違いを痛感し、そこで頭を打ったら、また国内に戻って勉強すれば良いと思う。

「野球」より「サッカー」が世界スポーツ

TOEFLは英語圏の大学・大学院に留学するための試験で、英語力を試す1つの目安に過ぎない。他にもいろいろな試験がある。TOEFLだけにこだわる理由はない。

アメリカン・イングリッシュ(CNN)よりブリティッシュ・イングリッシュ(BBC)の方が今はグローバルになっている。ハリウッド映画で英国出身の俳優が重用されるのも、訛りの強い売国人俳優より聞き取りやすい英語を話すのが大きな理由といわれている。

もっとわかりやすく言えば、野球よりサッカーの方が世界的には人気がある。日本でTOEFLを重視したがるのは、プロ野球がJリーグより人気があるのと同じ理由だ。日本では文化も、スポーツも、英語も米国偏重というか、米国が絶対なのだ。

ひどすぎる日本人のTOEFLスコア

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アジア諸国のTOEFLスコア(筆者作成)

それにしても日本人のTOEFLスコアはひどすぎる。2012年統計をみてみると、日本語を母国語にする受験生のスコアは120満点中70点。ソマリ語を母国語にする受験生と並んで世界101位。

アジア30カ国の中では27位で、下を見ればカンボジアとモンゴルだけという有り様だ。TOEFL受験生に限れば、北朝鮮の方が日本より英語力が格段に上なのだ。

惨憺たる状況を生み出した背景には、英語を話すことができない教師が英語を教えている日本の英語教育の悲劇的な欠陥に加え、失われた20年ですっかり身についた「縮み志向」がある。

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EU域外から英国への留学生(筆者作成)

1日、英国の大学でつくるユニバーシティーズ・UKが記者会見し、海外メディアに留学を呼びかけた。英国で学ぶ日本の留学生は欧州連合(EU)域外からの留学生国別ランキングで10位にも入っていない。

2011~12年の留学生は中国が断トツで多く7万8715人。2位はインドで2万9900人。国内で大学ストライキが頻発するナイジェリアからの留学生も目立ち、1万7620人で3位。日本はと言えば3245人である。先日、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで会った日本人女性も「日本人留学生は10~20年前に比べて、めっきり減りました」と嘆いていた。

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EU域外からの留学生の推移(筆者作成)

過去6年でどれだけ変化したのかを比べてみたのが、次のグラフである。EU域外全体では22万3855人から30万2680人に35%も増えたのに対し、日本人留学生は6200人から3245人に48%も減っている。国際都市ロンドンは世界を映し出す鏡ともいわれるが、日本の存在感はグラフが示すように消えてなくなりつつある。

アジア諸国からの留学生の増減(2010/11~2011/12)を比較したのが次のグラフである。青色が濃くなればなるほど英国への留学生が増え、赤色が濃くなればなるほど減っていることを示している。日本が長い間「世界第2の経済大国」という言葉に酔いしれ、大学教育のグローバル化に対応してこなかったことが鮮明に浮かび上がってくる。

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アジア諸国からの留学生の増減(HESAのHPより)

TOEFLのスコアが上がれば海外への日本人留学生が増えるのか、留学生が増えればTOEFLのスコアが上がるのか。筆者にはTOEFLのスコアだけが上がっても、日本の「縮み志向」というか、「縮み現象」には歯止めがかからないように思える。

日本人留学生から「学生ローンが1000万円にまで膨らんだ」という話を聞くと、日本の経済力では一般家庭から海外に留学生を送り出すのは難しくなっていることを実感する。それ以前に国内の大学に進学するのにも学生が数百万円もの奨学金を受けなければならなくなっているのが現状だ。

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大学教育のかける費用(筆者作成)

経済協力開発機構(OECD)のデータから筆者が作成したグラフからもわかるように日本の大学教育に対する公的支出は先進国の中では断トツに低い。大学を卒業した時点で「借金漬け」というのは日本の大学行政がどこか間違っている証左なのではないだろうか。

筆者が大学行政の責任者なら海外の大学との提携を促進し、オンラインで海外の一流大学の講義を受けられるシステムを日本で普及させるだろう。興味が膨らめば、実際に海外の大学で学びたくなってくる。

しかし、そんなことをすれば日本の大学に進学する若者が激減し、アッという間に学生数が減って日本の大学は経営に窮するだろう。TOEFL義務化を進めるより、いろんな工夫を凝らして若者が安価で海外の大学の講義を受けられるように敷居を下げる方が筆者には賢明に思えるのだが。

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